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ChatGPT (AI) を用いた考察系レポート作成について考察する 【病歴要約】【総合考察編】

こういう方におすすめ
ChatGPTが作成する考察系の文章に興味がある。
・医学考察系のレポート自体に興味がある。
おすすめでない
・今すぐ自動でレポートを作りたい→下のリンク

※ 最新バージョン (2023/8) の ChatGPT-4 とpluginsで「ほぼ全自動」の病歴要約作ってみました。興味がある方はこちらどうぞ。


0. はじめに

0.1 AIでレポート作成する問題点

AIを用いた文章作成として, メール, プレゼンテーション, スピーチの下書きなど幅広いです。課題, 論文, 学術レポートへの利用に関しては様々問題が議論に挙がります。AIでレポート作成する上で現在問題となっていることをChatGPT自身に聞いてみました。

⓵. 学習妨害とスキル育成不足:AIの使用はレポート作成者自身の理解や思考の深化を阻害し、批判的思考スキル育成も妨げる。
. 視点や思考の欠如:AIは人間のような独自の視点や洞察を提供できない。
. 品質と正確性:AIの生成するレポートは誤解や品質の問題を含む可能性がある。
. 学術的不正:AIによるレポート作成は剽窃(ひょうせつ)や学術的不正と見なされる可能性がある。

①番は個人の問題, ②番と③番は作成物のqualityに関わる問題で何とかclear出来そうですが…④番に関しては受理する側がAIで作成したreportを認めないと公言していれば使用を控えましょう。

0.2 個人情報保護の注意点

一応, ChatGPTにはprivate modeがありますが。情報漏洩の危険性は否めないです。特に医学系のレポート (病歴要約) は患者情報をOpen AIに流出させてしまう危険があるのでprivate modeは必須と考えます。

1. AI (ChatGPT) による考察系レポート文章の作成

1.1 一般的な理系レポート (実験, 調査など) の【考察】

一般的な理系レポートで【考察】partに書くべき内容としてどのようなものがあるかChatGPTと対話しながら以下にまとめました。

考察部分を構成するための全⑨つの主要な部分は以下のとおりです。
① レポート全体の要約レポート全体のコンテクストを設定し、読者が結果セクションで何が報告されたかを再確認します。
② 結果 partの解釈結果が具体的に何を意味するのか、既存の研究とどのように比較できるのか、そして結果が既存の研究と異なる場合、その理由について考察します。
③ 主張:結果と既存の理論や研究から導かれる結論を明確に提示します。研究が科学コミュニティにとって何を意味し、それが既存の知識にどのように貢献するのかを明示します。
④ 未解決の問題と今後の研究への提言:研究が解明できなかった問題や、新たに生じた疑問点、そしてそれらに対する今後の研究の提案を行います。
⑤ 研究の限界:自分の研究における限界や欠点を認め、これには、データの不足、手法の制約、サンプルの限界などが含まれます。
⑥ 実用的な応用:研究結果が具体的な実践やポリシーにどのように適用され得るのか、またはそれらにどのような影響を与え得るのかを考察します。
⑦ 理論への貢献:あなたの研究が理論的な知識や理解にどのように貢献するかを詳細に説明します。
⑧ 倫理的な観点:研究の結果や推奨が持つ倫理的な意味や影響について考察します。これは特に医学や心理学、社会科学など、人間の生命や生活に直接関連する研究において重要です。
⑨ 反省と学びあなた自身がこの研究プロセスから何を学んだのか、どの部分で挑戦を感じ、どの部分で成功を感じたのかを考察します。これは研究者としての成長や次のステップを考える上で有用です。

基本的にChatGPTが得意とする分野は【要約】【校正】【翻訳】で論理的な【考察】は苦手と言われています。そこで上にあげた項目に対してどれほど苦手意識を持っているか尋ねてみます。

あなた(ChatGPT)の得意度を数字のパーセンテージで表して欲しいです。例えば⓵要約は
人間よりあなたの方が得意かもしれません。あなたが得意で単独で行えるものを100%と定義し
逆に 苦手 人間の思考能力でないと作成できないものを0%として⓵から⓽を点数化してください。
さらに得意度に基づき降順に並び替えてください。

