YURA YURA 【藤林朔夜】-天下統一 恋の乱- ✎

弦夜影EDの後日談で朔夜目線です










「弦夜…抜け忍の庇い立てするなら、お前も始末する」

「もう後戻りは出来ねぇな…朔夜」

俺の半身である双子の兄である弦夜は、里の命より、任務よりも…この俺でもなく陽菜を選んだ。

何時かはこうなるのではないかと、心の奥底で思っていたのかもしれない。

俺の心中は驚くほど冷静だった。

「朔夜…わりぃな。死んでもらうわ」

「それは俺の台詞だ」

弦夜の鎖鎌が俺を襲う。 

鎖鎌が俺の肩を軽くえぐった。

「チッ…」

今、俺の目の前にいるのはろくでなしの兄弦夜ではない。

忍である、藤林弦夜だ。

(本気だな…ならば)

俺は弦夜へと手裏剣を投げた。

手裏剣は弦夜の足をかすめ、鮮血が吹き出した。

「ぐっ…」

「弦ちゃん!朔ちゃん!」

弦夜の後ろで立ちすくむ陽菜が悲鳴に近い声を挙げた。

「安心しろ…直ぐに二人まとめてあの世へ送ってやる」

俺はクナイを強く握りしめ、地を蹴りだした。

「二人ともやめて!」  

陽菜の叫び声が響いた瞬間、クナイは肉を切り裂く音を立てながら血にまみれていく。

「陽菜!」

弦夜の叫び声が響く。

クナイを振り下ろした俺の目の前には、右腕を血だらけにした陽菜がいた。

「朔ちゃん…止めて…弦ちゃんは朔ちゃんの…半身…なん…だ…から」

瞬間、頭の中が真っ白になった。

「陽菜!しっかりしろ!」

弦夜の腕の中で横たわる陽菜の顔はどんどん青ざめていき、右腕から流れる血は止まることはない。

「…」

俺は心は説明のしようがない感情に支配されていく。

「くっ…」

頭が痛い

胸が苦しい

咽るような血の匂いに吐き気がする

「俺は…」

呟いた瞬間、目の前の世界が反転した。





「!」

気がつけば俺は屋根裏部屋にいた。

「夢…だな」

魘されていたのか、全身が汗だくになっている。

「キキィ…」

飛丸は俺の胸元にしがみつき、心配そうな目を向けていた。

「飛丸…大丈夫だ…夢を見ていただけだ」

俺は褥から立ち上がり、忍装束に身を包んだ。

(そろそろ里に報告しなければ…弦夜が裏切ったこと、陽菜が怪我を負い、龍涙の作り手が絶たれたこと。三葉の里の始末をどうするか)

ハラリと装束から何かが落ちた。

それを目ざとく見つけた飛丸は口で拾い上げ、俺に差し出した。

「三つ葉…」

遠い記憶が呼び戻される。

幼い頃に陽菜に誓った約束。

『陽菜と同じ名の三つ葉に誓う。俺はずっと陽菜の味方でいる』

初恋の女の子にずっと笑っていて欲しくて、交わした約束だった。

「ふっ…くだらない」

そう言いながらも、手に取った三葉を捨てることが出来ない自分がいる。

「こんな感情は…捨て去った…はずだ」

俺は三葉を強く握りつぶした。

「…」

痛む胸を抑えながら、俺は屋根裏部屋を出ていく。

「飛丸…行くぞ」

甘い感情は捨てて

俺は忍として生きていく

「それが俺の|運命《さだめ》だ」










ꕀ꙳

先に書いた弦夜SSのコメントで

『朔夜目線はどうだろう』

といただきコネ(ノ)`ω´(ヾ)コネしました

弦夜の影EDは一見幸せそうなのですが、幼馴染の三人はずっと心に痛みを抱えて生きて行くのだと思います。

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