大好きだよ。【織田信長】-天下統一 恋の乱-✎

※天下統一 恋の乱の二次小説です。ヒロインの名は陽菜です。






天正十年六月二日早朝

本能寺は炎で赤く染まっていた

前日に信長様は本能寺にて茶会を開き、そのまま滞在をしていた。

私は茶菓子の準備はしたものの、茶会には参加しなかった。

今思えば少しの我儘を言ってでも同行すれば良かったのだ。

今生の別れとなってしまったのだから。

当時、本能寺のそばに光秀様の軍が居たという。

それ故に光秀様は謀反を疑われた。

しかし確たる証拠は何もない。

信長様の遺体は無く…首すらも見つからなかったからだ。

当時、光秀様は深手を負った体を引きずりながら放心した様子で燃え盛る本能寺から現れ、こう呟いたと言う。

「御屋形様自らが本能寺に火をつけ、炎の中へと消えていったのです」





信長様が居なくなってどのくらい経ったのだろう。

信長様亡き後は光秀様を中心とし、各武将達が日の本の国を分担して治めている。

私は秀吉様の元に身を寄せ、女中として働いていた。

信長様が居ないこと以外、何も変わらない。

虚しく寂しい気持ちが募るだけの毎日だ。

それでも秀吉様の気遣いもあり、私は少しずつ前向きに生きようと思い始めていた。




ある夜、眠れなかった私は縁側に腰かけ、夜月を眺ていた。

「陽菜ちゃん、眠れないの?」

「秀吉様、はい…信長様の事を考えていました」

「それでか!ずいぶんニマニマと笑っていたのは」

「えっ?私みっともない顔していましたか?」

秀吉様は慌てて顔を隠す私の隣に腰を下ろし、クスリと笑ってこう言った。

「良い笑顔だったよ」

恥ずかしさで赤くなる顔を隠していると、秀吉様がわざと覗き込むように顔を近づけてくる。

「本当に良い笑顔だった…悔しいくらい」

「えっ?」

「ううん、何でもない」

秀吉様は少し寂しげに笑った。

「そうだ、眠れないなら少し付き合ってもらおうかな。月見酒どう?少しは飲めるでしょ?」

秀吉様は準備してくるからと立ち上がり、その場を去った。

私はまた一人で月を見上げた。

次の瞬間息が出来ないほどの強い風が吹いた。

木々が揺れる音に混じり、誰が庭を歩いている音が響く。

木に陰に誰かの気配を感じた。

恐怖と驚きで声が出ない私に、その人物は声をかけてきた。

「息災か」

懐かしい声だった。

「ふん…俺が居なくて腑抜けたのではないか?」

月明かりに照らされて見えたその人は、ずっと会いたかった人だった。

「のぶ…なが…さま?」

震える声を抑えながら、私はその人へと近づいた。

「やはり貴様の甘味を食わぬと調子が出ぬ」

「本物…」

「足は付いておる。確かめてみろ」

差し出された手を取る。

確かな手応えとあたたかさを感じた。

「遅くなったが迎えに来た。来い」

有無を言わせぬ物言いに、胸が締め付けられる。

涙が溢れ、私の視界はぼんやりとした。

着物の袖で涙を拭うものの、長い間我慢していた涙は止まらない。

「あー…泣くな泣くな」

「だって…」

「だってもくそもないわ。…慰めてやるからこっちに来い」

信長様に腕を掴まれ、私は信長様の胸に飛び込んだ。

「何もかも捨てるつもりだった。だが貴様の事だけは諦め切れなかった。第六天魔王とまで言われた俺が…だ。滑稽であろう」

「いいえ」

「何故そう言い切れる?」

「だって…そのおかげでまた会うことが出来ました。もう…絶対に離さないでください!」

私は信長様の首に縋るように抱きついた。

縁側の方からカチャンと音がした。

振り返ると秀吉様が呆然と立ち尽くしていた。

「猿!こやつはもらっていく。貴様にはもったいない女だからな」






「まさか…」

月明かりに照らされていたのは、確かに織田信長その人だった。

側にいた陽菜ちゃんは凄く幸せそうで…消え去る二人を止めることは出来なかった。

「ははっ…やっぱり御屋形様には叶わないな…」

俺は一人猪口に酒を注ぎ、一気に飲み干した。

「でも…不思議とまた会える気がするんだ。だけど…」

二杯目の酒も煽るように飲み干し、俺は呟いた。

「告げる事の出来なかった陽菜ちゃんへの想いは、俺の胸に仕舞っておくよ」










ꔛ‬𖤐

動画作ってて、頑張って一曲丸々使おうか迷いましたが

『歌詞が切なくてこれ以上は( ꒦ິД꒦ິ)੭ु⁾⁾』ってなり断念

切ないままもなんかイヤ(・ω・`三´・ω・)イヤだったので、SSは信長さまの天下統一編に繋ぐ形にしました

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