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フーコー、お前もか・・。

フランス現代哲学のもはや古典ともいえる、ミッシェル・フーコーの著作を色々と読んでいたあの頃。フーコーのビジュアルも結構好きだったし、何より、すんごい天才だなと心を熱くしたもんでした。フーコーの理論ってアクロバティックなんですよ。普通は、AはBです。BはCです。だからAはCです。みたいな三段論法をはじめとして、まあ色々あれど、こちらが予想するような論理展開をする本がほとんどなんですが、フーコーの本は、えっ?そうくる?みたいな論理展開をするので、おもしろくて最後まで目が離せないんです。そのくせ論理に隙がないし、理路整然としているんです。哲学書はわりとポエムっぽかったり、ニーチェみたいに狂ってる本だったりもあるんですけど、フーコーの著作は完全に最初から最後まで正気で、ゴリゴリの理論で構成されています。さすがという他ないし、私の若い頃の思考形成の中核を担っていたといても過言ではありません。

フーコーディアン、という言葉があります。フーコー主義、という意味です。どういうことを指すかと言うと、ざっくりいうと「知識を武器として社会と戦う派」みたいなことです。真実っていうのは時代や社会背景が変われば変化するものだ。それを知っていることが現在信じられている真実を批判する力になるのだ、みたいな話です。社会を変革していく力として知識を使う、哲学界の戦闘派。こういうフーコーディアンの哲学者は今もフランスを中心として活躍しています。何より私も心はフーコーディアンです。

ところがですね。フーコーが1969年に滞在していたチュニジアで現地の8歳から10歳くらいの男の子を買春していたという告発が出ました。77歳のGuy Sorman(ギ・ソロモン)というエッセイストが、テレビなどで話したそうです。

フーコーは同性愛者で1984年にそのころはまだ謎の病気だったエイズで亡くなったのですが、晩年はアメリカ西海岸でかなり遊んだとか、そのせいでエイズになったとかいうのは聞いたことがあります。当時は同性愛者であることを公言できない風潮があったので、フーコーには表には出てない裏の部分があるというのは知っていましたが、今は同性愛者であることは何も倫理的に問題ないことですから、私は特に気にしていませんでした。

しかし相手が子どもだとすると話は別です。私がというより、西洋社会において何よりも唾棄すべきものとされるのは、ペド(小児性愛)です。きちんと判断能力のある大人同士なら、双方の合意があれば不倫だろうが事実上の重婚だろうが何をやっても許される雰囲気のフランス社会ですが、まだ自分の意思で決定できない子どもを性的対象にするのは最も許されざる行為とされています。

なぜ今になっていきなり言ったのか?とか、証拠になるようなものがない告発だな、とか、引っかかる点はありますが、ペドで、しかも対象が植民地だったチュニジアの貧しい子どもだとすると、これはいかんだろうな・・。

尊敬するべき立場にある人がクソだったという経験は今までにも何度もあります。父もそうですし、私が見た色んな政治家もそういう人が多かったですし、前にも書いた塾なし東大ストレート今アメリカ大学教授という経歴の身内もクソでしたし、新卒入社の会社社長もクソでした。芸能界で活躍する若者の代弁者みたいなおじさんの私生活を近くで見たことがあるのですが、その人も若者代表みたいな恰好とコメントをしているのに昭和ミソジニーの塊でガッカリしたことがあります。ああ、でもフーコー、お前もか・・。

ああ、フーコー、お前もか・・・・・・。

フーコーと同時代を生きたルネ・シェレールという哲学者がいます。まだ生きていて、私も講義を聞いたことがあります。高齢なのに資料も何も見ず、哲学の話を一時間でも二時間でもしゃべり倒せる天才っぷりに感嘆したものですが、ルネ・シェレールも小児性愛で若い頃どーのこーのとそういえば聞いたことがあります。大学教授を続けているからただの噂だったのかな?でも私はそこまでルネ・シェレールに傾倒していたわけではなかったので、その話を聞いてもそんなにショックではありませんでした。でもやっぱり、フーコーは・・。なんだかなぁ・・。

一応フーコーのこの告発に対する反論もあります。例えばこれ。フーコーは買春していない、ただ少年たちに誘惑されたりしていただけ。フーコーがチュニジアを去ったのはこの小児性愛のせいではなくて、ヴァンセンヌの大学でのオファーがあったから。その頃もしそんな出来事があったなら、誰かしらの目があるような場所だったから、そもそも他の人が目撃していないことはないだろう。聖なる墓地でそんなことするとは思えない。などなど。

真実は分かりませんけどね。哲学者は既存の「善」や「悪」に対して挑戦する存在でもあるので、聖人君子みたいな人は少ないと思いますが、それにしてもちょっとショックではありますし、これでフーコーの築いた哲学が今後どのように扱われていくのか、気になるところです。



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