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リヴァプールにベリンガムを獲る金はあるのか?

こんにちは、ちゃりです。

前回なぜリヴァプールは売られるのか?というnoteを書きましたが、ひと段落つきましたね。買い手が見つからず、現オーナーのFSGは完全売却をしないと表明。FSG続投には賛否ありそうですが、個人的にはほっとしてます。FSGは周りの声を受け止めすぐ行動をする印象があるので、最近叩かれまくってるFSGニキは、ファンの心をグッと掴むような補強をしてくれるんやろなァア(切実)

エゴサしたらこんなアカウントばっかで笑った。もはやお前らFSG好きだろ。

さて、今回は「リヴァプールにベリンガムを獲る金があるのか?」を考えていきたいと思います。実際獲るべきかはさておき、獲るとなった場合のお金をリヴァプールが工面するのは現実的か?を財務データを基に紐解こうと思います。もし間違いや過剰なバイアスが入っていたらぜひ指摘頂けると嬉しいです!

近年の移籍市場の立ち回り:Not Splashing Money

まずは最近のリヴァプールの立ち回りをおさらいして、傾向を掴んでいきたい。リヴァプールの移籍市場のスタンスはクロップが絶妙に言い表している。 “The way this club is lead by not splashing the money, our transfers always have to be on point.” 要はこのクラブは金をばらまくことはしないのでピンポイントで正確な補強をしなければならない、ということである。
リヴァプールは補強ポジションもそうだが、「選手売買のタイミング」もピンポイントであったことで知られている。£2Mで買ったスターリングを£49M でシティに売ったり、£8.5Mだったコウチーニョを£105Mで売ったりと驚異的なリターンを実現してきた。(詳しくはこちら

クラスにこの走り方のやつ絶対いたよね。

そんなFSG体制下のリヴァプールの軌跡が以下である。ソースはTransfermarkt

マティップはフリーだったの神だよね
グラフ版。18/19だけ投資がかさんでいるが、本当はスタリッジをこの年に売って補填するプランだった(けど売れなかった)な気がする。スタリッジは翌シーズンにフリーで移籍。

こうみると近年金を使った選手は全員割と活躍していて、クロップの発言との言動一致を感じる。
個人的にグラフをみて気になったのは、CL優勝後に選手獲得費・売却費が共に鈍化していることだ。燃え尽き症候群なのか、FSGが売却を考え始めたタイミングなのか。真意はわからないが、FSG批判もこのくらいから増えたような気がする。

CL優勝後の近年では、約€100-130m がクラブは選手獲得費用となっており、€-55~-67m(売上の約9~12%前後)が近年の移籍収支で推移している。この辺がリヴァプール/FSGの許容ラインといえそうだ。

ちなみにライバルチームと比べると、(お察しの通り)リヴァプールが移籍金に費やすお金は少ない。シティに次いで英国 No. 2 売上のクラブだが、この10年で費やした移籍金はライバルと約 1.5倍差をつけられている。俺はFSG擁護派だが、近年ライバルクラブがえげつないペースで選手補強をする中、今シーズンのリヴァプールは人手不足満載の若手メンバーで勝ち点落としたりしているので「補強を渋って世代交代に失敗しているFSGはクラブを壊している」みたいな批判は一理あると思う。

SwissRamble氏による 2010-2021 の移籍金に費やした金額合計。22/23含めるとチェルシーにダブルスコアつけられてそう。

リヴァプールのお財布事情

話を今後にうつそう。今のリヴァプールのお財布(財務諸表)を見ていく。
前提として、リヴァプールの資本金(ビジネスを運営する元手金)は約3£200m程度である。£100m 以上すると噂のベリンガムを獲ろう!みたいな話がいかに勇気のいる判断か、これだけでもわかっていただけると思う。資本金額を冷静に考えたら、ベリンガムを獲る金なんぞリヴァプールの規模では全くねぇはずなのである。ちなみに、チェルシーやシティは資本金£2000mでそのうち£1,300m以上オーナーがお金を出している。そんな連中と選手獲得競争を強いられるプレミアリーグはなんというか資本主義をまざまざとつきつけられるリーグである。
ライバルとの格差を埋めるには ①追加のお小遣い(増資)を貰う ②沢山稼いで売上を原資に回す という二択が考えられる。①の手段が取れるのか、現在の借金状況をみていく。

リバプールの現在の財務(借金額)は約 £198m だ。コロナでチケット収入が断たれたことにより、2020年に借入が上がっている。が、注目すべきは1年で約3割の借金を返済していることであろう。借金を踏み倒すクラブも少なくない中、とても優良企業なのではないかと思う。

