初ソロキャンプ対あり

傷心旅行は山

7月の連休、かねてから計画していた初ソロキャンプを実行した。

6月に仕事や人間関係のゴタゴタでメンタルがやられドロドロになっていたところに、以前のスマホに記録していた「死ぬまでにやりたいことリスト」を思い出した。

久々にスマホを起動し、運良くデータが残っていたリストをスクロールしていくと「ソロキャンプ」の文字。

これはもうやるしかない。

いそいそとソロキャンプの支度を始め、合計2〜3万で安キャンプの準備が整った。自分でももっとかかるかと思ったが、案外安価で揃えることができた。後述する某アニメの影響から冬キャンプから始めたいという人も多く見かけたが、自分の経験から言っても初めてならば夏キャンプをオススメする(冬は虫がいないという最大の利点があるが)。荷物が安価、そして軽量で揃えることができ、粗悪品だったとしても命の危険に関わることは少ない。日没までの時間も長いため、心に余裕もある。余程の思い入れがない限りは、始めるならば夏が良いと私は思う。

ちなみに私は家族単位でもキャンプをした経験がなく、このソロキャンが人生初のキャンプであった。

家庭環境から出かけるとしても日帰り、または車中泊でということがほとんどだったため、泊まりで、ましてや野外でなんて贅沢な話だった。

幼少期にできなかったことを成人してから経験しようとできるのも、ある意味贅沢な話なのかもしれない。

りんちゃんバイク

当日の私の愛車。

知っている人はもうお分かりであろう。そう、私が普段乗っている原付は、ゆるキャンのりんちゃんと同じモデル、カラーリングなのだ。

正確にはYAMAHAとゆるキャンがコラボしたモデルではなく、たまたま通勤で使うために購入しようと訪れたバイク屋の店主がゆるキャン好きであり、その店主が自作したものが私の手に渡ったという経緯がある。店主曰く、実際のコラボモデルよりも再現度が高いらしい。

当時、私はゆるキャンについて全くと言っていいほど知識はなかったが、原作者が水曜どうでしょうのファンであるという話から興味を持ち(水どうは元々好きだった)、今ではすっかり全話視聴済である。全人類見ろ。

舞台

キャンプ場は近場で話題になっていた場所を選択した。

口コミを情報源とするとどこだって賛否両論、アウトドア雑誌にも詳しいわけではないため良し悪しがわからない。そうした中、新聞記事という媒体の異質さに目を惹かれ、即決した。

実際、宿泊施設の裏山だったのでやはり安心感があった。車、バイクの乗り入れができる場所ではなかったため荷物の運び出しは少々大変であったが、ある程度体力が残っている状態ならば問題ないのでは。

丁度、自分がチェックインした日にアウトドア雑誌の出版社の取材が来ていたようで、インタビューも受けた。タイミングが良いのか悪いのか。

しかし、悠々と取材に答えた後に悲劇が起こる。

「あれ…?ガス缶忘れてね…?」


バーナーにつけるガスカートリッジを忘れた。


まずい。


すぐに近くのホームセンターに向かい、息も絶え絶えに店員さんを呼び止める。

「すみません!ガスカートリッジってありますか?…あ、はい。えっと、ガスカートリッジっていうのは…こうキャンプとかでよく使う…」

「すみません、品切れですねぇ」

まじかよ。

その後、近くのホームセンターから虱潰しに電話を掛け、ようやく在庫があると連絡があったのは片道30分以上(往復1時間半弱)かかる場所であった。


キャンプに行く際は、絶対に忘れ物をしないように。

こんな...こんなはずじゃ...畜生ォ...持っていかれた...!!

夜はもっと寝苦しいかと思っていたが、嘘のように快眠だった。山の朝、気持ち良すぎ。

近くに朝の5時からやっている温泉があったので、せっかくならばと入ることにした。

道中、下り坂注意の看板が現れた。登り坂は緩やかであったが、おおかた下りは傾斜が急になっているのだろう。

そう疑わなかった私に二度目の悲劇が襲う。

登りは舗装された綺麗な道だったが、下り坂に差し掛かるとその姿は一変。アスファルトがグラデーションのように荒れていき、その先は砂利であった。

「え!?そっち!?」

ツッコみながら案の定バイクでズッコケた。


運が良いことに、近くで畑作業をしていたおっちゃんが通りがかり、声をかけてくれた。
幸い傷とアザはひどかったが骨折も捻挫もしておらず、バイクも動いた。

おっちゃん曰く、ここは皆(バイク)転んでひどい怪我をするそうで、この程度で済んで本当に運が良かったらしい。


皆転ぶなら、早急に道路を舗装してほしい。

もしくは、坂の図解を看板にしてほしい。

丁重におっちゃんにお礼を言い、行き先の温泉で傷口を洗った。このご時世で行く先々に必ず置いてあるアルコール消毒液には感謝である(本来意図する使用用途とは違うが)。

総括

初キャンプはアクシデントが多々あり、物思いに耽る時間もなかった。

しかし、傷心旅行を目的としていったのなら、物思いに耽る時間なんて逆にないほうがいいのかもしれない。

ソロキャンプの醍醐味は寂しさを味わうことらしいが、まだきっとその時じゃない。そんな気がする。

「キノはどうして旅を続けているの?」
「ボクはね、たまに自分がどうしようもない、愚かで矮小な奴ではないか? ものすごく汚い人間ではないか? なぜだかよく分からないけど、そう感じる時があるんだ。……でもそんな時は必ず、それ以外のもの、例えば世界とか、他の人間の生き方とかが、全て美しく、素敵なものの様に感じるんだ。とても、愛しく思えるんだよ……。ボクは、それらをもっともっと知りたくて、そのために旅をしている様な気がする」



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