子どもに感情的に怒鳴った結果

私は子どもをなるべくちゃんと育てたいと思っている。
そして、子どもの悪い行いを正す時は、怒るのではなく叱る。怒鳴るのではなく教えて気づかせるということを心がけている。感情的に怒鳴るなんてもってのほか。
…なのだが、私は感情的に怒鳴ってしまっている。
なんなら、子どもが悪い行いをしてなくても、結果として自分の段取りを狂わされたら頭に血が昇って、自分のイライラを発散させるために、八つ当たり的に子どもを怒鳴りつけることがある。理不尽だとわかってる。でも目の前の子どもに腹が立って止められない。
SNSとかで、感情的に怒鳴ると子どもは必ずこうなる!みたいな不幸ルートの案内や、それに付随して子どもの時に理不尽に怒鳴られてきた人々の恨み節コメントが並ぶ。
だから絶対にしちゃいけないと思ってるのにやってしまう。

先日こんなことがあった。
家で2歳と4歳の子どもたちとクッキーを作ることにした。
生地をこねるのは粘土遊びのようで盛り上がるだろう。
型抜きをたくさん買い揃えているので、色んな形に綺麗に抜かれる型にわくわくするだろう。焼きたてのクッキーの匂いと味に心が満たされるだろう。
そんな期待をこめて。
しかし、どっちが生地を先にこねるかで喧嘩。生地をこねるために敷いたラップからはみ出してテーブルに生地を擦り付けべとべと。2歳が鋭利なクッキー型をテーブルの上でガリガリと滑らせて遊び、テーブルが削れる。くしゃみをして鼻が垂れ、バターの油でべとべとになった手で鼻水をこすり、また生地を触ろうとする。まさに粘土遊びのように生地をぐちゃぐちゃに潰したりちぎってボロボロに散らしたりして、成形せずに遊ぶ。べとべとの手でテーブルの端や椅子や壁を触ろうとする。
全てにおいてイライラした。
クッキー作りをなめていた。賢いスマートなママは、この全てに予防策を取るのだろう。ラップはテーブル全面に敷くとか、手拭きをすぐ横に用意しておくとか。私はそれをしなかった。子どもを育てたことがある母親なら容易に予測できる不幸な未来を、自らの準備不足・覚悟不足で完璧に再現した。
守備範囲以外をべとべとにされるのが許せなかった。食べ物を粗末にしているように見えて許せなかった。それだけの理由で、「二度と作るな!」と子どもたちを強烈に怒鳴りつけ、睨みつけ、生地を乱暴に回収し、それぞれの子どもの手を無理矢理洗ってリビングに強制送還した。
下の子は泣き、上の子は私を睨みつけていた。
…またやってしまった。
冷静になった頃に、二人に謝る。ひどいことをしておいて、嫌われまいと赦しを乞う姿がまるでDV男のようで本当に情けない。自分の愛着の問題が子どもに発動している。最悪のパターン。長男から「お母さんはもうバツだ。もうお母さんと遊びたくない。お父さんがよかった。」といわれた。ゆるしてもらえなかった。嫌われたかもしれない。とても反省した。

その数日後。子どもたちがまたクッキー作りをしたいと言い出した。それで、私が「今度は怒らないようにするからね」とバツが悪そうに言うと、
長男は
「おこりたかったらおこってもいいんだよ。」
と言う。

面食らった私は
「お母さんね、君たちが嫌な気持ちになったり怖い思いや悲しい気持ちになるのが1番いやなの。それなのに、我慢できずに怒って君たちに嫌な思いをさせてるから、自分が許せないの。」
と正直に話す。

すると長男は

「お母さん、おこりたかったらおこっていいんだよ。そしたら、いまお母さんがおこりたいきもちなんだなってわかるから。クッキー、ボロボロにされたのいやだったんだなって、つぎからきをつけようってわかるから。」

と言っていた。
私は、怒鳴られた子どもは恐怖しか感じないと思っていた。恐怖で思考停止して何も考えられなくなって、トラウマになるんだと思っていた。
でも、長男は私の気持ちを必死に考えてくれていた。そして、自分がどう動くべきか考えていた。
これは見方によってはいわゆる不機嫌ハラスメントで、怒りを以って自分が望む行動を子どもがとるようにコントロールしようとしているに等しいのかもしれない。
子どもが親を愛する気持ち、親に見放されたくない本能を利用しているだけなのかもしれない。
でも、私には、長男は私の怒りの気持ちを否定せず、その恐怖に取り込まれることなく、私の課題と自分の課題を切り離して受け止めているように見えた。たしかに怒られた当時、私に理不尽に怒られたことに対する不満をきちんと示してもいた。私如きにコントロールされず、自分で考えて自分の行動を決めているように見えた。
私は心底尊敬した。

怒鳴りつけることを肯定する趣旨ではないのは大前提だが、それ以外のところで子どもと正面から向き合って、子どもの気持ちを理解するよう心がけていたら、多少理不尽に怒鳴ることがあっても、

・これは理不尽だ。
・母親は自分と別の人間であり、どんな感情を持ってもよい。
・ただし母親の感情に自分が責任を負う必要はないのだ。

と理解するようになるのではないかと思った。

何が言いたいかと言うと、怒鳴って落ち込んでるお母さんに、大丈夫だよって言いたいのです。
落ち込めるお母さんはきっと、いつも子どもと正面から向き合って、気持ちを理解しようと努力してるから。

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