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ラヴィッツと私

日頃から私は大阪の女子ハンドボールチーム「大阪ラヴィッツ」をうるさくさわがしく応援しているわけですが。

2022年一つ目のnoteはなぜ私が大阪ラヴィッツに惹かれたのかのお話から。

2020年1月まで、私にとっては日本ハンドボールリーグとは「我が子がやってるスポーツの大人リーグ」という意識でした。ざっくりすぎて申し訳ない。
私は学生時代、音楽系部活に属し日々、楽器を弾いたり、合唱曲を歌ったり、スポーツとは無縁だったのでトップリーグを知らなかったんです。辛うじてセ・リーグとパ・リーグ、Jリーグはわかりました。

そんな私が今大阪ラヴィッツを愛して涙し応援している。
人生とは不思議なものです。

ラヴィッツがなぜ好きになったのか今日は書きます。



2020年1月コロナウイルス感染症が世界に広まりだし、2月末緊急事態宣言が発出され学校は休校になった。
休校はこの後、年度を跨ぎ6月まで及んだ。

このコロナウイルスの拡がりや休校で障害のある人達は特に不安な日々を過ごしたと言われている。
マスクがつけられない子
ニュースに不安になる子
先が見えない休校で生活リズムをなくした子。

知的な遅れはないものの、重度の自閉症スペクトラムを持つ長男もまたその一人だった。
突然終わった小学校生活、未知の中学生活、着ない学ラン、突然休みになったスイミングスクール。泳力検定も大会もなくなった。


それらの先が見えない不安は長男を苦しめ、長男はひたすら怒りっぽい日々だった。

「みんな一緒。先が見えなくて不安だよ、怒るなんて我儘なだけ。」
そう言う人もいるかもしれない。
顔つきが変わってチックが出て…私はそれを
「みんな一緒」とは思えない。絶対に思えない。

そんな日々の中私の疲れも溜まっていった。
長男が発達障害じゃないかと薄々感じたのは生後一週間。具体的にこれと言った事例はないが、違和感を感じた。元幼稚園教諭の勘としか言いようがない。
3歳からあらゆる療育機関、発達検査を受け
診断がついたのは小学校2年生。

長男を育てる中で長男の一挙一動に目を配り、行動や認知に歪みを感じた際は話し合い修正してきた。
また1つずつ、長男の得意なことや好きなことを増やし楽しく生きられるようにと願って育ててきた。

それが突然先が見えなくなった。
長男は保育園児の時に主任の先生に
「小学校入学と中学生時代がこの子は一番大変な時代だと思う。」
と予言された。
歳上の保育のプロにそう予言されたことは私の中でずっと呪縛のように残り…そんな中「大変な時代」と言われた中学生時代がスムーズに始められないことは私を焦らせた。

(ちなみにうちの子が結局一番大変だったのは保育園生活だった。知識がなく差別にまみれた自称プロと闘いまくった3年間だった。)



そんな時だった。
時々おもしろいことを呟く大阪の女子ハンドボールチームのマスコットのうさぎさんラヴィーちゃんが
「ラヴィッツのイラスト」を募集し始めたことを真夜中に見ていたTwitterで知った。

その時私は小さい時から絵を描くのが好きだったことを思い出した。
動物とか漫画とか。楽しかったな。

しかし長男の発達障害を疑いだした頃から一転私はずっと夜な夜な発達障害の勉強や体験談を読んでいた。
実際長男かわいさに好きでやっていたのだけど12年間ずっとそうしてきたので、自分が好きなもの心が躍るものなんて、なかなか思い出せなくなっていた。

さてそのおえかきラヴィッツだが、私はすぐに応募する勇気はなくTwitterをしばらく見守った。
しかし私が想像したほどはイラストが集まらない。ただ、これはラヴィッツのマイナーさというよりハンドボール界の小ささだと後に知る。
私は心配になってきた。
ラヴィーちゃんのプロフィールには「さみしさに弱い」とか書いてあるしラヴィーちゃんきっとさみしいよ…。

そぅっとまだ冷える真夜中のリビングでスケッチブックに色鉛筆でラヴィーちゃんを描いた。
出来上がった絵は誰にも見せずにTwitterにあげた。ドキドキした。
ラヴィーちゃんは丁寧にお返事をくれた。 
嬉しかった。

お絵かきラヴィッツの募集が終わった。
当初、優秀作品にラヴィッツのハンドボールノートをプレゼントという企画だった。

ところがラヴィーちゃんは参加者全員にノートをプレゼントしてくれた。びっくりだ。切手代だってかかるのに。


ハンドボールノートが届きほどなくして休校が終わり長男は学校に通いだした。しかし一安心とはいかなかった。
休校と慣れない中学生活で長男はパニック障害の症状が出るようになっていた。
せっかく入った部活もパニック障害の症状で休んでいるとサボっているとみなされ罵倒される。
長男は中1当時172センチ。立ってるだけで目立つので、中学から一緒になったよく知らない子達からからかわれた。駐輪場で知らないうちに自転車を壊される。

