RTA in Japan Summer 2024神回10選
こんにちは、チェ・ブンブンです。
最近は、猛暑猛暑の日々が続いており、暑くて干からびそうである。動いてないのに暑いのだ。そんな時には家に引き篭もる一択である。
さて、2024/8/9(金)~8/15(木)にかけてゲームの祭典RTA in Japanが開催された。RTAとはリアルタイムアタック(Real Time Attack)の略であり、様々なゲームをできるだけ早くクリアする様子をエンターテイメントにしたものだ。
毎年、夏と冬にチャリティイベントとしてRTA in Japanが開催されている。24時間1週間、様々な走者が走りながら寄付を募る。時に、寄付額投票によってキャラクター名やプレイスタイルを変える。そして国境なき医師団へと寄付されていくのだ。
目隠しときめきメモリアルやゼルダガチ勢による論文発表レベルのプレイなど面白いプレイが観られるのでコロナ禍に入ってからずっとこのイベントを追っている。
今年も超絶技巧のプレイ、珍プレイなど神回がたくさんあったのでオススメを紹介していく。アーカイブも上がっているので、家に籠ってぐうたらしようと考えている方の参考になればと思う。
1.レインパレード: イタズラ雲の冒険 !
▶走者:Keiichiさん(https://x.com/Keiichied)
▶カテゴリー:Any% (Without DLC)
RTA in Japanでは面白い作品をたくさん教えてもらえる。今回の掘り出し物は間違いなく「レインパレード: イタズラ雲の冒険 !」だろう。スイカゲームの上位存在を彷彿とさせる雲がタイトル通りイタズラをしていく内容なのだが
・オイルを吸収して工場を爆破する
・お天気キャスターを階段から突き落として放送をジャックする
・人々を雪だるまにさせて落下しさせる
などといったイタズラの範疇を超えた破壊工作を行っていて爆笑必至となっている。途中には中ボスとして博士の機械が登場するのだが、もはや彼こそがヒーローなのではと思うほどのいかれたシナリオの連続を丁寧な語りによって魅力的に走っていたのが良かった。
2.ボクらの太陽
▶走者: えむてぃさん(https://x.com/info_mttkm)
▶カテゴリー:Any%
小島秀夫が製作に携わった隠れた名作「ボクらの太陽」が行われた。本作は、実際の太陽光を使って主要武器:太陽銃ガン・デル・ソルのチャージを行うプレイが話題となった。また、「メタルギアソリッド」でお馴染みのスニーキングアクション要素が取り入れられていたり、『続・荒野の用心棒』など映画のオマージュが施されていたりと小島秀夫らしさが溢れている一本でもある。
↑棺桶を運ぶ場面や主人公の名前は『続・荒野の用心棒』のオマージュである。
走者のえむてぃさんは、専用のUVライトを使って「ボクらの太陽」を走る。一応、リアル太陽を使ったレギュレーションもあるそうなのだが、走者は0人とのこと(2020年代の気候でやったら死ぬだろう)。RTAの中では王道堅実な走りで分かりやすさ、ゲームに対する愛情、笑いがバランス良く配合された走りでした。
3.RITE
▶走者:てるるさん(https://x.com/teruru888)
▶カテゴリー:All Levels
今年のRTA in Japanを観ていてある変化に気づいた。それは女性の解説者/走者が体感増えているところにある。やはり、VTuberやeスポーツの文化が発展し女性がゲーム実況をする土壌が育ってきたのだろう。いい傾向だと言える。そして、RTA in Japanで披露されたゲームを全部観ているわけではないが、女性の方が走者兼解説者として高難易度ゲームをプレイしている回に初めて出会った。これが、とても面白かった。てるるさんは、颯爽と落ち着いた口調で棘だらけ足場が皆無な空間を潜り抜けていく。モニタにはコントローラーが映っているのだが、的確にコマンドを入力しながら1フレーム技を決めていく。失敗しても冷静に実況をしながら駆け抜けていく様が爽快であった。
他にも女性走者が活躍する回もあり、個人的には「ミスタードリラーエース ふしぎなパクテリア」もオススメである。こちらもまた走者が解説を兼任するタイプのプレイなのだが、燃料(AIR)が極限状態の中、最終ステージをクリアできるかどうかのスリルが堪らない白熱した内容であった。
このように、今回のRTA in Japanでは女性の参加者が増えたイメージが強いイベントだったのだが、とある回で解説者が差別的な発言をしてしまっているとの声も挙がった。実際に該当の回をアーカイブで観た。これはゲーム配信界で時折起きる問題だなと感じた。ゲーム界隈が盛り上がってくると専門用語だったりミームが生まれて来るのだが、これが差別的ニュアンスを含んでいたり界隈の外に出ると炎上する可能性が高いものがあるのだ。