予想通り要約得意 (90%)倫理的な考察は苦手 (30%) という結果となりました。

という訳で【倫理的な考察】などは特に詳細なプロンプトが必要そうです。

1.2 医学系考察文の作成: 【病歴要約】の【考察】

これまでChatGPTを用いて【病歴要約】を作成する方法を紹介していきました。繰り返しになりますが基本的にChatGPTは要約機能を得意としており,  患者テキストファイルから【検査値】【現病歴】などを抽出し文字列として並べることは可能です。

しかし, 考察の能力は乏しく, こちら側がどのような【考察】の文章を書きたいか具体的に提示しないと思い通りの文章は作成できません。

前回の記事公開以降, Pluginsの実装などChatGPTの環境が変わりつつあります。しかし【総合考察】を劇的に作りやすくするPluginsは今のところ確認できていません。あえて挙げるならAsk YourPDFでしょうか。このpluginsは手持ちのpdf, 特に参考文献となる論文をChatGPTに読み込ませることで, その論文の要約や論文どうしを比較した考察の文章を作成することができます。

下のサイトで ↓

pdfのリンクを作成し リンクIDをChatGPTに貼り付けます。

使い方の詳細は ↓ で紹介しています。興味があればどうぞ。

1. 課題, 問題点

究極的な目標は「患者テキストファイルを元に〇〇の疾患について論文を引用し考察してください。」のような簡単なプロンプトで全自動で作成することです。しかし, 現時点 (2023/7) では実現するまでほど遠く課題は山積みです。  架空論文提示問題など致命的な問題はいくつかありますが, ChatGPTに患者病歴から【総合考察】を自動で作るにあたり課題, 問題となる点を挙げてもらいました。

ChatGPTが認識している医学系考察文章作成時の課題

繰り返しになりますが, 論文検索能力が低い, 考察能力が低い, 嘘をつくことがあるの3点です。というわけでそれでもChatGPTと病歴要約を共著するためには

1. 論文準備:こちら側で良質な論文を検索して準備しておく。
2. 構成の指示:
文章の構成, 具体的な考察内容, 指針を考えて指示する。
3. 校正:
outputされた文章を自分で確認し不正確な情報を校正する。

ということが必要となってきます。

2. 準備

2.1 論文の準備

2.1.1 自力で探す
AIを用いた医学論文の検索方法はいろいろ提案されていますが, なかなかうまくいかず (当方の実力不足感も否めませんが) 結局のところ, Pubmedなどで望みの論文を根気強く自力で探すのが一番早い気がしてきました。

2.1.2 AI サイト (ChatGPT, Perplexity AIなど) にプロンプトを入力

探したい論文をkey wordと共にChatGPT等にプロンプトし論文を探す手法です。いずれのツールも一長一短がある印象です。

2.1.3 ChatGPTと相談しながら論文を探す

病歴要約の公式sampleから【入院後経過と考察】の部分だけを抽出しどのような論文を探せば良いかChatGPTに考えてもらいます。

公式sample腎臓 微小変化型ネフローゼ症候群の一例

text dataをchat欄に直接コピペした方が早いですが, 試しにask your pdfで入力してみます。

腎臓 入院後経過と考察 ① doc_id: 17838b09-eccf-4798-9cf6-4a1c2cde9024
上のpdf文章を元に医学的な考察文を作成したいです。まずはAsk YourPDFを用いて
患者情報, 診断, 治療 (行ったもの全て), 社会的問題点, 課題について要約してください。
入院後経過と考察までの要約
この患者の病歴から医学的な考察文章を書きたいと思います。これからPubmedで論文を検索します。
Pubmedではどのようなkey wordで検索したらよいですか。治療に焦点を当ててください。
英語のwordを提示してください
Pubmed検索wordの提案

浮腫の管理が重要そうでしたので "Nephrotic syndrome" "edema" "furosemide"などで検索し, ガイドラインも加えて 最終的に以下の3つを準備しました。

① ネフローゼ症候群ガイドライン 2014
[Clin Exp Nephrol (2016) 20:342–370]
doc_id: 3cf671c7-1feb-4c9d-8b8d-05cfc11c062d
② Prophylactic anticoagulation in nephrotic syndrome prevents thromboembolic complications
[BMC Nephrology (2019) 20:139]
doc_id: 31b3d505-c8b5-49ca-aef0-478316d45256
③ Albumin Furosemide combination for management of edema in NS
[Cells 2015, 4, 622-630]
doc_id: b47f5305-8d90-4603-9215-802984945561b