借金の用途はスタジアム拡張とかだね

この債務額はプレミアリーグのクラブとしては比較的小さい。チェルシー(クラブの売却後、アブラモビッチによって償却されたと言われている)はともかく、ブライトンやレスターなど規模が一回り小さい中堅クラブよりも少ない債務額でクラブを回せているのは、FSGの手腕である。

SwissRambleさんの資料が一番わかりやすいのよ ソース

「借金」と聞くと印象が悪いかもしれないが、この中身のほとんどはサッカーファンになじみ深い選手の移籍金である(無形固定資産に計上)。最近チェルシーが(選手購入時の費用は数年に分かれて計上されるが、選手売却時の利益は即刻その年度の会計に計上される。だから選手めっちゃとったけど少し売ったらFFP今の所ひっかからないよ)(超ざっくり)と話題になったが、「数年に分かれて計上される選手購入の費用」が債務としてクラブの財務情報に現れている。リヴァプールはビッグクラブで、抱えている選手の給料もビッグだが「ベリンガムのためにひと肌脱ぐか」となった際に増資を募る余地は十分あるといえそうである。

今後の売上の見通し:デカすぎるチャンピオンズリーグ

②沢山稼いで売上を原資に回す方法 についても見ていく。売上が上がれば、選手に費やせる額も上がるだろうという考えだ。

デロイトマネーリーグによると、21-22シーズンはリヴァプールは €701.7M/£594.3M と過去最高売上高を更新。シティ、レアルについて世界 No. 3 売上のサッカークラブとなった。グラフを見ると右肩上がりに売上があがっていてビジネスは順調に見えるが、今後も同じ売上が見込まれるか?という点については個人的には悲観的に見ている。要因は一つ、チャンピオンズリーグ(以下CL)である。

ベリンガムは €113m するらしいので、獲得すると1年間で得たチケット売上は全て溶ける。
(グラフの Matchday)??4冠直前までいってプレイできる試合を全てプレイしたんだが??

CLは全てのビッグクラブの重要な収入源だ。年度によるが出場するだけで 約€15m、すべて優勝してしまえば報酬は約€75mにも跳ね上がり、これだけでリヴァプールの売上の10%以上を優に占める。準優勝まで勝ち上がるだけでファンダイクの獲得金の大部分を貰える。CLの試合が増えればチケット収入など副次的な増収も見込める。CLは財務観点で良いことしかない、というかこれなしではビッグクラブの経営は成り立たないともいえそうだ。

まぁ一般的な会社で考えると売上の10%増減ってとんでもない話で、その額の収益をもらえるかもらえないかは毎年のリーグ最終局面になるまで読めないというのは、クラブ運営ってとても神経にくる仕事なんだろうなと思う。

ご存知のようにリヴァプールは今切羽詰まっている。今シーズンのCLの勝利数、来シーズンのCLの出場可否が今後選手獲得に費やせる金額が大きく変わる中で、前者は絶望的、後者は全く予断を許さない状況だ。21/22 のリバプールの売上は過去最高額となったが、これはプレミアリーグ2位、チャンピオンズリーグ準優勝に加え、カップ戦2つでの優勝など、ピッチ上での多くの成功によって後押しされたものである。今期、昨シーズンと同等の売上パフォーマンスを記録するのは、ほぼ不可能だと俺は思っている。

昨年のCL準優勝の賞金は €66.3m、今期仮にベスト16で敗退した場合、賞金は€10m らしいので これだけでもちょうどコナテとツィミカスを買えるくらいのお金を失うことを計算になる。

CL出場圏を決め、翌年のCL準優勝に繋がった最終節のアリソンのゴールは
文字通り「値千金のゴール」だった

ということで、今期残りのリーグ戦、KOPは死ぬ気で応援する必要がある。

CL以外の売上は上がりそう?

移籍収支の許容ラインが €55m なのに来季のCL賞金が €55m 落ち込みそうという絶望的な結論になりそうなので、それ以外の収益面もみてみる。

今夏完成予定のスタジアムのキャパが 54,000名→61,000名ので、23/24シーズン以降は単純計算で一試合あたりの売上が 13%増える。

プレミアリーグ放映権については、米国NBCがプレミア放映権を取得したこともあり、更に 22% ほど高騰するという噂だ。SwissRamble氏曰く €170m/£152m が昨年のリバプールのプレミア収益だが、収益配分は順に影響される部分があるので、、なんともいえない。とはいえプレミアリーグ全体が恩恵を受ける放映権は上昇トレンドにあるといえそうだ。

