「無限の可能性という名の理想」と「今ここに在る結果としての現実」を優しく肯定する『エブリシング・エブリウェア・オール・アットワンス』
監督:ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート
出演:ミシェル・ヨー
ステファニー・スー
キー・ホイ・クァン
〈あらすじ〉
経営するコインランドリーは破産寸前。問題だらけの家族に囲まれ、疲弊するエヴリン。ある日突然、夫が豹変し、「別の宇宙(ユニバース)から来た」と告げる。やがて彼女は宇宙の未来をかけたマルチバースの戦いに身を投じる。
「今ここに在る結果としての現実」の中で「無限の可能性という名の理想」を夢想し、一喜一憂することは人間誰しもが経験することであるだろうが、本作はそんな「今ここに在る結果としての人生」の中でこそ「無限の可能性という名の理想」が一条の光として輝くのだということを「センス・オブ・ワンダー(=脅威の感覚)」溢れるビジュアルで見事に語ってみせた。
本作は、マルチバースを人生における「無限の可能性」の比喩として捉えてみせるわけだが、そんなバカバカしくも多種多様なマルチバース世界を存分に楽しめるという点で、この映画は充分及第点に達しているだろう。
しかしだ、本作の真に素晴らしい点は、そんなマルチバース世界の中でも一際特技のなく、「何者でもない」主人公がさまざまな「無限の可能性という名の理想」を実際に経験し、その先にこそ「今ここに在る結果としての人生」を高らかに肯定するところではないだろうか。
「今ここに在る結果としての人生」にも人々の感情は生きているし、その中の可能性はどの人間にでも無限に開けているとこの映画は謳っている。
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