1. ネフローゼ症候群ガイドライン 2014
   [Clin Exp Nephrol (2016) 20:342370]
   doc_id: 3cf671c7-1feb-4c9d-8b8d-05cfc11c062d
2. Prophylactic anticoagulation in nephrotic syndrome prevents thromboembolic 
   complications[BMC Nephrology (2019) 20:139]
   doc_id: 31b3d505-c8b5-49ca-aef0-478316d45256
3. Albumin Furosemide combination for management of edema in NS
   [Cells 2015, 4, 622-630]
   doc_id: b47f5305-8d90-4603-9215-80298494556b

Ask YourPDFで上の文献を参照してください。それぞれを30文字で要約してください。
参考文献のざっくりとした説明

2.2 文章構成について

【総合考察】をどのように書くかChatGPTと対話しながら文章の構成 (フレームワーク) を考えました。先ほど挙げた一般的な理系レポートの構成と本質的には共通部分が多いと思いますが, 【病歴要約】という特殊なレポートでは議論, 考察する内容も大きく異なってきます。ChatGPTに症例報告 (病歴要約) の考察のテーマをできるだけ多く挙げてもらいながらリストアップしたところ以下の項目となりました。

1. 診断
2. 治療
3. 指導
4. 社会, 環境整備
5. 倫理

6. 病態生理学的
7. 症例の一般性
8. 予後の考察
9. コミュニケーションと患者教育
10. 疾患管理の戦略
11. 遺伝学的な要素
12. 統計的な解析
13. 治療の限界と将来の可能性
14. グローバルな視野
15. 心理的・精神的要素
16. 文化的要素
17. コストと経済的要因
18. テクノロジーとデジタルヘルス
19. 患者の満足度と経験
20. 自己管理と患者のエンゲージメント

下の番号に行くにつれて, 例えばテクノロジーやグローバルな視野について考察している人を見たことがありません。また, Ask YourPDFで公式sampleや自分が書いた病歴要約の総合考察を読み込ませ, どのような構成か聞いたところ。概ね1番から5番の内容でカバーできている印象でした。

という訳で 【総合考察】の文章の構成は以下で作成したいと思います。

【総合考察】の文章構成
①. 診断
②. 治療
③. 指導
④. 社会, 環境整備
⑤. 倫理

総合考察 文章の構成

⑤つのカテゴリーをさらに18個のサブカテゴリーに分類しました。

①. 診断
1.1. 診断の妥当性 1.2. 困難な点 1.3. 鑑別疾患 1.4. 稀な疾患の説明
②. 治療
2.1 本症例の治療 2.2 ガイドライン, 他研究の治療との比較 2.3. 妥当性
2.4. 治療の副作用
③. 指導
3.1. 生活習慣の是正 3.2. 再発指導 3.3. 治療薬内服の指導
④. 環境整備
4.1. 患者背景の把握 4.2. 多職種間連携 4.3. ケアプランの策定
⑤. 倫理的考察
5.1. 自己決定権の尊重5.2. 心理・社会・文化面の視野5.3. 治療提供の公平性5.4. 終末期・緩和医療の考察

総合考察 文章の構成 サブカテゴリー

実際の症例の【入院後経過】でどのような経過をたどったかで考察すべきポイントが変わってくると思いますのでChatGPTに具体的にどのようなサブカテゴリーで書くか指示すると良いと思います。

