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ちぐはぐ歯ブラシ事件

義母が週末泊まりに来たときの事だった。泊まっていくのはしばらくぶりだった。歯ブラシは自分で持参したのだろうと思い、義母用の歯ブラシを渡しておかなかった。
ところが義母は、洗面所の歯ブラシ立ての中から、韓国製の大きな歯ブラシを選び出して、それで歯を磨いてしまった。
ちなみに韓国の歯ブラシはなぜかみな大きい。日本に帰国する度、ブラシ部分が小さい歯ブラシを大量に買い込んでいた。
それに加えて韓国の「極細毛」歯ブラシを併用していたのだが、義母は一番前にあった私のそのブラシを使ってしまったのである。
「大きい歯ブラシだから、私のだと思った!(큰 칫솔이니까, 내거인줄 알았어!)」
食べかすが極細毛に入り込んで、洗っても取れない。ケチな私だが、諦めて捨てた。
翌週、義母が泊まった時には、用心して家族の歯ブラシはすべて洗面台の上の戸棚にしまった。そして歯ブラシ立てに義母用のだけを出しておいた。
ところが、なんという事か。義母は出してある歯ブラシには目もくれず、わざわざ戸棚を開けて探し、また私のを選び出して使ってしまったのである。
「お義母様(어머님・オモニム)のはここに出してあるんですよ」
なぜ、こう、狙ったようにちぐはぐな事をしてくれるのか。がっくりしながら申し立てると、
「しばらく来てなかったから、奥にしまわれたと思ったんだ!」
・・・それ、先週言うべきことじゃないのか?
また次の時には、なぜか掃除に使っている古歯ブラシ(使いやすいよう柄を曲げてある)を見つけ出し、使ってしまった。
私の理解力が及ばないという意味で、私は義母を野生動物を見るような目で見ていた。

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