そんな日々に限界を感じ、通院している病院では薬を処方されるようになった。
ずっと申請していなかった障害者医療費の受給者証も申請した。この子はずっと精神科に通って薬を飲む人生になるし、一生働けないかもしれないし、生命保険にも基本的に入れないからだ。
コロナで先が見えない時代、いつ私が死ぬかわからない。私が生きているうちに手続きをしなくてはと思った。
しかしながら知的障害のない自閉症スペクトラム障害というのはパッと見た目でわかるわけではなく親ですら「この子はギリギリの定型発達では?」と思える時もある。
申請をすることで私自身が我が子をすすんで障害者にして苦しめているんじゃないかと思う苦しい作業だった。
苦しい作業の割に我が子はぶっちぎりの自閉症スペクトラム障害なので、誰一人異論を唱えるものはおらず、あっさり申請は通り、それはありがたい反面複雑でもあった。

私自身が苦しいそんな時期にラヴィッツの試合を初めてみた。
2020年シーズン開幕である。
敢えて調べずに私の心に残ったことだけ書こうと思う。
正直、ラヴィーちゃんがノートくれたから一回は応援しなきゃとJHLtvで観戦した。私はこう見えて義理堅いのだ。

選手の名前が呼ばれる。なんとなくどこにでもいそうな普通にかわいいおねえさん達に見えた。イメージとしては現役時代の吉田沙保里さんみたいなものすごい強そうなおねえさんが出てくるかと思ってたのに。

まず試合の初っ端にキーパー泉選手の顔に相手のシュートが直撃。痛い…!
泉選手は「大丈夫大丈夫」と言いながらゴールを守ってたけど、間違いなく顔の周りに星がくるくるしてたと思った。
齋藤選手のゴールを守った時の頼もしい笑顔。グッとあげた片手。
それからその日にデビューした土居選手はすごかった。
相手のディフェンスの隙をついてどんどんシュートを決める。
確かあの試合も惜敗だったと思う。

しかし私は気がついたら、涙が止まらなくなっていた。
「ラヴィッツ、頑張った〜」
と言いながら。


あの日私がラヴィッツに見たものは、「私がなりたい姿」だった。

どれだけ長男のことで傷ついても
大丈夫大丈夫って笑っていられる私でいたかった。

長男にどんなことが起こっても
頼もしく笑ってあげる私でいたかった。

長男がしたいことをできるように行動できる私でいたかった。


そうありたい自分
なれない自分
向かっていけない自分

40過ぎたおばさんが若い選手に憧れるなんておかしい。おかしい通り越して痛い。

ラヴィッツには唯一私より歳上の田中選手がいるのだが実はその時田中選手のレジェンドぷりに私は気付いてなかった。溶け込んでた、田中選手。それはそれでものすごい話だ。

私はどうしてなりたい自分でいられなかったんだろうと涙が溢れて仕方なかった。

どうしたら私はなりたい自分になれるのだろう。

それから私はラヴィッツを応援し続けている。
負けることが多いラヴィッツ。でもだからこそ私がなりたい自分をラヴィッツのコートにみつけては
「頑張れ、頑張れ」
って祈ってる。
それはラヴィッツへのエールでもあり、自分へのエールでもあると思う。
負けることが多いから好きなのでは断じてない。
だってラヴィッツも私も長男もまだまだ可能性しかないもの。
不公平な世の中で自分の今を一生懸命生きる姿が好きなんだ。

同時に
「大丈夫、大丈夫」もよく言う。
それもまたラヴィッツと自分自身への励ましかもしれない。


そして。
ラヴィッツを応援するようになって私には「長男の母」じゃなくて「私」でいられる場所が出来た。少しずつ少しずつ。

私の世界はグンと広がったのだ。

今シーズン、ラヴィッツは一勝しかしていない。
今年度、長男は英語の成績30点以上とったことがない。(並べてごめんなさい)

でも私は今シーズンもラヴィッツが応援できて楽しい。
書ききれないくらいいっぱい素晴らしいプレーや感動を見せてくれたもの。私はいっぱい勇気をもらったもの。

長男は、障害者だけど同時に集団に馴染めない子のカリスマだ。本人曰く「変人のカリスマ」らしい。
長男と友達になると、不登校児もいじめられっ子も、なんか学校が楽しくなっちゃうらしく既に3人学校に復帰した。

私は長男を産むまで傲慢な人間だった。
誰でも努力したら何でも叶うと思っていた。
長男の母にならなければ、次男は割と何でもそつなくする子だから、その考えのまま生きていたかもしれない。

けど世の中はそうじゃない。
不公平ばっかりだ。

そんな世の中で勝つことだけがすばらしいのではないと私は思う。

私にとっては、その瞬間を一生懸命生きることもまた勝つくらいすばらしいのだ。


私のなりたい姿を観に私はラヴィッツを応援する。

いつか花のようなラヴィッツの笑顔を観たいと願いながら。

私も負けないくらい強くなるぞと思いながら。


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