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卵子提供ドナーになったときの詳細な話7つ

■私は2017年と2021年の合計2回、卵子提供のドナーになりました。
■現在、大学院生です。
■卵子提供ドナーは日本で数百人くらいしかいない(らしい)ので、珍しい経験だと思います。
■なぜドナーになったのか、どのような経験だったか、卵子提供で生まれてくる人に伝えたいことを忘備録的にnoteにしてみようと思いました。

■不妊治療をしている/予定している夫婦や、興味を持っている人に読んでもらえたらいいなと思います。
■あくまで個人の意見です。

今回は前回の「なぜドナーになったのか」に続き、第2回目です。
内容は「卵子提供ドナーになった経験について」です。

流れとしてはこんな感じでだいたい7段階に分けられると思います。

①卵子提供ドナーのエージェントに登録
②夫婦に選ばれると連絡が来る
③同意書とか書類が届くので、書いて郵送
④産婦人科で検査をする (ブライダルチェックと同じ感じ)
⑤(コロナ前は、症例数が多い病院のある海外に渡航)
⑥エージェントに同行してもらって何回か産婦人科に通う
 決められたスケジュールでホルモンの自己注射や服薬を行う
⑦採卵

この流れに沿って、私の個人的な経験談をシェアしていこうと思います。

①卵子提供ドナーのエージェントに登録
・ネットで検索して、信頼できそうなところに登録しました。

・年齢や身長、体重などの身体のデータから、親など家族の病歴も書きました。私は身内でガンを経験した人がいるのでそれももちろん書いたのですが、5回くらい指名きたので(そのうち3回は辞退)家族に病歴があるからと言って必ずしも敬遠されるというわけでもないみたいです。

・学歴や写真(2枚くらい)も載せます。写真は、たぶん奥さんとある程度似ているかどうかの判断材料になるのかな?という感じ。
・エージェントさんの話によると、年齢もですが外見、学歴を重視する人もいるということでした。

・ちなみに卵子提供ドナーは30歳未満しかなれなかったです。

②夫婦に選ばれると連絡が来る
・メールか電話で知らせが来ました。
・コロナ前は海外で採卵をするのがスタンダードだったので、この段階でもし引き受けた場合に今回の渡航先がどこになるかを知らされました。
・引き受けるかどうかは即答しなくてもOKでしたが、不妊治療しているご夫婦にとって時間は本当に貴重なのでなるべく早くお返事するのがベターでした。
・どんな夫婦が自分を選んだかとかは一切知らされません。
・なぜ自分が選ばれたのかも不明です。


③同意書とか書類が届くので、書いて郵送
・契約書やリスクの説明書類などが送られてきました。
・この卵子提供ドナーに協力している間は、新しい異性のパートナーと関係を持たないなど安全&確実に卵子提供を行うためのルールがありました。
・簡単に言うと性行為禁止です。


④産婦人科で検査をする (ブライダルチェックと同じ感じ)
・これは性病などをもっていないかの検査と、卵子が育ちやすいかどうかの指標となる数値のようなものを検査していました。
・つまりちゃんと卵子ドナーになれるかを確認されるという感じです。

・産婦人科によっては「卵子提供で~」というとビックリされるので「ブライダルチェックです」というとスムーズでした。内容はほぼイコールなので。
・私は2017年当時まだ学部生だったので「実は親の勧めでお見合いをすることになりまして…」というかなり苦しい言い訳をしてこの検査をしました。バレバレだったと思いますが(笑)
・この検査は国内の産婦人科で、一人で行きました。


⑤(コロナ前は、症例数が多い病院のある海外に渡航)
・新型コロナウイルスが流行する前はマレーシアやアメリカなどに渡航して採卵(成熟した卵子をドナーの体内から取りだすこと)をするのが一般的だったようです。
・私は2017年はマレーシア、2021年は日本で行いました。
・マレーシアには16日間くらい滞在しました。
・現地の日本人スタッフが空港まで迎えに来てくれました。
・飛行機や滞在費用などはすべてドナーは負担なしです。
・朝と夜はごはん付きでしたが、ランチやおやつは自腹でした。
・激しい運動やプールに入るのは禁止でした(感染症防止のため)が、近場での観光などは自由行動でした。

・2021年に日本でドナーになったときは日常生活で、通院の時だけ都内のクリニックに通う感じでした。


⑥エージェントに同行してもらって何回か産婦人科に通う
 決められたスケジュールでホルモンの自己注射や服薬を行う

・マレーシアのときは現地スタッフといっしょに現地の大きくて最先端な感じのクリニックに行って、説明を受けたり診察されたり。
・いちばん記憶に残っているのはやはり自己注射です。
・毎日決まった時間に、自分で卵巣があるあたりのおなかのお肉をつまんで、プスッと注射しました。これはクリニックでやり方をおしえてもらいました。糖尿病のインスリン自己注射に近い感じだと思います。最初は緊張しますが、だんだん慣れました。
・針がすごく細いし短い(2センチくらいしかない)ので、そんなに怖くなかったです。
・面白いのは、まったく無痛のときがあること。「痛点ってホントにあるんだな」って感じでした。