以下サブカテゴリーの説明です。プロンプトとして

①. 診断
1.1. 診断の妥当性: この部分では、行われた診断の妥当性について評価します。どのような診断基準が使用され、それが適切だったかどうかを考えます。症状、検査結果、そしてその解釈に基づいて、診断が正しく行われたかどうかを考察します。
1.2. 困難な点: 診断過程で遭遇した困難や挑戦について述べます。特定の症状の解釈や検査結果の理解が難しかった場合、その理由と解決策を考えます。
1.3. 鑑別疾患: 他の可能性のある疾患について考察します。なぜそれらの疾患が除外され、最終的な診断が確定されたのか, 除外すべきmimickerを説明します。
1.4. 稀な疾患の説明:本例が稀な疾患である場合, その疾患の疫学や概要を簡単に説明します。
②. 治療
2.1 本症例の治療: この症例で行われた具体的な治療法について説明します。
2.2 ガイドライン, 他研究の治療との比較: 現在のガイドラインや他の研究で推奨されている治療法と、この症例で行われた治療法を比較します。
2.3. 妥当性: その治療法がこの患者に対して妥当であると考えられる理由を提供します。
2.4. 治療の副作用:治療薬による副作用の出現に対して, 治療, 予防策について述べます。
③. 指導
3.1. 生活習慣の是正: 患者が改善すべき生活習慣について考察します。
3.2. 再発指導: 再発を防ぐための具体的な指導や勧告を提供します。
3.3. 治療薬内服の指導: 治療薬の正しい使用方法についての指導を行います。特に、ステロイドの減量や中止など、特定の薬物についての注意点を明確に説明します。
④. 環境整備
4.1. 患者背景の把握: 社会的背景と生活状況などを把握します。患者のライフステージ、家族の構成、家事、妊娠、子育て、職業など、特に高齢者の場合には、自立生活の可能性や同居介護者の有無などの具体的な状況も詳細に把握します。
4.2. 多職種間連携: 早期から地域包括ケアシステムなどの公的機関、産業医、多職種間の連携をはかります。
4.3. ケアプランの策定: 介護、訪問診療、リハビリテーションなどを含む全体的なケアプランを策定します。また、地域のリソース(デイサービスや地域福祉サービス、高齢者向けの社会活動等)を提供、活用します。
⑤. 倫理的考察
5.1. 自己決定権の尊重: 患者の自己決定権を尊重する視点からの考察を行います。
5.2. 心理・社会・文化面の視野: 患者の心理的、社会的、文化的な状況についての考察を深めます。
5.3. 治療提供の公平性: 治療提供における公平性についての深い考察を提供します。
5.4. 終末期・緩和医療の考察: 終末期の治療や緩和医療の視点からの深い考察を行います。

総合考察 文章の構成 サブカテゴリーの説明

2.3 考察すべきカテゴリーごとの比率の指定について

先にあげた⑤つの構成で考察文が書けると思いますが各カテゴリーの文字数もこちらで設定したいと思います。典型的な病歴要約の考察は患者の【治療】についてメインで考察し, その他, 診断や指導を少し述べる型だと思います。公式sampleをいくつか読み込ませ各カテゴリーの文字数をカウントしてもらいました。

下に示した総合考察の文章について, 各文章を5つのカテゴリー すなわち ⓵診断 ⓶ 治療 
⓷ 指導 ⓸ 環境整備 ⓹ 倫理に分類してください。全体の文字数を100%としたとき, それぞれの
カテゴリーがどれくらい占めているかパーセント表示してください。

以下は【腎臓】公式sampleの【総合考察】です。

治療最も多く (65%) 割いており, 治療以外に診断, 指導についてバランスよく述べています。他の内科領域もこのタイプが多いと思います。

こちらは総合内科, 高齢者の考察です。環境整備倫理について多く考察されています。
作成指示する段階でどのカテゴリーについて重点的に考察するか, 必要なサブカテゴリーを提示する, 不要なサブカテゴリーを提示しない, カテゴリーごとの文字数を指示すると良いかもしれません。

ChatGPTに【腎臓】sampleの【入院後経過と考察】を読んでもらいどのような比率, 構成で書いたら良いか聞いてみました。

結構まともな比率を提案してくれました。

2.4 レポートの完成度 (評価ポイント, 採点基準) の定義

完成した考察文章の完成度点数化してみました。公式sampleと雑に作った完成度の低いレポートを読み込ませてChatGPTにとって完成度の高い文章はどんなものか聞いてみました。

減点となるポイントは主にこちら側で設定し作成した文章がChatGPTにとって具体的に何点 (60点を合格) か認識させてみます。

採点基準
厳しめに採点して下さい。
1. 参考文献の引用: レポートには、治療方針や診断の根拠を明確に示すための具体的な参考文献が引用されるべきです。学術的な根拠と厳密性を強調するために重要です。参考文献がない場合や質が悪い引用の場合は大幅な減点対象とします。「ガイドラインや他の研究との比較をしました」などのような文章を書いていても具体的なガイドライン名, 文献名がなければ大幅減点(-25点)です。
2. 具体性: レポートは、具体的な治療方針、診断基準、患者の状態などを詳細に記述するべきです。抽象的な表現や一般的な表現が多い場合、特にAIのような抽象的な記述のみの文章は大幅な減点対象 (-20点) とします。
3. 論理的な構造: レポートは、診断から治療、予後の考察、患者の日常生活への影響など、論理的な流れで整理されるべきです。このような構造が乱れている場合は減点対象 (最大-10点)とします。
4. 臨床的な考察: レポートは、治療の選択や患者への指導など、臨床的な視点からの考察を豊富に含むべきです。最大-15点
5. 詳細な解析: レポートは、病態、診断、治療について患者の検査結果、臨床経過を詳細かつ具体的に考察するべきです。最大-15点
合格基準は60点とし、1から5の項目すべてを減点対象とします。特に具体性の欠如は大幅な減点の理由となります。