FSGの経営努力とプレミアのバブルにより、売上上昇の目途は見えるものの、やはり一発で売上を 5%-10%突き上げるCLの賞金額と比べるとインパクトは少ない。

実は給料がクソ高いリヴァプール

さて、「幼少期からの憧れのクラブから給与未払いを食らった」みたいな悲劇は避けたいので、最後に給与を支払えるか?ということも考慮しておく。

リバプールは金使わないイメージだが、実は欧州で5番目に選手の年棒が高いクラブだ。21/22の給与は£366m、売上の62%を選手に還元している。年棒は高いが対売上比率でいうとプレミアでは低い方だ。フットボール界には売上の96%を選手給料に溶かすエバートンのようなクラブもいる。ここは健全な経営のお陰で選手に還元できているFSG様様という感じである。

SwissRambleさんの資料が一番わかりやすいのよ

個別の選手ごとに見る。横軸をプレイ時間、縦軸を週給とするとこういう見た目になった。22/23のデータ。

ソース:給与データ出場時間データ(3/6のユナイテッド戦まで)
この方のブログを参考に作ってみた

しっかり活躍している人に相当の給料が払われている印象である。新入りとか移籍金に大金を使わない代わりに、長く活躍した選手に還元するスタイルであり、個人的にはとても好印象である。ディアス、ガクポなど活躍している選手は次の契約更新で給料あがるのだろうか。若い選手のモチベも上がりそうである。

ベリンガムは週休£49,000らしいので退団濃厚と思われるフィルミーノ(£180K)の給料分で十分補填可能である。他にも近夏契約満了のナビィ・ケイタ、チェンバレン(ともに£120K)の退団濃厚っぽいことを考えると給料面ではベリンガムに加えて後数名選手獲得しても余裕ありそうだ。

給料あげて彼女をバラまみれにしてほしい。もう年収1億2千万らしいけど。

まとめ

ここまでまとめると
・最近の移籍金の許容収支ラインは -€55-67m くらい
・CLこのままレアルに負けて敗退したらCL賞金は -€55m 落ち込みそう。 
・スタジアム収益や放映権は上昇トレンドだがCL賞金と比べると心もとない金額
・増資はいつでも募れそうだし、退団濃厚の選手が退団すれば給料も全然払えそう。

という感じだ。うーーーん、難しい。結局ベリンガムが獲得できるか?を左右する要素は「選手売却の有無」「増資」「CL権の確保」というありきたりな結論になりそうである。

個人的には増資計画が一番現実的かなと思っている。クロップが契約更新を行った理由として「クラブを Rebuild する必要性を感じているから」と話している。その必要性をFSGも感じているからクラブ売却をしようとしたと俺は捉えている。売却しないのであれば別の手段で Rebuild する資金をためる必要があり、クロップとの信頼関係を保つためにも FSGは増資にコミットするのではないか?と思う。

選手売却でいうと、契約年数が残っており、売却報道が出ているのはケレハー、ファビーニョ、マティップ、サラー、ジョタあたりだろう。どの選手も最低でも€25 で売れそうだし、CL確保する前提で動くのであれば1選手でも(適切な値段で)売れたらベリンガムにはお金を出す余裕はあるだろう。CL圏が危うい、増資もない、ということであれば複数選手を売却しないとベリンガムレベルの選手は取れないと個人的にみている。

ケレハーはスタメンで出るべき才能だと思うので、個人的には出て行ってほしい。リーガあたりに。

まぁ色々と述べてみたものの、わかったことは今期残りのリーグ戦、KOPは死ぬ気で応援する必要があることだ。

感想

いやぁむずかしかった。バシッと「ベリンガムが€○○m以下なら獲れます!」みたいに結論を出したかったのだが、サッカークラブの収益がCLとかプレミアの順位とか不確定要素に依存しすぎていて、売上計画が立てづらすぎた。しかもこんだけベリンガムベリンガム言って、いざ獲得したらケガで全く使えなかった、なんてこともあり得る。弊社の売上の1/7 を占める大金出しても全く活躍しないリスクがある。まじでどの怪しい仮想通貨よりヤバいよベリンガム。

最近一番共感したスパサポの方のツイート。エメルソンは活躍しててなにより。

こんな将来売上も選手への投資効果も見えない状態で、睡眠を削って選手獲得の交渉しているクラブスタッフの精神力ははんぱねぇと思う。まぁそこがむしろ楽しいみたいな狂った人ばかりなのかもしれない。心から尊敬する。

最後まで読んでいただきありがとうございました!自分で読み返しても穴だらけだし推察が多い内容となりましたが、残りのシーズンを違う角度からも楽しむきっかけとなれば嬉しいです!





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