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サラリーマンが不動産投資に失敗するパターンとは?原因と対処法を解説

※2024年4月22日再編集

長期にわたる日本銀行のマイナス金利政策や、老後資金不安の拡大を受け、サラリーマンの間で不動産投資が人気です。

他の投資方法に比べ手間が掛からないことや、節税の恩恵を受けられることが、不動産投資の主な魅力といえます。しかし一方で、リスクを見誤って失敗したり、経営や税金の知識を持たないために「カモ」にされたりすると聞き、不安に感じる方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、サラリーマンが不動産投資で陥りがちな失敗パターンを解説し、失敗しないための対処法についても紹介します。皆さまの健全な資産形成のお役に立てれば幸いです。

サラリーマンに不動産投資が人気の理由

不動産投資は、以下の理由でサラリーマンに人気があります。

  • 他の投資法よりも手間と時間がかからない

  • 家賃で長期安定収入が見込める

  • 副業禁止に抵触しない可能性が高い

  • サラリーマンは融資を受けやすい

  • 節税になる

本業で忙しいサラリーマンにとって不動産投資は、相場やレートとにらめっこせずに済むため、手間と時間のかからない手軽な投資方法といえます。会社の副業禁止規定に抵触しないケースが多いことも人気の理由です。

投資物件をローンで購入する必要がありますが、サラリーマンであればローン審査に通りやすく、家賃収入でローン返済分をペイすることも可能です。

さらにサラリーマンにとっては、不動産事業の赤字と給与所得を「損益通算」でき、課税所得を抑えられる節税効果も大きな魅力です。

こうした特性により、不動産投資はサラリーマンの資産運用として人気がありますが、投資である以上リスクもある点に注意が必要です。リスクを見逃したために失敗しないよう、不動産売買の基礎知識や失敗パターンをあらかじめ知っておくことが重要です。

不動産投資で失敗を回避するための用語解説

サラリーマンの不動産投資でありがちな失敗パターンを検証する前に、押さえておきたい不動産投資の基本的な用語を解説します。

「利回り」

不動産会社から提示される物件の利回りとは、表面利回り(グロス利回り)を指す場合がほとんどです。

表面利回りは投資額、つまり物件価格に対する年間賃料収入の割合のことで、提示される際には満室の前提で計算されています。

管理費や修繕積立費などの諸経費を差し引き、空室による収入減を加味した実質利回り(ネット利回り、NOI利回り)は、当然ながら表面利回りよりも低くなります。

「諸経費」

物件の運用をする上で発生するさまざまな経費があります。

固定費としては、管理費、修繕積立費、損害保険料、固定資産税などが生じます。このほかに、修繕費や入居者募集費用、入居者のトラブル対応費用なども不定期で発生すると考えられます。

「サブリース」

サブリースとは、業者がオーナーから物件を借り上げ、家賃保証と管理業務代行を行うことです。

業者(不動産会社)は入居者募集や賃料回収を行い、入居者の有無にかかわらずオーナーへ保証賃料を支払います。サラリーマン大家にとっては空室リスクを回避でき、面倒な管理業務を省けるため、一石二鳥とも思えます。

しかし契約で「家賃〇年保証」と謳っていても、建物の老朽化や需要の変化により家賃の見直し(値下げ)が行われるケースがほとんどです。

また契約上、オーナーは借主である業者の更新を拒否できず、オーナーからの解約も原則できません。そのためサブリースを解約できず物件の売却ができないケースも起こり得ます。