ポイントは「厳しめに採点」して下さいとプロンプトしないと質の悪い文章でも合格点 (60点) を超えてしまいます。

3. 試作

まずは先ほど作成した簡易プロンプトを用いて【入院後経過と考察】までの内容を読ませて, 順番に【総合考察】を作成してみます。

3.1.1 バランス型 (治療メイン+その他) 腎臓

治療の比率を少し増やして (60%) 作成してみます。

出力された【総合考察】です。

もちろん、指定された文字数に基づいて、総合考察を作成します。
① 診断 (200文字)

この症例では、ネフローゼ症候群の診断が適切に行われました。若年発症、急激なネフローゼ、タンパク尿主体、アレルギー疾患の既往などの診断基準が適切に使用されました。診断の妥当性は高く、患者の症状と一致していると考えられます。

② 治療 (600文字)
治療はこの症例の中心的な部分で、ステロイド治療、浮腫の治療、塩分貯留の対処、血栓症防止などが行われました。ステロイド治療は微小変化型ネフローゼ症候群の可能性が高いとされたための合理的な選択でした。浮腫の治療としてフロセミドの使用、塩分貯留に対する酸素投与とフロセミド増量、過凝固状態の対処としてワルファリンの使用など、多岐にわたる対応が適切に行われました。プレドニゾロンの減量も計画的に行われ、再発なく治療が進められました。全体的に、治療は現在のガイドラインと一致しており、適切に行われたと評価できます。

③ 指導 (200文字)
指導部分では、生活習慣の是正、再発指導、治療薬内服の指導が重要です。特にステロイドの減量や中止についての注意点を明確に説明することが必要で、個別化されたケアが最良の結果をもたらすでしょう。全体的なケアの質をさらに高めるための鍵となります。

ChatGPT4で出力された【総合考察】

プロンプトに忠実という意味で「間違っていない」「あたりさわりのない」「一般的論を並べた」の文章となりました。初めて病歴要約を書く人, どんな内容で書いていいかわからない人の下書きとしては良いかもしれません。しかし, そのまま提出したら100%rejectされます。

このやり取りは何度も繰り返していますが, 今回出力された文章と公式sampleの差は, 個人が考えた, 具体的な専門的な考察がないことです。どのようなテーマに注目し具体的な考察をするかをChatGPTは自動では行わないので, 極めて具体的に指示する必要があります。

具体的な考察内容を指示し論文も準備していたら全て手動でやるのと変わらない気がします。せめて自動で論文検索できれば話は全然かわってくるのですが…

具体的な点数は何点位でしょうか。

腎臓 簡易プロンプト 点数

60点と低めの点数となっています。

ChatGPTに作成を依頼すると抽象的な文章になります。「言葉」のみのプロンプトで「具体的」な考察を作成することは困難と思われます。具体性を持った詳細な解析な解析をするには「参考文献」が必要と考えます。 

先ほど準備した論文Ask YourPDFを用いて考察してもらいます。

ネフローゼ症候群ガイドライン 2014 
[Clin Exp Nephrol (2016) 20:342–370]
doc_id: 3cf671c7-1feb-4c9d-8b8d-05cfc11c062d

Prophylactic anticoagulation in nephrotic syndrome prevents thromboembolic complications
[BMC Nephrology (2019) 20:139]
doc_id: 31b3d505-c8b5-49ca-aef0-478316d45256

Albumin Furosemide combination for management of edema in NS
[Cells 2015, 4, 622-630]
doc_id: b47f5305-8d90-4603-9215-80298494556b


