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俺とTHEE MICHELLE GUN ELEPHANT

「タイミング的には今だな」と下書きから引っ張り出した。
チバユウスケに対する思いが人一倍熱いわけでもないし、ミッシェルガンエレファントに対する思いはただ「青春の1ページ」に過ぎない。
どういうきっかけかすら、もう覚えてない。高校生の時分に「ギヤ・ブルーズ」というアルバムを聴いた。
ただ、それだけで俺の音楽の歴史に刻むくらい、印象的な出会いであったのは間違いない。


俺は結構なニコ厨で、たぶん本当の最初の出会いは「リリィ」かなんかを聴いた時だ。
まあこの2023年の今、この曲がどういう立ち位置の曲かどうかは置いておいて、純粋にいいなと思ったんだ。
既にミッシェルは解散しているし、熱いファンでもないし、ただそれくらいの認知。
例によって、この年代以降にデビューした人からも名前の挙がるバンドだったし、ただ聞いておいた方がいいと、俺は純粋にかっこいいから、じゃなく実績解除みたいなノリで、先のアルバム「ギヤ・ブルーズ」を聴いた。

頭一発目から打ち抜くようなスネア、地を這うように唸るベース。そしてギターが入っていく。
最初から「来る」雰囲気はもちろん感じ取っていながらも、体温がずっと上がるような感覚。
これが一曲目、紛れもなく「ああ!やばいかも」と思わせる熱量がそこにあった。

余談だが、俺がベースを初めたころ、最初にEを鳴らしたとき、「ああ、ウェストキャバレードライブの出音!」みたいなわくわく感と併せてこの曲は俺の思い出のひとつである。

このアルバムは最後までカッコいいままヒリヒリしているし、うまく説明するものではないが、これがロックだ!と思わせる熱量があった。
もともとミーハー性質な俺はこういう、ちょっと周りは聞いてなさそうな、でも有名で力のあるものに影響を受けやすいので、その瞬間風速は最大になった。

THE BACK HORNしかり、ART-SCHOOLしかりだが、当時ヒリヒリしたシャウトにとにかく憧れた。
言葉であることは間違いないが、でもそれを誰かに伝えるというより、自分の中からうごめいて出てきたような、能動的な声。

ミッシェルのシャウトはそれと性質は違うかもしれないが、でも遠くないところに、力強く歌うということに対するシナジーみたいなものがあって、俺はこの、チバユウスケの声にひどく憧れたのだった。

許されることでもないし、けれんみもなく言うことでもないが、この時たばこを吸い始めた。
もちろん、影響はこれだけとは言い難いが、限りなく火をつけるきっかけの一つであることは間違いなかった。(たばこだけに)

当時からこれだけでこういう声が出せるなんて、本気で思っていたわけではない。
ただ、きっかけと、多少でも近づけるなら近づきたかった。
実際楽器をはじめる動機も似たようなものだろう。
ピック弾きもミッシェルの影響が含まれるし、いわゆる「形から入る」の入り口としてミッシェルは俺の最適解だったのかもしれない。

それからはミッシェルの中でも有名なアルバムを聴き漁る。
初期のトカゲやシャンデリヤみたいな小気味よいカッティングの曲も好きだったし、カサノバスネイクあたりのどっしりと重さのある曲も好きだった。

歌詞について、俺はあんまり深い意味を気にしないで聴いていた。
結構この時期にしてはそういう意味でレアなバンドかもしれない。意味を考えるより先に、ここにぴったりはまる言葉みたいな感覚。

このすんなりと読み解けない言葉の羅列の意味を考えるよりもそこに乗る音のほうが大事みたいな感覚って言ったらいいんだろうか。
その温度感から、勝手に分かった気になれる音楽というか。

ただ、如何せんすでに終わっていたバンドだったし、それ以上に熱心になることもなく学生時代は過ぎ去った。

その割と直後にアベフトシの訃報が舞い込んだ。
バンドにはいくつも終わりがくるけれど、人が終わるときのショックはそれなりに大きかった。
何しろ生きてさえいれば何らかで新曲が聞けるけど、もう聞けないんだから。

これも余談だがこの年は後にフジファブの志村の死もあって、ただ偲ぶことしかできないのが、なんでこんなことしかできないんだろうと、静かに思っていた。

俺はそれからずうっと、実のところ最近までバースデイを聴かなかった。
必要としてなかった、と言ってしまえばそれまでの話だ。
ただ本当に、たまたまサブスクのおすすめで聴いた「なぜか今日は」と「青空」にひそかに、心惹かれていたんだ。
ミッシェルの文に書くのは違うかもしれないが、俺はチバユウスケの奏でるロックが好きなんだって、改めて思ったんだよ。

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