なお家賃回収や管理の方法については、サブリース以外にも管理委託や滞納保証などのサービスがあるため、併せて検討するとよいでしょう。

サラリーマンの不動産投資失敗事例

ここでは、サラリーマンが不動産投資で失敗した事例を紹介します。投資・運用でのリスクを回避するために、これらの例を反面教師にしてください。

失敗事例① 「利回りがいい」と購入したが住人の質に苦慮

物件価格が安く利回りが良いため、投資用に中古アパートを購入。

しかし家賃が安い分、入居者の質も悪く、住民トラブルが多発し多額の対処費用が発生。

中にはルール違反でペットと同居する居住者もおり、退去時にリフォーム費用50万円も必要になった。

失敗事例② 予定外の修繕費用とずさんな管理が判明

4%超の利回りと言われ、中古マンションを購入。

ところが修繕必要箇所が多数あり、修繕積立金が不足しているため別途100万円が必要と言われる。

数年経って物件を訪れると、エントランスに自転車が雑然と、中庭に家電などのゴミが放置、階段やエレベータは落書きだらけ…ここに来て管理会社がずさんだったと判明。

入居者の確保と将来の売却ができるのか不安になった。

事例③ 空室は出なかったが滞納された家賃を回収できない

住環境・買い物の便・交通の便すべて問題のない賃貸物件を購入。

しかし入居者による家賃滞納が発生。次第に支払いが溜まり、回収できないまま気が付くと夜逃げされていた。

失敗事例④ 損切りで売却を考えたが「売れない物件」になっていた

10%超の利回りと言われ、郊外に600万円の投資マンションをローン500万円で購入。

 当初は満室だったが、空室が出たため募集したものの入居せず、家賃を下げたが入居率は改善せず。 

ローン支払いが家賃収入を上回り続けたため、不動産会社に売却の相談をしたが「銀行が融資したがらない物件なので売却は難しそう」と言われてしまった。

サラリーマンが陥りがちな不動産投資の失敗パターン

前のような不動産投資の失敗事例には、ある程度共通する特徴とパターンがあります。

サラリーマンが陥りがちな不動産投資の失敗パターンを一つずつ見ていきましょう。

頭金なしの融資=債務超過になりやすい

サラリーマンは安定収入があることから、投資用不動産を購入する際に頭金なし、あるいは少額の頭金でローンを組む方も少なくないようです。しかしそれにより返済比率※が高くなり、結果的に運用や売却が困難になっているケースが増えています。

※返済比率(返済負担率):家賃収入に対する返済額の割合のことで、投資の安全度の指標。

「少ない手持ち資金でレバレッジを掛けられる」のが不動産投資の魅力とはいえ、返済比率が高いとさまざまなリスクが生じます。

  • 想定外の空室や家賃の滞納でキャッシュフローが悪化しやすくなる

  • 返済総額が高額になるため、売却後に残債が出やすい

ギリギリのローンで手元資金を作れ作れなければ、将来残債を完済できず売却さえ難しくなってしまいます。最終的に物件を売却でき利益を確定できなければ、不動産投資は失敗です。

言われるがままに物件を購入=デメリットを理解していない

投資用不動産の購入時に、営業マンを端から信用し説明を鵜呑みにして、詳細を確認せずに契約するケースが多く見られます。

その場合、表面利回りなどの良い面だけを聞き、リスクやデメリットの説明を受けずに、不利な契約を結んでいるも否定できません。

たとえば、購入してすぐに多額の修繕費用が生じた失敗事例②や、家賃を下げざるを得ず「こんなはずではなかった」という失敗事例③のパターンがこれに当たります。また中には「相場より高い価格で購入させられていた」と後から判明した例もあります。

不動産の知識がないまま説明を受けると、質問して疑問点を解消できないため、デメリットを知らずに契約してしまうこともあるでしょう。

物件の需要・特性を確かめず購入=入居者が集まらない可能性も

物件の需要やコスパを左右する物件の特性を、確認しないまま購入ことも、サラリーマンにありがちな失敗パターンです。

物件の入居率や売却の可否は、交通の便・買い物の便・治安などの周辺環境や、物件自体の入居者層などにより決まります。しかし忙しいサラリーマンは、つい物件の特性を自分の目で確かめる手間を省いてしまうケースがあるようです。

失敗事例①と③は、物件特性のうちの入居者層を把握していなかった失敗といえます。

ランニングコストを想定していない=赤字が雪だるま式に膨らむことも

不動産投資の固定費や不定期の出費を想定しておらず、次第に赤字が増えてしまうパターンです。

不動産投資にかかる費用には、固定費と不定期出費とがあります。「表面利回り」の説明を受けた時点で、諸経費は計算に入っていません。

特に支払い能力ギリギリでローンを組んでいる場合には、諸経費や想定外の出費に対応できなくなる可能性があり、経営が立ち行かなくなるリスクがあります。

節税目的だけで始める=収支そのものを無視している

税金を給与天引きされるサラリーマンが節税を図りたくて不動産投資を始めたものの、肝心の収益がマイナスという事例も多く見られます。

不動産投資での節税とは、減価償却費による赤字分を給与所得と損益通算することにより、所得税・住民税の支払いを抑えることです。初年度は不動産取得税を経費扱いできる恩恵もあります。

しかし、価格的に手が届きやすいワンルーム一戸などでは、経費で落とせる金額が少ないため、節税効果は低いといえます。特に2年目以降は減価償却費とローン利息程度しか経費計上できず、高い節税効果は期待できないでしょう。

所得税率が高い高所得者層の場合は、不動産投資による節税効果も高くなりますが、税率が低ければ節税の恩恵を感じにくいかもしれません。

サラリーマンが不動産投資で失敗しないための対処法5つ


前の失敗例や失敗パターンをもとに、サラリーマンが不動産投資で危険を回避するための対策を紹介します。

①想定されるコストとリスクを知る

投資を始める前に、物件のランニングコストと考えられるリスクを想定し、健全なキャッシュフローを維持できるシミレーションをしましょう。

先に説明した固定費・不定期出費といったランニングコストに加え、物件の価値が下がるリスクも計算に入れる必要があります。土地の価格はさておき、建物の価格は年々確実に下がるからです。

特に家賃収入を当てにしてローンを条件ギリギリで組んでしまうと、想定外の出費と価格下落リスクの両方に対応できる、充分な資金を準備するのは困難です。さらにキャッシュフローの悪化が続くと、売却したくてもできない状態に陥りかねません。

