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翻訳:「化学の哲学」 Stanford Encyclopedia of Philosophy

Author Info: Weisberg, Michael, Paul Needham, and Robin Hendry
Version Info: First published Mon Mar 14, 2011; substantive revision Wed Jan 16, 2019


化学の哲学(Philosophy of Chemistry)

Introduction

化学は物質の構造と変化に関する学問である。アリストテレスが紀元前4世紀に初めて系統的な論文を書いた時、彼の物質の本性についての概念的な理解は、相対的に簡単な範囲の観察できる現象についてに適合したものだった。21世紀において、化学は最も大きい科学の分野となり、直接的な経験的調査から本質的な理論的仕事に至るまで、毎年50万もの出版物を生み出している。しかしながら、化学において立ち現れる概念的問題群への特異な興味(これ以降は「化学の哲学」と呼ぶ)は相対的に近年「科学の哲学」に付け足されたものである。
化学の哲学は2つの大きな部分からなる。最初のものでは、化学の内部で立ち現れる概念的問題群は入念に記述され分析される。そのような化学内部の問題群として、物質の本性、原子論、化学結合そして化学合成などのトピックを含む。2つ目のものは、実在論、還元主義、説明、確証、モデル化などの科学哲学における伝統的なトピックが化学の文脈で取り上げられる。


1. 物質、元素、化学的組み合わせ

  我々の化学的物質の現代的理解は、元素的なものと原子説的なものである:すべての物質は水素や酸素のような元素的原子から構成される。これらの原子は合成物の微小構造の構成要素であり、それゆえ化学分析の基礎的な単位となる。
しかしながら、化学的原始の実在性は、20世紀の初期まで論争の対象となっていたとともに、「基礎的な構成要素」という言葉は常に気をつけた解釈を要求してきた。今日でさえ、すべての物質は元素からなるという主張は、元素の存在論的地位と元素はどのように個別化されるか、についてなんら指針となるものではない。
 このセクションでは、元素の問題から始める。歴史的に、化学者達は「あるものが元素であるとはどのようなことか?」という問いに答えを与えてきた。

  • a. 元素とは、孤立した状態で存在できる物質であり、より細かかく分析できないもの(分析の最後テーゼ:the end of analysys thesis)

  • b. 元素とは、合成物の構成要素である物質(実際の構成要素テーゼ:actual components thesis)

 これらの2つのテーゼは元素を異なる方法で描いている。初めのものでは、元素は明示的に手続きによって同定される。元素は単にそれよりさらに分離することのできない混合物における構成要素である。2つ目の考えはより理論的であり、元素を合成物の構成要素として仮定する。前近代のアリストテレス主義者の体系では、the end of analysysテーゼ(a)が好まれた選択肢だった。アリストテレスは元素は、これらの物質には潜在的に存在するだけであるような、化学物質の構成要素であると信じていた。現代の元素の概念化は、あとで見るように、元素は分析の最後であるという側面を残しながら、元素は実際の構成要素であると断言する。このセクションは1つの概念化からもう一つの概念化への化学の前進についての概念的背景説明する。それ合間に、我々は化学結合の中での元素の存続、元素の個別化と分類、そして純粋な物質を決定する基準について議論する。

1.1 アリストテレスの化学

1.2 ラボアジエの元素

1.3 メンデレーエフの周期表

1.4 周期表を複雑にする要因

1.5 混合物と合成物についての現代の問題

2. 原子論

2.1 アリストテレスとボイルにおける原子論

2.2 現代化学における原子論的実在論

3. 化学革命

3.1 熱素

3.2 フロギストン

4. 化学における構造

4.1 構造式

4.2 化学結合

4.3 結合することの構造的概念化とその挑戦

4.4 Microessetialism: Is Water H2O?

5. メカニズムと化学合成

5.1 化学におけるメカニズム的説明

5.2 反応メカニズムの承認

5.3 化学における発見の論理

6 化学的還元

6.1 分子種の量子力学への還元

6.1 物質の分子種への還元

7. モデル化と化学的説明

7.1 物理学的モデル化

7.2 数学的モデル化

7.3 モデル化と説明



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