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#2 「メディアの取材を受けたい」、「メディアに出るのが不安」と感じているあなたへ

メディアに活動を取り上げてもらうことは、あなたの取り組みをより多くの人に知ってもらうとても良いチャンスです。署名に多くの賛同や注目が集まるにつれて、メディアから取材の依頼が入ることがあるかもしれません。記者会見を開催しメディアを招待すれば、活動がニュースや記事で取り上げられ、さらに多くの人にその問題を知ってもらえるかもしれません。あるいは逆に、メディアに取材をして欲しいのに、なかなかそのチャンスが巡ってこない、とモヤモヤしている方もいらっしゃるかもしれません。

初めて取材を受けたりメディアに向けて発信を行う際に、不安になる方は多いです。しかし、事前にさまざまな準備や確認を行うことで、安心してあなたが人々に本当に伝えたいことをうまく伝えられるようにできます。どのような事に気をつけて準備ができるか、1)取材依頼があった場合と、2)自ら記者会見を行う場合 の2つをお話します。また最後に、どのような場合でも応用できるメディアアプローチをご紹介します。

  1. メディアからの取材依頼があった時にできること

    • 1-a. 記者・媒体について調べてみましょう

    • 1-b. 取材内容と企画をよく確認しましょう

    • 1-d. 不安な場合は仲間に取材の場に同席してもらいましょう

    • 1-e. 公開前にコンテンツを確認させてもらえるようお願いしてみましょう

  2. 自ら記者会見を開催する時にできること

    • 2-a. リハーサルしてみましょう

    • 2-b. 事前参加申し込み制にしてみても良し

    • 2-c. 事前に送られた質問だけに答えるのも選択肢のひとつ

  3. その他にできること

  4. 話したくないことは話さなくていい。自分を大事にする選択肢を



1. メディアからの取材依頼があった時にできること

メディアから取材の申し込みがあると、嬉しい反面、「この記者さんは話をちゃんと聞いてくれるかな?」「どんな風に自分のことが書かれるんだろう?」など、心配になることもあります。取材の依頼があったときに確認しておいたほうがいいことを、チェックリストにまとめてみました。以下の点をよく確認し、受けたい取材かどうか判断する参考にしてみてください。

取材前チェックリスト

チェックリストの活用にあたって大事なポイントは、以下の5つです。

1-a. 記者・媒体について調べてみましょう

まずは、依頼をしてきた記者について事前に調べてみましょう。同じ新聞社やテレビ局のなかでも、記者によって得意分野は異なります。フリーランスの記者の場合は、いろいろな媒体で記事を書いている場合もあります。過去にどのような記事を書いているか、どのようなテーマについて取材しているのかなどを調べておくと、その記者がどのような理由で取材をしてきているのかが推測しやすくなります。記者のバックグラウンドを知ったうえで、この取材依頼を受けたいかどうかを判断しましょう。

1-b. 取材内容と企画をよく確認しましょう

もし、取材を受けたいけれども、メディア露出する事に懸念点があったら、事前に記者に伝えてみましょう。どうすれば誤解がない伝え方ができるか、一緒に考えてくれるかもしれません。どのような伝え方や説明の仕方が多くの人に響くのかを自分で考えて、記者に取材の内容を提案しても良いかもしれません。また、もし、あなたが自分の署名に反対意見を持つ人からの批判に対して不安を抱いている場合、そのような反対意見を持つ人は、実は根拠に基づいた知識がないために、誤解をしているかもしれません。そのような誤解を解くために、取材を受ける時にはどのような説明・回答を含めるといいのかを念頭に置きつつ取材対応をしてみると良いでしょう。

1-d. 不安な場合は仲間に取材の場に同席してもらいましょう

もし1人で取材を受ける事に不安がある場合、取材の場に一緒にいてくれる人・仲間を呼んでも良いか記者に確認してみましょう。サポートしてくれる仲間がその場にいれば、もし取材中に困ったことがあっても仲間がその場にいるだけで安心できたり、仲間がサポートしてくれるでしょう。

