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蓑虫(鬼の子)

先日のお稽古で茶杓銘に「鬼の子」と付けてくれた方がいました。
「鬼の子」とは「蓑虫」のことです。何で蓑虫のことを「鬼の子」というのか調べてみたら枕草子からきていました。

「みのむし、いとあはれなり。鬼の生みたりければ、親に似てこれもおそろしき心あらんとて、親のあやしききぬひき着せて、『いま秋風吹かむをりぞ来んとする。まてよ』といひおきて、にげていにけるも知らず、風の音を聞き知りて、八月ばかりになれば、『ちちよ、ちちよ』とはかなげに鳴く、いみじうあはれなり。」
(現代語訳)
「蓑虫はとても趣深い。鬼が生んだので、親に似てこれも恐ろしい心を持っているだろうということで、親がみすぼらしい着物を着せて、
『間もなく、秋風が吹いたらそのときに迎えに来ます。それまで待っていなさいね。』
と言い残して、逃げて行ってしまったことも知らずに、秋風の音を聞いて知って、八月ごろになると、『父よ、父よ(又は、乳よ、乳よ』と心細そうに鳴くのは、大変しみじみと心打たれる。」
ここから蓑虫の別名が「鬼の子」となったようです。
男鬼が生ませたから、子供も恐ろしい心を持つかもしれないので、粗末な服を着せている、と解説しているものもあります。秋風がすーっと、心に吹きすさぶようですね。

「蓑虫工芸」というものがありまして、茶道では、帯に蓑虫工芸のパッチワークをしたものを見かけたりします。
蓑虫工芸はみの虫の繭を利用し、織物などの表面に貼り付け加工を施したものです。蓑虫の蓑を加工する技術は、足利市在住の蓑輪宗一郎氏が考案したものです。みの虫の蓑は、幼虫が口から糸を吐き出して枝や枯れ葉をからめて作ったもので蚕の繭とちがい、糸を吐くときに方向性がないので、縦や横にカットしてもほつれがなく、柔軟性に富んでいます。

また、高麗茶碗の中の雨漏茶碗で「銘 蓑虫」というものが伝わっています。浅めで小振りな茶碗です。轆轤目が荒く、竹節高台で見込みは巴状。目が4つ。内外に雨漏りの浸み模様。
藤原良径の「ふゐさとの板間にかゝる蓑虫の漏りける雨を知せ顔なる」から銘がつけられました。
大正9年、根津嘉一郎が入手して根津美術館所持。


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