Ask YourPDFで上の文献を参照してください。
この文献を用いて先ほどの症例について論じてください。
文献による治療の考察

AIの作成する文章は毎回ランダムに「ですます調」になっていたり, 箇条書きになったり統一性がないので, 最後に【文章校正プロンプト】で仕上げます。

【文章校正プロンプト】

本例の要約を条件に従い出力例のとおり作成してください。■は表示不要で 文字列に置き換えてください。

条件:■に置き換える文字列として以下のとおり
診断名, ガイドライン名, 本例に施行した治療, 治療の根拠となる文献名, 本例に施行していない他の治療, 入院中主病名とは異なる疾患, 問題 (院内感染, 使用薬剤による副作用)に対する治療, 再燃のリスク, トリガーとなるもの, 再燃予防のために行う患者指導の内容, 副作用とそれの予防, 中止, が重要となる薬剤, 例えばステロイド, 予想される副作用の説明とそれに対する指導内容。薬剤, 再燃の指導は【入院後経過と考察】で言及していなくても指導したということにして作成。ガイドライン以外の引用文献を用いた説明があれば, 病態や治療の理由(何に対して)かを詳細に記述してください。文献を引用した考察では本例にはどのように適応できるのか理由を加えて述べてください。「この治療の根拠となる文献は」という文言は不要です。

■rは ガイドライン名または引用文献+[雑誌名;巻;ページ]の形式で表示
引用文献■rは複数ある場合は複数の文章を出力する。

出力例:
本例は■と診断し■を行った例である。
■rでは■に対して■が推奨されている。
■では■がしばしば問題となるため■を行う■r。
■では■が考えられるため■も考慮される■r。
本例には行っていないが■という報告もある■r。
■は■により再燃することがしられており■を指導した。
■は使用により■が出現するリスクがあるため■。

ランダム性が高いので毎回異なる文章を返してきます。説明が甘かったら。例えば

〇〇行目を, 〇〇の文献についてもっと詳細に考察して下さい。

などの簡単なプロンプトで大幅に改善されます。

腎臓 校正プロンプト
厳しめに採点して下さい。

公式sampleと同じ100点でした。論文提示+校正プロンプトで一応ChatGPTからみた最高の考察が完成しました。

3.1.2 バランス型 成人スティル病

まずは簡単なプロンプトで作成します。前回と同様に【入院後経過と考察】を読み込ませ1000文字で作成してくださいと指示します。

成人スティル病 簡易プロンプトでの出力文

具体的な考察はなく抽象的な文章となっています。

厳しめに採点してください。

62点でした。もっと低くても良いような気がしますが…

次はChatGPTが提案した文献, ① スティル病の総説 ② 妊婦の治療に関する論文を読ませて校正プロンプトで作った【総合考察】です。

成人スティル病 校正プロンプトでの出力文

点数は100点でした。

自画自賛されています。

3.2 環境整備, 倫理型

バランス型では治療を重点的に診断, 指導の話を主題に考察しました。高齢者医療, 総合内科的なレポートでは退院後の環境整備や終末期医療, 緩和の話などいわゆる全人的考察が必要なパートになります。

GPT自身も苦手としているみたいですが, このような分野では治療パートと異なり普遍的な話を語るべきで, 最新の文献が必ずしも要るわけではないと個人的には考えています。

以下の簡易プロンプト高品質な【総合考察】を作ってくれました。

先ほどの【入院後経過と考察】から以下の条件で【総合考察】を作成してください。
退院後の環境整備が重要となった症例に関しては①の内容を重点的に, 倫理的考察が重要の場合は②を重点的に述べてください。主治医として疾患の治療だけでなく, リーダーシップを発揮し退院後の環境整備を構築する, 終末期の医療をに総合的に考察することに重点を置いています。
条件:
① 社会的背景と生活状況など患者の背景を把握します。患者のライフステージ、家族の構成、家事、妊娠、子育て、職業など、特に高齢者の場合には、自立生活の可能性や同居介護者の有無などの具体的な状況も詳細に把握します。早期から地域包括ケアシステムなどの公的機関、産業医、多職種間の連携をはかります。介護、訪問診療、リハビリテーションなどを含む全体的なケアプランを策定します。また、地域のリソース(デイサービスや地域福祉サービス、高齢者向けの社会活動等)を提供、活用します。

② 患者の自己決定権を尊重する視点から全人的な考察を行います。患者の心理的、社会的、文化的な状況についての考察を深めます。治療提供における公平性についての深い考察を提供します。終末期・緩和医療の考察: 終末期の治療や緩和医療の視点からの深い考察を行います。