数年前にとあるプロゲーマーが「人権ない」と発言したことで炎上したことが記憶に新しいが、RTA in Japanでもヒヤリとする場面を目にする。例えば、『ゼルダの伝説』で大妖精の容姿に対して笑うみたいなパフォーマンスに危うさを感じた。今回は「夢女子ランキング」をネタとして消費する解説が物議を醸した。本人としてはよくあるネットミームの引用といったフランクな使い方をしていたのだが、界隈外が観る空間において脚本に組み込むのは悪手だったといえる。
もちろん、公式も今回は事前対応しており、会期前に関係者や視聴者への注意喚起を行っていたので、今後上手く改善されれば良いなと思う。
4.STAR WARS ジェダイ:サバイバー
▶走者:とまとまとさん(https://x.com/t0mato777)
▶解説:しらたまさん
▶カテゴリー:Any% NG+ Restricted
こちらは変わったタイプの解説によりTLがザワついた神回である。VTuberであるとまとまとさんがジェダイとなってフォースやライトセイバーを操っている様子を、しらたまさんが解説するのだが、どうも様子がおかしい。マイクがエコーがかったこもり方をしているのだ。放送事故なのだろうか?しらたまさんは怪しげな音質に狼狽することなく、含み笑い一切せず淡々と語っていく。そうです、これは「ダース・ベイダー卿による町内放送」だったのだ。
ゲーム内のプレイ音が混入し、ざらついた音質の中、道なき道を爆走していくジェダイ。ゲーミングライトセイバーを振り回し、フォースでストームトルーパーを踏み台代わりに宙に放り投げる。ソニックやゼルダの伝説と比べると若干地味な画だが、我々の耳に音ゲーを彷彿とさせる軽快なカチャカチャ音が響き渡る。画の裏では壮絶な動作が行われており観るものは、その落差に風邪を引くであろう。
途中、しらたまさんによるチャリティイベントの案内が行われるのだが、これがまた味わい深くプロパガンダ放送にしか聞こえず爆笑すること間違いなし。
しまいには、ゲーム音と解説の音が途切れるアクシデントが起こるのだが、彼らの「音」が戻ってきたとき、TLでは「ジェダイの帰還だ!」と大いに盛り上がったのであった。隠れた神回といえよう。
5.ポケットモンスター赤緑
▶走者:ずのうさん(https://x.com/zunow150poke)
▶カテゴリー:Multiple Pokemon Games - Catch 'em all Gen 1 Glitchless
かつてはファミ通に投稿されるゲームのスーパープレイを観ると、「本当にこんな人いるんかね」とある種都市伝説を目の当たりにしているような感覚を抱いた。しかし、ゲーム配信が普及した今では、目の前でリアルタイムで人間離れした業を目の当たりにし、「実在するんだ」といった強烈な印象を叩きつけられる。
今回のRTA in Japanでは複数人プレイを前提としているものを一人で攻略する回がいくつかあった。その中でも話題となったのが、「ポケットモンスター赤緑の図鑑コンプリートをひとりで行う」といったものだった。
スーパーファミコンを改造した独自のコントローラーを使い、右手と左手が別々にポケモン集めを行っていく。左右で異なる操作を行っているのも凄いのだが、走者のずのうさんは次々と我々の常識を超えた世界を魅せてくる。
まず、ずのうさんは5時間半近く自ら解説をしながら走っているのである。落ち着いた語りで、時にユーモアを入れながらコメントも読み、会場、オンライン参加者を盛り上げていくのである。ただでさえ、ゲームしながら話すのは難しいことなのだが、左右で別々の操作をしながら、この余裕っぷり。正確にポケモン出現確立やチャートの説明、定期的な振り返りを行っていく。なんだこれは!?と驚愕した。しかも、彼が使うのは左右の手だけではない。ポケモン図鑑の登録情報を音声認識で行う。乱数調整を足で行っているのである。そして、ポケモン図鑑の埋まり具合はずのうさん手製の特設サイトにて情報共有される。終盤には次のRTAの紹介を日本語/英語両方で行う。あまりの超人っぷりに驚愕である。
そんなずのうさんだが、このようなプレイになってしまった背景を語る。元々は2人でプレイしていたのだが、相方が「ロックマンエグゼ」RTA界隈に行ってしまったり、ずのうさん自身が結婚する、コロナ禍など様々な要因が重なり実質の解散となる。そんな中、飲み会で「ひとりでやってみれば」と言われ、走り始めたとのこと。
ポケモンだけでなくRTAに対する熱量が凄まじく本イベントで一番感動したのであった。
6.LEGO® Builder's Journey
▶走者:ホウト@ BBEさん(https://x.com/hoto_houto)
▶解説:いつき@ BBEさん(https://x.com/itsuki_umauma)
▶カテゴリー:Any%
