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ヨコシマ相談室#8.喘ぎ声の練習方法(1通め-5)



港区のマンション。タロウは色白の美貌に困惑の色を浮かべつつ、iPhone越しの船橋の摩詠子に毒づいていた。

「あー、もう!イジリたきゃ気が済むまでイジるがいいぜ!それで?!どうせ追加でなんかやらせる気だろ!次は?基礎練の次は何練だ!?」

「ウフフ。物分りのいい男ね。では、一度スマホを置いて、あなたのおうちの玄関に行ってごらんなさい…3つの荷物が届いてるから」

「えっ…うわー…マジで玄関にAmazonの置き配があるぅ…タロウちゃん泣いちゃうん…勘弁してぇん…」

「わたくし、少女の頃に本で読んでから、このシチュエーションにずっと憧れていたの…。中身のわからない素敵な3つの贈り物…♥」

「…ああ『あしながおじさん』ね」

「ちがうちがう。孔明様が三か条の謀り事をしたためて、趙雲に袋に詰めて渡すシーンよ♥」

(横山光輝版「三国志」10巻より)

「ほんとヤダもうこの人!ん、これはCDかな?…うへー、おフランスのエロ爺ことセルジュ・ゲンズブールのえげつい囁き声ーーーッ!」

「わたくし思いますに、現代日本の殿方が『ベッドの上で全身全霊で乱れられない&声が出せない』原因は、いびつなメディアからの影響がかなりあると思うの。日本の一般的なA〇ではね、DAN優さんが一言も喘がず黙ってことを致すキマリがあるんですって」

「はあ」

「もしDAN優さんたちの声が漏れたりしたら…『女優の声が聞こえなくなるぞ!』って監督さんにお叱りを受けるそうよ」

「言われて見ればあまり聞こえないな確かに」

「ヨヨチューが本で業界の悪癖だって嘆いていたわ」

「業界…」

「で、そういったフェイクを見ながら成長したらね、誰であれ『ああ、そうか。男は声なんか出しちゃいけないんだ…男が感じてる様子なんか一切見せちゃいけないんだ…機械のように…無表情に…自分を殺して…』ってなっちゃうわよね。じつは女性は男性が乱れまくる姿をかぶりつきでぜひぜひ見たい聞きたいと思っているのに…」

「あの…実のところ、その…俺はわりと声出すの平気だったりするけど…?(〃ノωノ)ネエホメテホメテ」

「あー。あなたは生粋のビ●チだから」

「いちいちむごい…」

「日本男児として産まれたら最後、あえぎ声なんか自然に出てこない方が当たり前なの。脳に文化的ストッパーがかかってるわ。人格が高潔でマジメな殿方なら、なおさらよ。で、あればよ。日本男児の95%を占める『真面目すぎて声が出づらくなってる殿方』よ、こういう作戦はどうかしら。


①己の声質やキャラに合わせて「これはそれなりにアリだな」って思えるエロエロしい〇えぎ声ぽいCDを、いくつか用意
②『こんな声なら出してもいいかも』『さすがにこんな声は出したくないな』と実践を想定しながら聞く
③己のうちにインストールした声を、出す(照れるなら頭の中に入れとくだけでも十分よ)

たったこれだけ!」

船橋のベッドサイドの小机の冷め切った紅茶を注ぎながら摩詠子は続けた。

「で、思いついたのがセルジュゲンズブール。小さい囁き声だし、YAMATO民族な殿方が聞いても程よく格好いい感もある。大和撫子にドン引きされにくい。これなら『ま、まぁ…この〇えぎ声ぐらいの、小声で控えめなやつならまぁ、どれか一個くらいなら…出してみても、いいかなぁ…』って思えない?はじめはアメリカンR&B兄ちゃんのあられもない絶叫〇えぎ声でも貼っとこうかと思ったの。けれども。絶叫系工口R&Bを納得いかないまま(すなわち本質を掴まないままで)日本人が表面だけいきなりベッドで真似たら…まあハズす可能性、高いわよね」

