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観光庁データから読み解く宿泊業の消費者動向の変化

こんばんは、いつもお世話になっています。Check Inn株式会社の田中 健太郎です。今回は自社サービスを検討する中で、観光庁データを調べている中で気づいたことをまとめました。

この記事の結論
・消費者の意思決定の比重が宿ならではの体験・魅力へ移動してきている。
・顧客とのコミュニケーションを強化する直販サイトに集客力向上の余地があるが、ICT技術面での課題がある。

1. 観光業の次のテーマは"新たなビジネス手法の導入"

宿泊業を地域の観光産業・旅行消費の核となる業種として位置づけ、新たなビジネス手法を導入し、宿泊施設を中心として地域全体に波及する付加価値を生み出す取組を支援する。
具体的には、2つの観点(①複数業種等の連携による新規サービスの導入、②地域に波及する生産性向上、高付加価値化)で、新たなビジネス手法を導入する取組を専門家の派遣などを通じて支援する。

令和四年度 観光庁関係予算概算要求概要 p5より

上記は観光庁の予算要求資料から引用した文章です。このポイントは、観光において単純な「宿泊」だけではなく、観光に関わるさまざまな体験と「宿泊業」は切り離すことのできないものとなってきているということです。

観光者の行動様式の変化

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この背景には、観光客の観光者の行動様式の変化があります。従来の観光は、「スキー」・「温泉」・「食事」など、観光客の興味分野に当てはまる観光資源がある地域を決定し、その上でその地域の中から宿泊施設を選ぶことが一般的でした。しかし、近年は、その宿ならでは体験の多様化やSNS等を通じた発信力の向上などの要因から、まず宿を決め(時には観光資源と密接に関わりがある)、その上で、その宿のある地域が選ばれるという意思決定が多く見られるようになりました。

新たなビジネス手法の創出

観光客の行動の変化から、宿泊業は、既存の枠にとらわれない柔軟なビジネスモデル構築の必要性が高まっています。例えば、既存の地域観光資源に依存しない、「宿泊」+「ペット、キャンプ、サウナ...」などの特定の観光客をターゲットにした新しいコンセプトの旅行サービスの提供や、自社サイトのリブランディング・リポジショニングを通じた顧客とのコミュニケーションの強化などが挙げられます。

官民ともに注目

令和四年度は、7億円規模(前年比の約7倍)の予算額がこの「新たなビジネス手法の導入による宿泊業を核とした観光産業の付加価値向上支援」という項目に充てられ、官民共に注目する大きな流れになりつつあります。

2. 直販サイトを通じた集客力向上の余地がある

観光関連産業には中小企業が多いことから、デジタルツールの導入やデータ活用が遅れていると指摘されている。例を挙げれば、宿泊業における従業員1人当たりソフトウェア装備額は、他の産業と比較して少なくなっている。
こうした ICT 投資が進んでいない理由としては、中小企業庁の調査によれば、業種横断的ではあるが、IT を導入できる人材がいないこと、導入効果が分からないこと、評価できないこと等が指摘されている。

従業員一人あたりのソフトウェア装備額 

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 出典:令和3年度観光白書 p64

上記データが示すように、他業種と比較して宿泊業はICT導入が遅れていると言われています。要因はさまざまありますが、その中でも特に「IT を導入できる人材がいないこと、導入効果が分からないこと、評価できないこと」という技術力・リテラシー・人材の三点で他業種に対して遅れをとっています。

ICT導入の遅れが直販比率にも影響

近年の特徴的な市場の変化は、消費者の意思決定の比重が宿ならでは体験・魅力へ移動してきていることです。その中で直販サイトを構築した顧客とのコミュニケーション・プロモーションの必要性はますます向上してきています。日本の将来を予測する上でヨーロッパの予約比率データが重用な示唆を示しているように思えます。

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出典:令和3年度観光白書 p64

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出典:令和3年度観光白書 p64

ヨーロッパ主要国家と国内のチャネル別ホテル予約シェアを比較すると、ヨーロッパの直販サイトでの予約比率は、約45%~60%と全体の半分ほどを占めることに対し、国内ではどの規模の宿泊施設でも直販比率が20%をこえるところはありません。

この要因として、直販サイト構築は、OTA掲載などの代替手段と比べて技術やリテラシーなどにハードルがあり、国内では直販チャネルを有効活用できている施設が少ないことが考えられます。

まとめ

最後まで読んでいただきありがとうございます。今回は観光庁データを調べる中で特に興味深いと感じた点を抽出してまとめました。テクノロジーの進歩や消費者の行動の変化によって、宿の体験向上・魅力発信がますます期待されている現在の宿泊業において、ICT技術導入のハードルを超えていくことが不可欠なのではないでしょうか。

Check Inn株式会社は、直販サイト開設サービスやウィジェット型予約システム導入などを通じて、新たな価値創出・発信を目指す宿泊施設を応援しています。ご興味がある方はぜひ一度お気軽にご相談ください