昨年、RTA in Japanで工場シミュレーションゲーム「shapez」を走っていたホウトさんが今年もやってきた!前回、落ち着いた語りながら爆速で膨大な生成物を納品しまくっていた彼が、相棒のいつきさんと一緒にLEGOの世界を語る。TLでは「RTAかと思ったらEテレだった!」と言われるほど牧歌的な語りによってLEGOブロックの物語が紡がれる。しかし、物語の随所にRTA要素やテクニック的な話が忍び込み不穏な雰囲気が生まれていく。この物語の中にメタを挿入していく様が華麗であり、今回のRTA in Japanの中で最も洗練されていた脚本と言えよう。事前にホウトさんのYouTubeチャンネルで練習の様子を軽く観た時には語りがなかった気がするので驚かされた。また、「STAR WARS ジェダイ:サバイバー」では町内放送だったのに対し、こちらでは館内放送でチャリティへの呼びかけを行っているのが興味深かった。
今回のスタイルの走りがどのように生まれたかは、ホウトさんのnoteに詳細が書かれている。力作だっただけにかなりの苦労話が語られている。
7.Red Alarm
▶走者:きのさん(https://x.com/quino_w)
▶解説:いるかんさん(https://x.com/Kurma)
▶カテゴリー:Any% Easy
RTA in Japanはゲームの見本市的役割があるので、ゲーム史に残る貴重なデバイスの操作が観られたりする。以前だと、マリオカートやスマブラのキャラクターとして知られているロボットを使ったゲーム「ジャイロセット」のプレイを魅せてくれる回があった。今年は、VRゲームの先駆けとなったバーチャルボーイが持ち込まれ、シューティングゲーム「Red Alarm」が走られた。なかなか配信画面に投影するのが難しいデバイスなのだが、そのやり方も込みで解説してくれて貴重な回となった。
ヴァーチャルボーイといえば、からすまAチャンネルが以前扱っていて、かなり厳しいデバイス、ソフトなのかなと思っていたのだが、「Red Alarm」はデザインがカッコよく、ワイヤーフレームの使い方が良くできていた。
8.Q REMASTERED
▶走者:茄子与一さん(https://x.com/skkytkstexhk)
▶カテゴリー:Unlock Picked Chapters [REMASTERED]
RTA in JapanではVTuber界隈で流行ったゲームも採用される。今回は、物理演算を使ったパズルゲーム「Q REMASTERED」が選ばれた。実際にリアルタイムでVTuberの実況を観ていた身からすると、めちゃくちゃ操作が難しいゲームであるのは明白なのだが、走者の茄子与一さんは絶妙なオブジェクト捌きで繊細な振り分けを行っていく。「これ、どうやって解くんだ?」と思うものも、珍妙なグリッチを使うというよりかは割と正面から突破していくので清々しいものを感じる。リアルタイムで本RTAを観ていて、だるま落としネタが20ステージ近く再利用されていることを知って驚かされた。開発時の苦労が垣間見えるゲームである。
9.SimCity
▶走者:コケこっこ
▶解説:ワイズさん(https://x.com/YS51577346)
▶カテゴリー:600,000 citizens
RTA in Japanを追っていると、好きな走者や解説者が出てくる。走者だと目隠しRTAを得意とするドイツ出身のBubziaさんや、超絶技巧のプレイを魅せてくれるゆとりんさんがいる。
解説だと、ワイズさんの回が好きだ。医療従事者である彼は、落ち着いた語りで時にユーモラス、時に教育的な解説を入れるバランス力ある解説者である。そんな彼が町シミュレーションゲーム「SimCity」の解説をする。魔界村界隈で出会ったコケこっこさんからの依頼を受けての解説とのこと。ワイズさんの良いところは、入念な下調べによる脚本であろう。今回は、攻略本3冊だけでなく厚生労働省関連のサイトを参照し、1月に起きた石川県地震における医療現場の報告も行う。大学の講義のように淡々と話しながらも爆笑ポイントがいくつもあり、素晴らしい内容であった。
10.ACE COMBAT6 解放への戦火
▶走者:ひさほさん
▶解説:すうけんさん
▶カテゴリー:SP NEW GAME
この手のハイスピードなシューティングゲームやロボットアクションゲームはミリしら勢にとってハードルが高かったりする。何故ならば、情報量が多すぎてついていけるか不安になるからだ。しかし、「ACE COMBAT6 解放への戦火」は解説者すうけんさんによって、思わずプレイしたくなるような魅力に溢れた回となっている。彼によれば、複数ある部隊の中から任意の部隊を救い戦況を変化させていく、時には味方に敵機を破壊してもらうなどといった集団対集団の熱いドッグファイトが楽しめるとのこと。また、戦禍のフィールドに着地し、武装を整えて離陸するといった映画のような展開もある。
その中で、走者のひさほさんは的確にレールガンやミサイルを的中させていく。ほとんど画面に敵が映っていないなか、敵の進行方向を予想してエイムを決めていく様がカッコよく、中盤以降はまるで『トップガン マーヴェリック』を観ているかのような迫力があった。