「でもね。このゲンズブール爺さんの小声の囁きは参入しやすいけどその実は突き詰めると非常に奥の深い相当な高等技術だから…これが本気でマスターできれば下手なアメリカンマッチョの絶叫なんかよりもずっとずうっと…最・ッ・高・に・い・や・ら・し・い。というわけ。…ね、じつにYAMATO男児向きでしょ?」

「つまりね、自分なりの〇えぎ声を”型”として軽く掴んでおくってこと。そういう事前準備があれば『自分が思わず漏らした声』にイヤな気分になったり、ましてやビビったりしないわ。ここまでくれば、あとはリラックスしてコトを楽しめる。楽しんでるとまたいい声が出る…という好循環に入っていけるの」

やらしい声の好循環ておい…」

「はじめはほんのちょっと作り声でもいいわ。殿方がそういう努力を怠らなければ、女性を虜に出来るだけでなく自分自身の快感も自然と深まっていくに違いないわよ!」

「...うーむ…」

「たしかに、現代日本のYAMATO男子なら、ため息混じりの声を漏らすのや、まして最中、そんな声で女の子に話かけるなんて心底ためらうわよね。その感覚、ふつうよ。じゃあね、まずは『最中に声出したり、喋ったりしても本当はいいんだ!』ってただ心に留めただけでいつもと同じように黙ってHをしてみたらどうかしら?心に留めておくだけで理性のリミッターが一つ外れる。貴方にとっては同じ行為をしているつもりでも、どこかしら息づかいや態度が変わり、すでに彼女さんの目に映る貴方の姿はものすごく、ものすごく変化しているはずよ。たったそれだけの気の持ちようで、あなたは『気配を消す存在』から『晒し表現する存在』に変身しているの。もはや貴方は平均より2歩も3歩もリードしたわ。要は声でなくとも何らかの形でお相手に本気の喜びを伝えられさえすればいいだけなの。どう?簡単でしょう?そういうことを伝えたかったのタロちん、わかった?」

こう言われて、タロウは唐突に気づいた。

「だったら!だったら!俺がやらされたさっきの『お胸が感じちゃうーッ!』は何だったん!!!あれ必要ないやつやん!!!」


(注:ちなみに上のは、「はじめてのベ〇ドイン」でやるにはちょっとテンション上げずぎNGの見本。もちろんJB様は世界一のワイルド&セクシーボイスなので…あなたがよっぽど特〇なプレイをする時なら…いえ、なんでもないわ。えーっとその、これは純粋に音楽として楽しんで♥キィェェェェェィーーーーーーーーッ!)

iPhone画面越しの摩詠子はほんの一瞬

(あらやだこの子気づいちゃった)

というような表情でバツが悪そうに目を泳がせたが、すぐ向き直って言った。

「うふふ。何言ってるのよナンパ師のくせに。魂のリミッター全外しで大きい声出せるんなら出せた方がもっともっといいし、囁き声でもメッチャ気の利いたいろんな工口声をひとつだけと言わず全種類コンプリートで出せたらもっといいじゃない。よし!タロウは56デシベルとか72デシベルとか生っちょろいこと言ってないで、J Bを超えましょ。90デシベルよ。喘ぎ声を『タロウ作タロウ演じる迫真の工口工口大迫力ムービー』に作り込み港区の女どもをベッドで1人残らず感動の渦に巻き込んじゃえ!」

「いっやぁ…だがよ90デシベルJBは…あのJBは…いくらなんでも…ベッドで感動じゃなくて、あれはさすがにどう考えても

超ハイテンションの人が祭りの最中に車に撥ねられた時の声だろ…」

それは摩詠子にも解っていた。だが摩詠子は引き下がるのはちょっとシャクだったのでサクッとごまかした。

ハイこの話終わり!あ。それとね、ピロートークでの大切なポイントがあるわ」

「スルーすんなよ…」

つづく


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