不動産ならではのリスクを整理すると、以下のようになります。

  • 建物の価値が下がる

  • 環境変化で需要が減る⇒入居率が下がる⇒家賃が下がる

  • 経緯費計上できる減価償却の期間が終わる

  • 経費計上できるローン利息の比率が下がる

  • ローンを完済できないために売却ができない

不動産投資を始める前に、コストとリスクの把握は慎重に行いましょう。

②物件の特性・需要を把握する

物件の入居率や将来の売却価格を決める最大の要素は、物件の需要に他なりません。業者任せにせず、購入する物件の特性は自分自身で調べ、把握しておきましょう。

購入前に調べるべき項目は次のとおりです。

  • 物件の築年数

  • 立地・環境

  • ハザードマップ

  • エリアの人口推移、

  • エリアの開発状況、

  • ライバル物件の有無と家賃相場

もし「お値打ち物件」と紹介されたら、安くなっている理由を追及しましょう。物件に需要がなければ入居者が入らず、将来売却もできなくなるからです。購入前から「売れない物件の特徴」を知るのは気が引けるかもしれませんが、今後運用するうえで避けて通れない重要な要素のため、必ず確認してください。

③購入前に出口戦略を考えておく

不動産投資でいう「出口」とは売却のことです。不動産の購入前に、収支がプラスで売却するまでをシミュレーションすることが大切です。

なぜ不動産投資で出口戦略が重要になるかというと、不動産には「売りたい時に売れるとは限らない」特性があるからです。売れない状況には次のケースがあります。

  • 売却したくてもサブリースを解約できない

  • キャッシュフローの悪化を看過した結果、ローンを完済できないために売却できない

特に問題なのは後者で、抵当権を解除しないと物件の売却ができませんが、そのためにはローンを完済する必要があります。

不動産の価値下落により売却益でローンを完済できない(オーバーローン)場合には、自己資金での補填が必要になります。しかし元々支払い能力ギリギリでローンを組んでいると、完済できるだけの自己資金がないケースが多いでしょう。特に新築マンションの場合は価格の下落幅が大きいため、このパターンに陥りやすくなります。

契約前に内容を慎重に検討し「将来売れる物件か」さらに「どうやって・いくらで売れるか」の中長期的判断を行わないと、逆ザヤの長期固定に陥る可能性があります。不動産は、購入してからでは変更が効かない要素が多いので「長期の安定収入」という楽観的な目論みだけで購入せず、負けないための出口戦略を立てましょう。

出口戦略は、物件を購入する前に立てましょう。物件の条件は、購入してからでは変更が効かない要素が多いからです。投資は勝つことよりも負けないことが重要です。

④情報源を広く持ち知識を付ける

不動産投資に取り組む前には、不動産や契約について充分に知識を付けることが肝心です。

投資セミナーに参加すると、投資家から直接、セオリーや失敗談を聴けます。また、ほかの先輩投資家と知り合えるよい機会です。ただし、セミナーでは物件購入の勧誘を受ける可能性もあるでしょう。

不動産投資の書籍を読むことも勉強になりますが、業者に有利に書かれた書籍もあります。もし投資家目線での基礎知識を仕入れたければ、個人投資家のSNSやYouTube、ブログが参考になるかもしれません。

投資家によるYouTubeやブログには、不動産取引の本質を初心者にもわかりやすく解説するコンテンツが増えています。セミナーで質問したい内容などを、先にYouTubeやブログで情報収集しておくとよいでしょう。

著名な不動産投資家ブロガーでさえ「始める前に1年は勉強しよう」と言っています。初心者であれば、可能な限りの知識武装をするか、信頼できる相談先を見つけてから投資に着手しましょう。

⑤少しでも疑問があれば即決しない

投資用不動産を購入する前に少しでも疑問を感じる点があったら、どんなに営業マンが熱心でも即決しない意志の強さが必要です。

不動産の購入は人生を良くも悪くも大きく左右する選択であり、言いなりで契約すべきものではありません。担当営業マンは失敗しても助けてくれませんし、ひとたび契約が成立したら、法律的にも救済支援を受けることは不可能です。

不動産の条件は、契約した時点である程度確定しており「知らなかった」と言っても後の祭り。収支が悪化したときには売却・撤退すらできなくなっている可能性があります。ひとつでも不明な点があるなら即決せず、情報収集して疑問を解決してから契約に臨んでください。

サラリーマンが不動産投資で失敗しないために知識と戦略を身につけよう

サラリーマンの不動産投資には、失敗しやすいパターンがあり、回避するための対処法があります。
サラリーマンの不動産投資が失敗しがちなポイントは、主にリスクについての知識不足にあります。本業が忙しくても、事前に不動産の知識習得と物件の調査を怠らないようにしましょう。

投資である以上、負けずに収益を出すためにはそれなりの手間暇と戦略が必要です。長く安定的に収入を得られる手軽な副業などと安易に考えず、立地や需要を調査のうえ、購入前から売却を意識した戦略を立てましょう。

サラリーマンが不動産投資で成功するためには、正しく学び、ビジネスの視点で取り組むことが肝心です。そのためには専門家のアドバイスを得ることもぜひご検討ください。

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