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竹生島へ 6

前回の記事の続きです。

宝厳寺本堂の屋根を下から眺めていたら、垂木(たるき)の木口や野地板(のじいた)が白く塗られているのに気づきました。

※垂木:屋根の斜めに張り出している部材
※野地板:垂木の上に貼られる板

少し離れて、もう一度本堂全体を眺めてみました。

どうも白い色が目につきます。

なんとなく不思議な気がして、帰ってから調べてみました。


屋根が建物の壁のラインより突き出ている部分を軒(のき)、その裏側を軒裏(のきうら)と呼びます。

寺社建築は背が高いものが多く、建物の壁を雨風から守るために、軒を長めに出す必要がありますが、軒を出そうとするほど、構造的に負荷がかかります。そのため垂木を太くしたり、本数を増やしたりと、強度をあげる工夫が必要になります。

通常の家屋では垂木は隠されている場合が多いですが、今回の法厳寺本堂のように、見える状態になっていると、美的な部分にも考慮する必要が出てきます。

そこで、のっぺりした見た目にならないように、垂木を二重にするなどして立体的に見せる方法が発達してきました。

【寺院建築の楽しみ方③】美しさは軒裏に集約される - 四国遍路情報サイト「四国遍路」
たまたま写真に撮っていました。
垂木が二重になっています。

さらに、小口(こぐち)を塗装することもあります。小口というのは建材の先端の部分で、ここを白く塗ることでメリハリが出て1本1本の垂木の見た目の主張が強くなります。

【寺院建築の楽しみ方③】美しさは軒裏に集約される - 四国遍路情報サイト「四国遍路」

垂木の木口を白く塗るのは、部材を保護する意味もあるそうです。

腐りや割れの出やすい部分を保護するために、木口を胡粉(ごふん)という顔料で塗っていたことが由来だそうで、現在ではペンキで代用することが多いようです。

お寺の修繕工事

美と実用の両方を兼ねているのが白。そういうことらしいです。

後日談

家の本棚を眺めていたら、持っていることさえ忘れていた本が目にとまりました。法隆寺の宮大工、西岡常一さんの「木のいのち 木のこころ」。
国語の教科書で一部を読み、心惹かれて本を買い求めたのでした。

木の命には二つありますのや。一つは今話した木の命としての樹齢ですな、もう一つは木が用材として生かされてからのの耐用年数ですわな。

西岡常一「木のいのち 木のこころ 天」草思社

木は大自然が生み育てた命ですがな。木は物やありません。生きものです。人間もまた生きものですな。木も人も自然の分身ですがな。この物いわぬ木とよう話し合って、命ある建物に変えてやるのが大工の仕事ですわ。
 木の命と人間の命の合作が本当の建築でっせ。飛鳥の人はこのことをよう知っていましたな。

西岡常一「木のいのち 木のこころ 天」草思社

法厳寺の現在の本堂は、昭和17年に再建されたのだそうです。

80年以上前に、大勢の人たちが島と本土を行き来して、木材を運び、この複雑な構造を組み上げていった。

まさに、木の命と人間の命の合作です。

続きます。

おまけの話

白。白。兎も白い。
竹生島は弁天様の島。弁天様も白と関係があるのかな、と思い、ネットをあさったら、千葉県木更津市にある厳島神社に関する情報が目に留まりました。

この神社は白弁天と呼ばれているそうです。
本殿虹梁の上には波兎が踊り(!)、手水舎には亀(!)がいるとか。

なんだかいろいろ、法厳寺につながるなあ。
行きたくなってきてしまいました…。
(が、気持ち的には、長浜より遠い。麦畑が呼んでいないからでしょうか。)

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