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四畳半神話体系(ねたばれかも)

 私の好きな小説、アニメに森見登美彦さんの「四畳半神話体系」というものがある。この物語は、体たらくな生活を送っている京都大学3回生の男子学生”私”が、入学したときに今と違うサークルを選んでいたらどれだけ自分の大学生活が華々しくなっていただろうかと夢想するところから始まる。違うサークルに入っていた世界線を我々はそれぞれ見ていくのだが、どれも結局は同じような結末に…というのが大まかなあらすじだ。

 私はこの四畳半神話体系から得られる教訓を、中国春秋時代における哲学者である老子の言葉を借りて「足るを知る」と表したい。
 他のサークルを選んでいればこんな羽目にならなかった!と喚く”私”に、樋口師匠はこう言った。

“我々の大方の苦悩は、あり得べき別の人生を夢想することから始まる。自分の可能性という当てにならないものに望みを託すことが諸悪の根元だ。今ここにある君以外、ほかの何者にもなれない自分を認めなくてはいけない。”

 人は可能性ではなく不可能性で定義されるという師匠のお言葉である。このあとのセリフ「君が有意義な学生生活を満喫できるわけがない。私が保証するからどっしり構えておれ」は師匠流の慰めであり優しさでもある。
 どの2年間を選んでいても、今と代わり映えはなさそうだ。結局どの団体に所属するかということは重要ではなかったのだ。それに気付かずにありもしない別の人生に期待したり縋ったりして今を嘆いていた。大事なのは選び取ったたった一つの自分の人生と向き合い、受け入れ、そこから幸せを見出すことなのだ。
 このあと”私”は、大学生活がめちゃくちゃになった原因としてきた一緒にいるとろくなことない悪戯好きでおせっかいでダル絡み多くて妖怪みたいな顔をしている唯一の友人であり、悪友である小津にアツいハグをするのであった。

んーーーーーいい話。

“不毛と思われた日常はなんと豊穣な世界だったのか。ありもしないものばかり夢見て、自分の足元さえ見ていなかったのだ。これは私が選んだ人生、私が望んだ結果である。”


最後に占い婆の言葉を借りて

好機はいつだってあなたの目の前に……

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