桜の樹の下には
「桜の樹の下には屍体が埋まっている!」のフレーズで始まる梶井基次郎の短篇。小説というよりはエッセイとも思える内容。桜のシーズンになると、どうしてもこの書き出しを思い出してしまう。そのあと文章は、
「これは信じていいことなんだよ。なぜって、桜の花があんなにも見事に咲くなんて信じられないじゃないか。」と続く。
実際にこの「桜の樹の下には」という短編を読むと、この後屍体が列挙してあったりしてあまり気色のいい文面ではない。それでも桜の美しさを見るとやはり彼の言っていることに納得してしまう。
冬が終わり、新たな旅立ちや新生活の開始する頃にそれを寿ぐ様に咲く花。盛りは短く、あっていう間に散ってしまう花。どうしてもそこに古いものの死と新たないのちの芽吹きを重ねてしまうのは私だけではないと思う。
今年も桜が咲いた。来年も桜は咲くだろう。きっと数多くの屍を踏み越えて。
さて今宵は、どこの夜桜に酔うとするか?
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