見出し画像

『花束みたいな恋をした』を音楽で例えるなら


趣味嗜好が同じなのがトントン出てきて嬉しくなってしまう二人の躁状態な心境がツライ。この恋は脆いという香りがすごい。

趣味感性で塗りかためて分かりにくくしてる、本当じゃないお互いのどこを好きになったんだろうねっていう。

「あらゆる文化を好きな自分が好き」な本人たちには才能も行動力も無い、いたって普通なのに普通を嫌ってる。
「素敵な自分」を再確認と認めてもらうためにお互い好きなものを言い合う。
相手のこと好きなんじゃなくて自分のことが好きなんだよ、ってのがよく分かるコミュニケーション。
「こうは在りたくない」っていう姿が次第に鏡のようにお互いに見えてくる。

両者の心の声を並走してるから、どちらに肩入れすることもなく、どちらにもイライラしたり、身につまされる部分も多くこっぱずかしくなった。

この映画の中の若い二人が安直にメインカルチャーなものは「無し」と思ってる姿が、そういう姿ってやっぱり未熟だなってのも受け取れる映画だった。

心の声がたくさん出るけど、説明的ってのではなくて、あくまで未熟な内向的人物像の輪郭を浮かび上がらせるようで、なんか面白かった。

固有名詞がたくさん出てきたり、心境の変化をリアルとも思えたけど、これぞ映画っていう素敵なファンタスティックな展開だった。なにこの理想的な別れ方!映画です映画!
恋愛の躁状態、何やっても楽しい素敵な毎日。ほんとaikoのボーイフレンド状態。間違いなく関係が鬱に落ちるときが来るってのを予感させる序盤の展開から、以外にも素敵でやさしい終わりかたで、すっごく良かった。3人目が出てきてかき乱すでもなく、ドラマチックなアクシデントがあるわけでもなく、二人を阻む壁もない。甲斐性なしだった麦君が責任持って必死に仕事やってく姿とか、自分の「好き」を必死に貫こうとする絹ちゃんの姿とか、それをポジティブに見ようとせずネガティブに見えてしまう人間の困った習性など、二人の始まりから終わりまでの恋愛の素晴らしさ見せてくれた。

ちょっと「500日のサマー」が頭に浮かんだ。あの映画は男側からの視点のみだったけど、よく似ている。心境の変化だけが展開していく普通の恋愛映画。あの映画の男もサブカル脳で一方的に理想を彼女に投影して舞い上がってからの、これぞ映画ぁ~っていうファンタスティックなラストの展開だった。エンディングにはインディギターロックのマムラが流れて気持ちの良い終わり方で高揚して映画館をあとにできるものだった。
よく似てるけど、男女両方の視点を並走させるとまた全然違った面白さだなぁと思った。
洋画っぽさと、プラス国内コンテンツに敏感なガラパゴスな若者。

「花束のような~」の彼女の実家や同棲してる家に常に花を飾っていて、素敵やん。
麦君にちなんでか、ムギも飾ってあったな。
こういう感じで小道具に意識が向いちゃうところとか、まんまとやられた~って感じ。


菅田将暉くん目当てや、数年後一人暮らしを始めてどんな恋愛するのか期待をする10代。
この映画の二人と同世代。
過去の恋愛を振り返って“そうだった”と思う30代~。
坂元裕二作品だから見る人。
映画内でたくさん出てくるカルチャーがドンピシャな人。
あらゆる世代の人が見て、良い映画だったと思える作品だと思う。


この映画を音楽で例えるなら、

序・ボーイフレンド/aiko

破・what do you mean?/Justin Bieber

急・夢が夢なら/小沢健二

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?