見出し画像

☆仮想現実・真実☆

初めてガラケーでSNSに触れた頃、
見えない世界を取り仕切るカリスマ的な男性に魅かれた。
アナログな私が携帯ゲームから何処をどう進んだのか、
気づくととあるコミュニティの様な世界に迷い込んだ。
姿は見えぬがコンピューターではない人間達がそこに存在している。

右も左も解らぬ新参者が静かにひっそりと生息を始めると、
村長の様に頼もしい男性が声を掛けてくれた。
遭難して泳ぎ疲れ偶然潮が引き岸に打ち上げられたような安心感を憶えている。
大袈裟wだがそんな感じ。嬉しかった。

その安心を頼りに暫くその世界の滞在を続けてみる事にした。
消極的に村の様子を観察した。
毎日眺めていると言葉は交わさずとも顔見知りが増えてくる。
この村は村長以外皆女性だった。
生徒会のようなしっかり女子がルールを教えてくれたり、
村人同士が会話してる様子を垣間見つつ人々の関係性を把握していきながら自分なりの楽しみ方を見つけていった。

不慣れな私の事を村長は優しく見守ってくれていた。
優しく頼り甲斐のある村長は女性達の憧れの存在のようだ。
全ての村娘が恋心を抱いてる様子を感じた。
ある時村一番のヤンチャ娘が私を訪ねて来た。
軽い挨拶程度の会話だったが、私の事を様子見に来たのだ。
おそらくこの村は平穏な日々で余所者が来る事が珍しかったのだろう。
「村長が甲斐甲斐しく世話を焼くこの女は何者だと」、
知らぬ素振りをしつつも恐らく全ての娘達が私にアンテナを巡らせている中、勇敢なヤンチャ娘が直接様子を見てやろうという事だったに違いない。

ヤンチャ娘と私はすぐ仲良く成った。
仲良し、という中身は計り知れぬが、
「敵は味方に引き込め」という賢い念波を彼女から感じ微笑ましく成った事を憶えているw

今思い出したが、
彼女と私は誕生日が同じだった!
「10/8」それが話のきっかけだ。

例えば、
言葉の解らぬ外国人の中に自分一人が混ざっていると、
自分以外は皆仲良しに感じる事がある。
ただ単に言葉の意味が理解し合えているだけの初対面同士でも、
自分以外は皆解り合える仲間達という錯覚に孤立を覚える事がある。

この村に迷い込んだ当初正にそんな錯覚を感じていた。
村娘は皆仲が良い。
村長と村娘達の平和な世界。

しかし様子が見えてくると、
表面上の会話は社交辞令で、
それぞれが村長の気を惹きたい想いに溢れたライバル同士であると理解した。

古くからこの村に住むヤンチャ娘もまた同様で、
彼女は村長にリアルな面識があるという事を勲章のように大事にしており、
事あるごとにその風圧を放った。

またこの村には女帝のような女性が存在していた。
村娘達がキャピキャピと騒いでいても滅多に出て来る事はない。

村長は女帝に一目置いているようだった。

ヤンチャ娘に心を開いた私は、
村長と私と三人でワンセットの様な縁を感じていた。
相も変わらず余所者感の残る私を気に掛けてくれる村長。
「私が誰よりも村長をお慕え申しておる」とじゃじゃ馬感漂うヤンチャ娘。
それを妹扱いをする村長。

そんな日々の中、
時たま見る村長の異変的素行。
村長は女帝に恋をしていた。
普段は偉大なカリスマも、
女帝からの振る舞いで一喜一憂してるようだった。
女帝のツンデレ、デレ無しツンツンに大きく心を凹ます様を時たま見掛けた。

村長に敬いの心を持つ私はそんな光景を見る度軽い嫉妬の様な感情を抱きつつ静観していた。
そんな事も日常の一コマでありまた別の明日が来る。

私が初めて村長に出逢った時、
姿の見えない世界で優しく声を掛けて貰った感覚が有難い初感覚で、
思わず素直にメッセージを伝えた。
「一生会わなくても良いのでずっと繋がっていたいです。」

自ら告白等有り得ない当時の私がこんな想いを真っ直ぐ躊躇いなく伝えていた。
その時思った。
私は姿が見えない方が素直に成れる。
姿が見えない方がその人が見える。
直接触れる距離にない事で躊躇いが外れる事に気づいた。
心が見える先の展開まで見えてしまう為、
触れられる距離では誤解を生じさせぬ様、
素直な発言を控える癖がついていたのだ。

バーチャルが解放を教えてくれた事でリアルにも活かせるようになった。
躊躇いや抑える感情を放った事で、
素直な表現をしようがしまいが心の負担が軽減された。

私は何故こんな昔話を始めたのだろう?w
久しぶりに思い出した世界だが、
今ではバーチャルは日常の一部であり、
最早何がリアルなのかさえ曖昧とも言える。

子供の頃お札の印刷工場を見学した時思った。
お金は宝物じゃない。作り物だと。

現代ではお金もバーチャル化してきており、
現金に触れる事なく消費者として過ごす事が可能だ。
作り物が作られなくなる未来もありそうだ。

迷い込んで滞在した村を離れる時が来た。
入り込んだ時が突然なら旅立ちも突然だった。

環境に馴染まない私をいつまでも子供のようにお世話してくれる村長。
村長が特別視し続ける私の事を快く思わない村娘達。
ある時遂に村人一揆が起きたw
経緯はよく憶えてないのだが、
ある日突然村八分に遭うw

普段ライバル同士の娘達が結束し、
村長が目を掛ける私を追い出しにかかったw

うろ覚えのイメージだが、
村中の看板に名指しで追放運動がなされていたw
看板に包囲されて八方塞がり。
村長の居ぬ間に。

この村を出る時が来た。
女冥利に尽きると思った。
清々しくも晴れ晴れとした心持ちだった。

ヤンチャ娘も村人の一員に入っていたが、
旅立つ前に仲良くしてくれたお礼を彼女にだけメールで伝えた。
「いつかどこかで会おう」と私が締め括ったのかは曖昧だが、
彼女の返信だけはハッキリと憶えている。

「その時までに手話を覚えておいてね!」

衝撃的だった。
あのじゃじゃ馬が、
あの毎日大騒ぎなヤンチャ娘が、
耳が聞こえず言葉が発せられないという事を、別れ際に知った。

リアルでは出逢う機会がなかったかもしれない。
出逢えても彼女の本質を知る機会を得られないかもしれない。
お喋り好きな明るく勝ち気で活発なヤンチャ娘が、
時を経て改めて私に教えてくれた。

目に見える世界が全てではない☆

目に見えない世界にこそ真実はある☆


PS.村長不在中に旅立った私を心配しその後村長から電話があった。バーチャルを離れた後にリアルに繋がった。そして告白された。その時の村長が今の夫です。

とかいう落ちで締めると物語的には面白いが残念w

一時代を一緒に過ごしたくらいの感覚でありながらそう言えば村長とは一度も面識がない。


気に留め目に留め読んでくださりありがとうございます☆