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流転の茶室「獨楽庵」

利休より始まり、その姿形を変えながらも四百数十年の時を生き抜いた流転の茶室「獨楽庵」。戦前には鎌倉数寄者の所有で北鎌倉に所在しておりましたが、現在は八王子で「桑都茶寮 獨楽庵」として穏やかな日々を送っております。


本日は獨楽庵をはじめとする大小4つの茶室を備えた茶寮の「船越席」にて庵主の小坂先生が二客一亭のシンプルな茶事でもてなして下さいました。
点心席での食事と一献の後、主菓子は侘助をかたどった練り切り。その後蹲踞を使い、船越席での濃茶薄茶となりました。
灯火の灯のみの厳かな濃茶の後、中立ちを挟み室礼を変えて突き上げ窓からの穏やかな光が差し込む中での薄茶。
床の間も花から軸に変わりご亭主の小坂先生との道具談義や由緒のご説明を楽しみ、学びながら、あっという間に時が過ぎました。


退席後「獨楽庵」を見学させていただきましたが、有名な興福寺の木組みの跡も残る太柱がまず目に入ります、席は平三畳台目で仕付棚と中柱がないため、亭主が席中にくまなく目配りができ、客はどの位置に座っても亭主の動きが見える理想的な茶室でした。床の間の横の小さな襖を開けると隠れ家の基地のように二畳の茶室がありました。こちらも障子の桟がとても凝った作りで、あれこれまたいつものお茶会アイデアをめぐらしてしまいました。
本年も後1日を残すのみとなった、師走の穏やかな日に鎌倉にはない、小田原とも違う素晴らしい由緒の茶室で歳暮の茶をいただき、一年を締め括ることができました。お茶をしていて良かったと思うのはまさにこのような時であるとつくづく思いました。
小坂先生ありがとうございました。