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自分のことは後回し

デンマークにはヤンテの掟という文章がある。モーセの十戒に似た戒律のようなもので、小説の中に出てきた文章のようである。これは10か条からなっているが、どの文章もほぼ同じことが書いてある。それは

自分が特別な人間だと思ってはいけない

ということだ。これは平等ということを常に意識し周囲の人々と仲良くやっていくための処世訓なのかもしれない。個人主義が利己主義であってはならない、良いコミュニティを作ることが本当の個人主義だということを主張しているのかもしれない。この文章をホイスコーレで教えてもらった時は非常に面白いと感じたものだ。

日本でもそのようなことは色々な形で教えられていると思う。特に思いつくのは「自分のことは後回し」という言い回しである。自分のことを最初にしたい気持ちを抑えて周囲のために行動する、ということで、日本的で良いことだと思ってきた。しかし反面、私はこの言葉に頼ってきたところがある。以前も書いたように、自分の自分らしさというものが全く実感できないと感じていた時期が長かったので、自分らしく何かしようということが無い。そこで周りのこと、他人のことをしていようとなる。自分の幸福について考えることを放棄し、他人のニーズを感じ取って行動するという単純で楽な選択肢だ。確かにこれは経験としては良かった。感謝されることが多いのも居心地が良い。社会的な存在感がアップするような気もしていた。

しかし、よく考えるとここに大きな落とし穴がある。自分(の幸福)を考えるという大変な作業から逃げて楽な方に逃げ込んでしまうからだ。さらにその結果自分は他の人より周りに貢献しているなどという意識を持ったら、先のヤンテの掟に見事に反する。自分はひとかどの者だと錯覚するからある。

自分のことは後回しというのは、自分の幸福について考えてすべき行動を決めて、それを行う前にコミュニティへの貢献を行うということだ。何も考えずにコミュニティのためになりそうなことをしているだけでは自分が幸福に近づけないだけでなく、結果としてコミュニティに悪いフィードバックをしてしまう。

私はそのことが最近ようやくわかってきた感じがするので、何をするにもまず、自分が幸福に近づけるのかを具体的に考え、そのために必要な行動を考えるようにトレーニングをしている。その結果としてコミュニティへの貢献という形の行動を取るのであれば、問題ない。滅私奉公という言葉があるが、これは子供のうちに、まだ自分の幸福についての考え方を育てる段階の経験であって、大人にはできない。まず自分のことを考えそして貢献することがコミュニティのためになるのである。

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