見出し画像

映画鑑賞『エレファント・マン』

本当に醜いのは我々の心である。そんな感想です。

エレファント・マン  1980 監督 デイヴィッド・リンチ

シンドラーのリストに続いて、実在の人物を題材にした映画を鑑賞しました。1980年の映画ですが、モノクロで作られています。その白黒の映像は大変作りこまれていて、全てのカットが芸術的と言えるほど綺麗なものでした。

さて、この映画の舞台は19世紀ロンドン。見世物小屋でエレファント・マンと呼ばれる青年ジョセフ・メリックと医師が出会うところから始まります。医師のトリーヴズはメリックを研究対象として預かることにします。

見世物小屋でひどい仕打ちを受け、人間的扱いをされていなかったメリックですが、病院にきたおかげで、人間らしい生活を送れるようになります。
さらに、彼が知性の高い人間だということが分かると、社交界の人々とも交流し、社会的なつながりを持ち始めます。
しかし、噂を聞いた心無い人たちに乱暴されたり、見世物小屋の興行師に連れ去られ、再び見世物として扱われたり、残酷な仕打ちにあいます。
好奇な目で見てくる人に追いかけられ、「僕は人間だ」と叫ぶ後半のシーンでは、ハンカチを濡らさずにはいられません。

初めて舞台を観劇し、感動を覚えたメリックは自分のベッドで深い眠りにつく。。というのが、ラストシーンなのですが、余韻たっぷりで感慨に浸りました。
考察としては、彼が演劇を見て感銘を受けたのは、そこでは所謂『普通』ではない人物など、多種多様な人がそこでは活き活きと生きていたからだと思います。それを見て、自分を受け入れることができた彼は、満足して眠りについたのではないかと考えます。

印象的なのは、医師のトリーヴズがメリックのおかげで医師としての権威を得ますが、これでは興行師と同じではないかと葛藤するところです。
彼は一人の友として、メリックと接するようになりますが、この二人の友情に感動しました。若きアンソニー・ホプキンスがとてもいい役です。

現在の日本でも、見た目至上主義的な風潮は変わりません。しかし、心の目で本当に美しい人を見分ける審美眼が、これからを生きる我々には必要になるのではないでしょうか。


補足
ジョセフ・メリック氏はプロテウス症候群を患っていたようです。聞いたこともなかったので、調べてみると、世界でも200例程度しか確認されていない希少な疾患のようです。特徴としては、皮膚、骨、筋肉などが年齢とともに肥大してしまう病気だそうです。現在も闘病されている方もいるので、この映画をとっかかりにこの病気のことを知る人が増えて、理解が進むことを願います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?