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俺とストレイテナー

ベースを手に入れた頃、教則本を読むのが退屈すぎる俺は早速コピーに取り掛かった。
その中で唯一コピーしたバンドのひとつ。ストレイテナー。

当時とりわけ下北系と言われるものにハマっていた俺はストレイテナーもよく聴いた。
「ベースと言えば」と謳っても過言ではないくらい、ベースの音は印象的だったし、何よりこのバンドで弾いてるベーシストは俺が大好きだったART-SCHOOLの初期メンバー、日向秀和というのは大きかった。

今でこそ指弾きスタイルがメインだが、ピックならではのゴリっとした印象的なサウンドは俺に圧倒的な影響を与えた。
ピック弾きスタイル自体は他にもミッシェルやナンバガなど影響を受けるべくして受けたというところもある。

とは言え、始めたての初心者がそこまで弾けるわけもなく、だいたいART-SCHOOLの初期曲におけるルート弾きを一通り練習しがてら俺は「KILLER TUNE」を練習していた。

ストレイテナーと言えば、の曲だが、この頃は普通「Melodic Storm」をやるのが定番だった。ベースが上手い人なら「TRAIN」という選択肢もあったか。4人になったのが2008年だから、多分まだこの頃は3人の音源しかない。

この曲には上のシングル版とアルバム版があるのだが圧倒的にアルバム版の方が好きだった。
…しかしコピーバンドではシングル版で練習していた。
何故かはほとんど忘れてしまったが、ギターの子があまり早いフレーズが弾けないとかだったか…。そんなに早くないぞ!と今なら言えるか。

他にも「泳ぐ鳥」「BERSERKER TUNE」「CLARITY」…せ…選曲が渋すぎる。
これには他にもいろいろな事情があった。俺が斜に構え過ぎていたのも大きい。
「POSTMODERN」がいっちゃんカッコいいと思ってたような男である。いや、今でもカッコいいとは思っているけど。
なんだか色々申し訳なくなってきた。今更だが…。

結局このコピバンは自然消滅。仕方ない。

そそくさとベースの練習をしておこう、とこの頃スコアブックを買う。
LINEARのベース。未だにTRAINはちゃんと弾けない。というかあのアタックが出せない。フレーズ云々じゃなくてあれは音が出せなかった時点でコピーできないに等しいが…。

それから少しして4人態勢になった。半分がART-SCHOOL。おいおい、どうなってんだこれ…?
と思いながら新曲「Black Hole」めっちゃカッコいい…と震える。

そしてアルバムリリース。ベースの練習にもずっと使ったアルバム「Nexus」が出た。
このアルバムは本当にとにかくベースの練習に使った。今でも弾ける曲はいくつかあるだろうか…。

ベースの練習とは別に、高校を卒業し社会人になった冬。
通勤帰りの車内で流れた「Lightning」がこれまで聴いた感覚とは全く別に聞こえた瞬間がある。
夜にかけて、車の中で一人、まばらな対向車と冷えた空気。
信号待ちの瞬間に流れたシンセとアルペジオがすうっと溶けていく。

理屈じゃ説明できない何かだ。
聴いてきた音楽が別の表情を見せる瞬間っていうのをその時知った。

多分人気の少ない田舎道をどこかロードムービーみたく色を映したこの感覚と思い出は俺だけのものということにしておきたい。


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