【エッセイ】病床との距離と偽ヤクルトの思い出
20年ぐらい前の話です。
前に勤めていた会社の時の話です。
裏庭に設置されているガスボンベを交換する為に、草がボーボーの荒れ地を通って配送をしていたのですが、その荒れ地に分譲住宅が建ってしまいました。
裏庭に侵入する方法が絶たれてしまい、そうゆう場合はボンベの設置場所を変えるのですが、『モロモロの大人の事情』により、
お前がなんとか工夫しろ、と言われた。
ガッツでガス交換をしろ、という指示。
色々と考えた挙句、お客さん(お婆さん)と相談し、以下の方法になりました。
1.お客さんの呼び鈴を押す。
2.僕の安全靴をお客さんが持って裏庭へ
3.サンダルを借り、トラックからガスボンベを担ぎ(40キロ)、玄関に入る。
4.廊下を通り、寝室を通り、裏庭にセットされた安全靴を履き、ガス交換。
こんな感じです。
帰りにいつも有難うと笑顔で言われ『偽ヤクルト(分かりますよね?)』を1本貰っていました。
1番シンドかったのが、、
その寝室に病気のおじいちゃんが寝ているのですが、そのすぐ横を通らなきゃいけないんですね。
どれくらいの距離かと言うと、布団の端っこをちょっと踏むぐらいです。
布団が浮くぐらいゲッホンゲッホンとせき込んでいるおじいちゃんの隣を歩くのが、いつも申し訳なかったです。
ある日、そのお客さんちに行ったらお葬式をしていた。
とうとうあのおじいちゃん亡くなったかぁ、と思っていたら、
まさかまさかの、おばあちゃんの方が亡くなっていた。
ホント声に出して、まじでぇ、と言ってしまった。
分からないものですね、凄く元気だったのに……。
あのおじいちゃんが、『玄関を開ける』『靴を持ってく』『偽ヤクルトくれる』をやってくれるのだろうか……と思っていたのだが、施設に入居され、空き家になりました。
あれから20年、今は駐車場になっている。
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