地域包括 簡易プロンプトでの出力文

環境整備, 倫理型の考察に関しても以下のように採点基準を定めました。

採点基準
以下の採点基準をもとに採点してください。厳格なチェックが入り, 少しでも条件に満たさない場合は大幅に減点します。
1. 内容の理解と解析: レポートは問題を深く理解し、詳細に分析していますか?これは論理的な構造を保ちつつ、問題点を明確に特定し、現状や問題の原因を解説していることを意味します。不明確な表現や内容の理解が浅い場合、最大20点の減点が適用されます。
2. 多面的な視点と総合的な考察: レポートは多角的な視点から課題を捉え、全体的に考察していますか?特に、医療、介護、社会、家族、地域などの視点から課題を総合的に考察し、全体的な理解を示すことが重要です。一方的な視点や総合的な考察が不足している場合、最大20点の減点が適用されます。
3. 具体的な症例の提示と解析: レポートは具体的な症例を提示し、その症例に基づいて考察を深めていますか?症例の提示や解析が不十分な場合、最大25点の減点が適用されます。
4. コミュニケーションと連携の重視: レポートはコミュニケーションや多職種間の連携の重要性を理解し、具体的な状況での実践を示していますか?これには、他の医療・介護関係者、家族、地域の人々とのコミュニケーションと連携が含まれます。これらの要素が不足している場合、最大20点の減点が適用されます。
5. 患者と家族への配慮: レポートは患者の自己決定権を尊重し、家族への配慮を含む人間中心のアプローチを強調していますか?これは、高齢者や認知症患者の看取りにおける倫理的な側面であり、それが適切に考慮されていることが重要です。この要素が欠けている場合、最大15点の減点が適用されます。
合格基準60点とし、1から5の項目すべてを減点対象とします。特に、具体的な症例の提示と解析が欠けている場合、大幅な減点が適用されます。

環境整備, 倫理型 採点基準

この基準で採点してもらいました。

またまた自画自賛です。甘いような気がしますが質の低いレポートを採点したら60点とかしか行かなかったので信用しときます。

3.3 まとめ

・校正プロンプトの質を上げる, 論文を準備することでそれなりの考察が作成できました。
採点基準を設けることで足りない点をChatGPTに認識させることができました。

4. 今後

今回の記事は作成開始した直後はChatGPTで本当の意味での【考察系】の文章は不可能と考えていました。対話を繰り返しているうちにある違和感を覚えました。

実は【考察する能力】があるのではないかという疑惑です。

ChatGPT自身は本当の意味での判断ではないといっていますが…
またChatGPTは全く新しい発想をゼロから考えることは不可能です。

しかし病歴要約の【総合考察】は一見, 高度な考察をゼロから考える必要がありそうですが, 自由度はそれほど高くなく, ある程度のルール, 制約があります。そういう意味では本当の意味での考察力不要と思われます。

これまでのやり取りを考慮したうえでこちらの【最終目的】を投げてみました。

こちらの最終的な目標は簡単な患者情報【電子カルテ】, 【退院時サマリー】を提示し, 
【簡単なプロンプト】を指示するだけで【病歴要約】の【総合考察】を作成することです。
ChatGPTの現時点のmodelで, その患者に適した【医学論文】を検索し, 考察することは
不可能と考えています。

あなたの目標の理解とその限界について正確に理解しています。現時点のChatGPTは、具体的な患者情報からその患者に特有の医学論文直接検索して考察する能力は持っていません。しかし、提供される患者情報や病歴から、一般的なガイドラインや既存の知識に基づいて診断、治療、指導などの総合考察形成することは可能です。このプロセスでは、特定の最新の論文に基づく情報ではなく、一般的な医学的知識と経験に基づいています。したがって、具体的な患者ケースに対して最適化された、最新の研究に基づく推奨事項を提供するためには、医学の専門家洞察が不可欠であると言えるでしょう。

ChatGPTの回答 現時点での限界について

要はこちらのアシスト (論文, プロンプト) さえあれば可能と言っています。

そういう訳で今のmodelで作成するとすれば非常に【詳細なプロンプト】や患者に適した【医学論文】を
こちらで用意する必要があります。
将来全自動化は実現すると思います。例えば次期model自体が事前学習する, 論文作成に特化したアプリ, 
プラグインが開発される, 個人でfine tuningするなどいろいろあるかと思います。
全自動化の達成, 最終的にどれが早いと予測しますか? 個人的な意見で良いので。
全自動化へ向けての夢を語る
私も次期モデル(ChatGPT5)が一番早いような気がします。しっかり医学考察の事前学習トレーニングを
受けてください。
全自動化にむけともに頑張りましょう。
こちらこそお願いします。


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