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【エッセイ】 七五三にて、幸が薄い女性に幸あれ!

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次女の七五三に神社にてお祓いに行きました。
おめかしをしている七五三の衣装の女の子を中心に、うちを含めて3家族ほどが固まって座っていました。

だけど、一人だけポツンと離れて座っている40代ぐらいの女性がスーツで座っていた。

控室にいた時から、暗い顔をしているあの女性は、どの子のお母さんなんだろうとは思っていたのだが、どうやら一人でお祓いに来たらしい。

何か、辛いことがあって、清めたかったのだろうな……。
けど、浮かれ気分の七五三と一緒にやらずに、個別にしてあげればいいのに……。

神主さんは、『白いベラベラ』を振り回しながら、神棚に向かって何度も頭を下げている。

神聖な儀式なのに飽きてきた次女は、「ありのぉ~、ままのぉ~」と椅子から立ち上がってレリゴーを歌い始めてしまい、うちの奥さんは慌ててその口を塞いでいる。

それでも歌い切りたいらしく、モゴモゴと「す・が・た、みせるのよぉぉ」と言っている。

「○○区○○町にお住いのぉぉ、伊茶○○子さんの健康を祈祷しぃぃ」

あれっ……、そんなに個人情報を他人がいっぱいいる前で言うんだな、と思った。
別に気にはしないけど……。
神様も、何処の誰かを知らせて貰えないと、願いを叶えづらいらしい。
他の子も、何処に住んでいる何ちゃんかを神棚に向かって神主さんは言っている。

「○○県○○市○○の3-7-19 エグゼンス201号室(架空のマンション)の田中涼子(仮名)のぉぉ」

えっ……。 隣の件から来たの? あの一人お祓いの女性。

適当な神社に来ただけなのにそんなに効果ある所だったんだ、ここ。 
あと、マンション名と号室まで言っちゃうんだ……田中さんの実名まで……。

「悪霊退散んん、縁結びぃぃ、良縁成就ぅぅ」

神主さんは『白いベラベラ』を右に左にバッサバッサと振り払いながら、
田中さんのガチな願いを叶えようとしている。

あと、ナンチャラとかカンチャラとか、難しい四文字熟語の願い事を
5.6個言っている。

心持ち、うちの娘より『白いベラベラ』の振りっぷりにキレがある。


いったい田中さんはこの神主さんにいくら包んだのだろう……。


ごめんね、せっかく神主さんが腕によりをかけて祓ってくれている最中に、うちの娘がモゴモゴと「少しも寒くないわ」とか歌っちゃってて……。


別に、『一人でお祓いに来たお姉さん』に対して、『寒い』って言った訳ではなく、エルサの真似を突然に初めてしまっただけです。
発作です。
いつもです。

あのぉぉ、宜しければ、うちの子の健康うんぬんは父親の俺がなんとか頑張るとして、うちの祈祷分のパワーを使ってくれていいよ、田中さん。

お祓いが終わるまで、ずっと、エグゼンス201号室の田中涼子さんに幸あれ! って思っていました。



帰りに神主さんからお土産を貰いました。
可愛いピンクのリュックサックに、中身はお札と千歳飴とお菓子といっぱい入っており、次女は凄い喜んでいた。

田中さんも、貰えたのかなぁ、ピンクのリュック。
中身は何だったんだろう……。

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