怒髪天を衝く-01

外来.txt

あれはたしか
南の港にある酒場でのことだったかな。

異国から来た下戸のアイツが
飲めもしない酒を一丁前に呷りながら
ほんのり赤い顔して僕にこう言うわけ。

「お前のやってるその仕事、えっと、デザインだっけ?そのデザインとやらで大事なのは何か知ってるか?」

僕は答えた。

「え?そりゃあ、デザイン力でしょ。」

アイツは言う。

「本当にそう思ってるのか?」

たしかに短絡的すぎたかもしれない。
と思い、僕は改めてこう答えた。

「いや、そのデザインに至るコンセプト!うん!そう!コンセプト!!」

先ほどの1.5倍ほどの顔の赤さで
アイツは言う。

「オマエ、本当に、そう思ってるのか?」

え?!わりとド正解導き出せたはず。
と思っていたので、テンパってきた。

「イラレのスキル。」

「本当か?」

「いやいや、フォトショのスキル。」

「そうなのか?」


「…。」


「…。」


「……。」


「……。」


「………。」


「………。」


「あ、そうだ!インデザ…」

苦し紛れの答えを出そうとしたその時
アイツは喰い気味で
怒髪天を衝く勢いで
真っ赤な顔をして言い放った。

「違うだろぉぉぉぉぉ!!!」

「…へっ?!」

いきなりの怒声に
驚きを隠せずにいるのも束の間
こめかみ辺りにパンチを喰らい
意識が遠のく中で
微かに聴こえてきたのは

「違うだろぉぉぉぉぉ!」
「ヒアリングだろぉぉぉぉぉ!!」
「“ヒアリ”ングだろぉぉぉぉぉ!!!」

というアイツ
もとい
ヒアリの言葉。






デザインに限らず
“相手のあるお仕事”
っていうのは
ヒアリングが
とっても大事だよ。

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