インタビュー:岸和田谷悠子さん (日本国際看護師)

※2022年9月発行「Charming Times No.22」の「Network」より抜粋


インタビュー:岸和田谷悠子さん (日本国際看護師)

CHARMと関わりのある個人/団体・組織について紹介する当コーナー。今回は「日本国際看護師」の認定を受けられた岸和田谷悠子(きしわだや ゆうこ)さんにお話をうかがいました。

国際看護師とはどんなお仕事なのか?外国人が安心して病院に行けるようになっているのか?などを伺いました。

●岸和田谷さんと日本国際看護師の仕事について教えてください。

私は出産を機に助産師となり9年目になります。また国際臨床医学会の認定を受け、日本国際看護師でもあり、勤務している病院では外国人患者対応について啓発活動をしています。

最近、外国人妊婦が増加し、周産期病棟では試行錯誤の日々を過ごしていますが、患者さんが外国出身であっても特別な援助が必要なのではなく、人対人です。文化の違いの周知、患者さんとの関わりでは想いを聴きとることを大切にしています。

中国人、ベトナム人の患者が多く、看護師が外国人に対して苦手意識を持たないよう、共通言語である「やさしい日本語」などで伝えるなどコミュニケーションをとりやすいような院内研修をしています。

また、各国の社会保障制度が違うため、外国人患者さんに日本の保障制度などを理解してもらえるような関わりを大切にしています。

例えば、他の国と異なる制度である出産一時金、社会保険、国民健康保険などのメリットを伝えます。産科医療補償制度では一時的に3万円を支払う必要があり、戸惑う患者もいますが、補償のメリットが大きいため丁寧に説明するようにしています。

もちろん、周産期病棟だけにかかわらず、在日外国人の方は日本人と同じ社会保障が適応となることをまず院内のスタッフに理解をしてもらう、研修の一部に取り入れたりもしています。

●常駐通訳者がいない中での対応について教えてください。

保健センターを通じて通訳を派遣してもらったことがありますが、間に合わないこともありますし、今はコロナ禍のため医療通訳者に対面通訳をして頂くことができません。

また、患者によって友人通訳はタブーなので、今後通訳対応できる体制の整備が必要です。

なお、最近は遠隔通訳(タブレット)や翻訳機器で、ある程度対応が出来るようになっています。

導入し始めた当初、機械を借りに行ったり、使い方などがわからなかったり、緊急の時は使い慣れずあたふたしていました。しかし、機械の利用頻度が増えて、定着しました。機械が足りないときもあるぐらいです。機械の精度も良くなってきましたが、患者さんに伝わりやすいように医療用語を噛み砕き、短い文章で、伝わりやすい文章などに気をつけるように工夫しています。

機械を使うことの課題としては、院内では電波の届かない場所もあってどこでも使えるわけではありません。そのため、さし絵を使ったり、むずかしい同意書はあらかじめ翻訳しておく、表情など相手を読み取る努力など、コミュニケーションスキルを上げるようにしています。

以前、妊娠中期の方が他院から紹介されました。この病院の医療従事者は英語が話せないから前の病院に戻りたいと言われたことがあります。簡単な英会話とやさしい日本語での関わりや、翻訳機を使用することで少し信用してもらえ、受診することに納得してもらうことができました。一度信頼してもらえると、あとは簡単なコミュニケーションでスムーズにいくこともあります。最後には、この病院で出産して良かったと言ってくれました。

コミュニケーションツールを使いやすくしたり、外国人対応と聞いても、フラットな対応が出来るよう、学習会を通して伝えていきたいと考えています。

病院の体制も変わりました。国際診療支援センターで事前に通訳の必要性や文化の違いなどの情報収集をするようになり、入院治療への対応が大変スムーズになりましたが、これからも発展していけるよう携わっていきたいです。

●外国人患者が置かれている状況について

出産や退院後の育児について、日本人同士でも考え方が異なったりしますので、その国の文化を尊重しながら、ていねいに説明するようにしています。

例えば、日本では母乳育児を推奨していますが、国によってはミルクで育てたい、逆に、母乳は出てないけれどミルクを足さずに育てたいなどという考え方があります。

母乳の必要性やミルク補足の必要性を理解してもらうのはむずかしいですが、わかりやすい言葉で説明して知ってもらった上で、ご本人に決めてもらうようにしています。

今後、外国人診療が増えていくでしょう。病院内に外国語が書かれる表示は定着していきますが、異文化や宗教への理解がスタッフよって差があります。また、中には外国人対応拒否の病院もあると聞くこともありますが、外国人患者さんが病院を選べる環境になればいいと思います。

対応は、在日外国人か旅行者によっても異なりますが、在日外国人の方にはこれから心地よく日本で暮らしてほしいので地域との連携が必要です。医療や衣食住が充実した環境、社会保障のバックアップ、経済的コストが高いなどの問題があり、どうすれば地域で心地よく暮らせるのか。旅行者は旅行を楽しんで健康に本来の生活の場所に帰れるのが大切です。

病気や怪我をした場合、どこの国でどう治療したいのか。怪我は治れば帰れますが、心臓などの循環器の病気は入院、帰国後の調整などフォローが必要となります。

しかし、そこまではまだ難しい環境にあるかもしれませんが、今は遠隔治療も進んでいるのでフォローも可能になることを期待しています。

●医療通訳者への期待、気をつけてほしいことについて何かありますか。

まずは忠実に通訳に徹してほしいです。

日本は言わなくてもわかるだろうと、空気で会話する文化ですが、言葉が足りていないと考えたことを通訳者が付け足して伝えるのではなく、説明している医療従事者にどういうことか確認をしてつないでほしいです。

医療従事者が忙しそうで質問しにくい雰囲気を感じる場面もあるかもしれません。しかし、患者さんが不安にならないように、後からでも受付を通して質問してもらっても良いです。

●CHARMのイメージや今後期待していることはありますか?

情熱を持って支援しているという印象が強いです。

CHARMのイベントを通じて、外国人が在留資格によって、医療費の自己負担がとても大きいことを知りました。外国人は経済的に困っている人がいることを医療者や行政にもっと発信してほしいです。また、すでに行っている感染症患者への支援に加え、母子保健にも力を入れてほしいです。

特に外国人患者さんが増えているのは産科です。妊娠中の過ごし方が日本と他国では違うことが沢山あります。妊娠期から育児指導まで、通訳方と一緒に勉強できたら嬉しいです。

また育児方法についても新しい内容になっているものがあります。例えば、沐浴の仕方が大きく変化しています。以前はベビーバスにつかるだけの沐浴をしていましたが、今は泡で洗ってシャワーで汚れを落とし保湿するような方法に変わっています。

このように育児方法もアップデートされていくので、アップデートされていることなどを共有できるような勉強会を一緒にしたいです。

(聞き手:庵原、前田、ポップ)