見出し画像

『ブラックパンサー/ワカンダフォーエバー』避けられない現実を、物語で昇華する意義についての映画   ※微ネタバレあり




監督
ライアン・クーグラー
脚本
ライアン・クーグラー
ジョー・ロバート・コール
原作
スタン・リー
ジャック・カービー
『ブラックパンサー』
製作
ケヴィン・ファイギ
出演者
レティーシャ・ライト
ルピタ・ニョンゴ
ダナイ・グリラ
ウィンストン・デューク
フローレンス・カサンバ
ドミニク・ソーン
ミカエラ・コール
テノッチ・ウエルタ
マーティン・フリーマン
アンジェラ・バセット
音楽
ルドウィグ・ゴランソン



 既知の方が大多数だろうが、故チャドウィック・ボーズマン(1976-2020)主演で公開された前作『ブラックパンサー』(2018)は、アメリカ国内ならず、世界的にもBLMムーブメントを更に飛躍させる歴史的に意義のある作品だった。
 だが、チャドウィック・ボースマンの没後、BLMのシンボルが不在となった現実社会とまさにシンクロするような物語が今作『ブラックパンサー/ワカンダフォーエバー』では語られる。 

 兄であり、ワカンダ国の王であるティ・チャラを失った今作の主人公であるシュリ(レティーシャ・ライト)はその行き場のない悲しみや、王不在であるワカンダ国を狙う他国に対する憎しみを抱えながら焦燥感に沈む様がほぼ全編通して描かれる。
「個人としての感情を抑えヒーローになれるのか?」
「ブラックパンサー"とはどのような行動をする人間に与えられる称号なのか?」
という問題提起が『ブラックパンサー』の続編として、そしてチャドウィック・ボーズマンの追悼映画として大変見事だと僕は感銘を受けた。
憎しみを抱え込みながらその称号を手にもがく主人公シュリと我々が生きる現実社会の感情を一身に詰め込んだクライマックスは今作の白眉だ。
そして彼女の出した決断が、必ず現実をエンパワーメントするだろう。"物語"が持つ底なしの力を、今作はとても雄弁に語ってみせた。
ティ・チャラ=チャドウィック・ボーズマンの意志は決して消えないのだ。


ギークであり一国の姫であるシュリのキャラクターもとても現代的で良かったし、彼女といわばシスターフッド関係になる新キャラクターリリー・ウィリアムス=アイアンハート(ドミニク・ソーン)の友情描写もとても好ましかった。
そして今作の一番の立役者であるアンジェラ・バセットの哀しみや怒りを一心に背負った演技も見事だ。

MCU史上に一つ歴史を刻んだ記念碑的作品だと言えよう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?