⑦採卵
ふつう女性の体は毎月1つ卵子が成熟して、排卵され、生理になりますが

・卵子提供ドナーでは
(1)まず排卵させないようにして
(2)同時にいくつもの卵子を成熟させる
という方法で効率よく卵子を取りました。

※おそらく、不妊治療で女性が行う手順とほぼ同じだと思います。
・よく友達に卵子提供ドナーになったというと「危険じゃない!?」というリアクションをもらうのですが、世の中の不妊治療をしている女性の方々は(人によってはフルタイムで働きながら)同じリスクを負って頑張っているのだと思うと本当にすごいです。

・10日間くらい注射を続けると、卵巣の中で卵子が大きく育ってきます。
・エコーで見せてもらうのですが、片方で7個~10個くらいタピオカみたいな卵子が詰まっているのが見えました。
・採卵前日はジャンプすると「ここに卵巣あるな」ってわかるくらい腫れたような重たいような感覚がありました。
・この卵を育てる時期はタンパク質を積極的にとるように言われていたので、毎食白身魚やゆで卵をいくつも食べていました。
・おなかにいるのは胎児ではなく、卵子なのですが、「この細胞が将来ご夫婦の赤ちゃんになるんだなあ」と思うと、自分は今すごく大事な役割を担っていると感じました。なんだか妊婦さんの気分でした(笑)

・前日の夜からは絶食して、決められた時間に薬を飲みました。この薬は5分でもずれたらアウトで、厳密に投薬時間が決まっていました。もしこれがずれてしまうと手術の時間を変更しないといけないようでした。

採卵は全身麻酔で行いました。

・2017年は初めての全身麻酔でしたが、点滴で麻酔を入れられても何も起きなくて「どうしよう!?効かないです!」と言った3秒後くらいに天井が上下に揺れ始め、気づいたら手術終わっていました(笑)人間の身体ってこんなにたわいもなく意識を失ってしまうのかと驚きました。

膣から卵巣に向かって斜めに針さして卵子を取ります。想像すると痛そうですが私は直後でも弱い生理痛くらいの痛みしかなく、1日もせずにそれもなくなりました。

20個と少し卵子取れたと言われました(2017年)。
・2021年は7個。
・普通15個前後らしいのですが、多い人だと30個40個取れることもあるそうです。でもそれは身体がホルモン剤に反応しやすい体質ということで、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)になりやすいと言われています。若い人がなりやすく、腹水が溜まったり血栓症になるリスクがあります。
実はこれが卵子提供ドナーの主なリスクとして説明される内容でした。
参考:https://fert-tokyo.jp/funin/assistant03.html


・私の場合、2017年にマレーシアで採卵したときは本当になんともなく、絶食後に大盛りの牛丼を食べて胃もたれしたのが最大の体調不良でした。
・2021年に都内で採卵したときは、卵子の数は少ないにもかかわらず副作用が出て、採卵後に腹水が溜まりました。年齢の変化もあるのかもしれませんが、海外と国内では投薬の方針が異なるのが理由の一つであるようです。

・採卵が終わったら、あとは普段の生活に戻ります。
・ときどき体調大丈夫かどうか、エージェントから気遣いの連絡をもらいました。
・腹水溜まったときはスポーツドリンクを沢山飲んでいました。
生理がくると腹水の症状は消失しました。

まとめ
以上が私の経験した卵子提供の流れです。

卵子がおなかで成熟する間は、普段以上に栄養のあるごはんをしっかり食べて、ぐっすり寝て、周りの人とたくさん連絡をとって楽しく過ごしました。
卵子がそれをどう感じていたかわかりませんが(笑)
君が生まれてくる世界はこういう楽しいところなんだよというメッセージが伝わるかもと思いながらおなかに細胞(卵子)入れて生活していました。

日本では約16人に1人の子供が不妊治療を経て生まれてきているそうです。
参考:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51520130Z21C19A0CR0000/

そう考えると、そう遠くない未来「自分が卵子提供で生まれてきた」という人も増えてくるのかなと思います(すでにもういると思いますが)。

次の記事は、私の卵子提供で生まれた子が将来この記事を読むと思って書いてみようと思っています。

前回より長くなりましたが、読んでくださりありがとうございました。


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