見出し画像

うちのギボのこと② シオモニ

韓国人と結婚して韓国人の姑ができた。韓国では姑をシオモニと呼ぶ。
子供たちがまだ小さい頃だった。シオモニは一人で、あるいは舅(シアボジ)と一緒に週末ごとにやってきて、泊まっていった。
3人の子供の世話と家事で座る暇も無くぐるぐると動き回っているところに、シオモニが歯ブラシを握ってやって来た。
「歯磨き粉が苦い! これどういうものなんだ?」
普段使っている歯磨き粉しかないはずだが…? 洗面所に行ってみたが、やはりそうだった。視線を移動させて行くと、端のほうに洗顔料のチューブが立ててある。
「ああ、にが! ああ、にが!」
連呼しながらやってきたシオモニに、
「どれを使いました? こっちのこれは、洗顔料ですよ」
どのチューブを使ったか、いちいち覚えてはいないのか、聞いても要領を得ない。
「これは顔を洗う物なので、歯磨き粉はこっちです」
歯磨き粉のチューブは韓国製品で、ちゃんと韓国語で製品名が書かれている。そちらではなく、日本語が書かれた、シオモニにとっては得体のしれないパッケージの洗顔料を、わざわざ選んで歯ブラシに付けるのである。なんという冒険者か。腹筋が微妙に震えた。
シオモニは、
「ああ、にが! ああ、にが! なんでこれこんなに苦いんだ」
と、私の説明が分かったのか分からないのか、ひたすら繰り返していた。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?