1-e. 公開前にコンテンツを確認させてもらえるようお願いしてみましょう

取材の記事やニュース動画などが公開される前にコンテンツを確認させてもらえるようお願いしてみましょう。媒体によっては一律で事前チェックを断っている場合もありますが、記者が工夫してくれることもあります。コンテンツを確認する際は、自分が意図した内容・メッセージでメディアに取り上げられているか確認しましょう。もし、伝えたいメッセージではない場合、修正してもらえるよう記者にお願いしてみましょう。

取材を受けるにあたって不安があったけれども、メッセージの伝え方を記者に相談して、活動の紹介の仕方をメディア側がうまく調整してくれた事例を紹介します。

環境や動物愛護を学ぶ機会として、地域の学校で肉・魚・乳製品を控え大豆などの植物性食品のみを使った給食を月に一回導入しようとオンライン署名を初めたKさんは、活動の甲斐がありメディアの取材を受けて、番組に出演する機会がありました。活動を知ってもらう良い機会ではありましたが、Kさんは出演に向けて不安がありました。番組のお知らせが記事になった際に、反対の意見を持つ人々から批判的なコメントが届いたからです。

大きな不安を感じ、活動を続けること自体にも迷いを感じた発信者さんは、まず、同じように活動をしたことのある友達やChange.orgのスタッフに相談してみました。お友達からは、同じような経験をした時にどのような行動をとってみたかアドバイスをもらい、Change.orgのスタッフからは、記者に相談してみてはとのアドバイスをもらいました。その後、Kさんは、記者に不安に思っていることを伝えてみました。

相談してみると、番組の記者や制作チームの皆さんは、もともとはぶっつけ本番収録のみの予定を変更して、事前練習や台本の読み合わせを組んでくれました。さらに、本番中には、番組のキャスターが、反対意見があるということも紹介したり、反対意見に対する応答をしてくれたり、Kさんの取り組みに対する誤解が生まれないように配慮した放送をしてくれました。

Kさんのように相談してみると、理解のある記者や制作チームであれば、あなたが自信を持って取材に応じれるような環境作りをサポートしてくれたり、さまざまな配慮をして誤解の生まれにくいメッセージの伝え方を一緒に考え、確認してくれる、ということもあるはずです。

2. 自ら記者会見を開催する時にできること

「記者会見」は、ちゃんと手順を踏めば、誰でも開催することができます。「芸能人や政治家、または大きな企業が開くもの」というイメージを持っている方も多いかもしれませんが、個人が始めた署名について、個人主催で記者会見を実施することも可能です。
記者会見のメリットは、発言の内容を自分でコントロールしやすいこと、また複数メディアから同じテーマでの取材を個別に受ける場合に比べて手間が省けることです。

2-a. リハーサルしてみましょう

自分が伝えたいことは事前に準備し、記者会見での発言をリハーサルしてみましょう。また、仲間にリハーサルを聞いてみてもらっても良いかもしれません。リハーサルしておけば当日の緊張度が抑えられます。また、仲間に聞いてもらえれば、自分が伝えたいことが明確になっているか、他の人にどう聞こえるか、フィードバックがもらえるでしょう。さらに、仲間から質問をしてもらったり、自分で想定される質問を考えてみたりすると、記者会見で質疑応答を行う際に緊張せずに受け答えができるでしょう。自分で想定される質問を作ってみたり、仲間から質問をしてもらう場合は、あなたの署名活動に賛成している人がしそうな質問と、反対している人がしそうな質問、両方を練習してみると、どんな質問にも答えられる自信がつくでしょう。

2-b. 事前参加申し込み制にしてみても良し

あらかじめ、記者会見の出席申込書をグーグルフォーム(Google form)やWordpressなどのWebアンケートフォームで作り、記者の名前、連絡先、社名、質問したい事項などを書いてもらうのも良いでしょう。どのような質問をしたいのか、どのメディアで取り上げられるのか、あらかじめ確認して準備できます。また、事前に記者の連絡先を把握しておけば、万が一記者会見当日記者と直接話せなくても、会見後も記者と連絡が取れるでしょう。

2-c. 事前に送られた質問だけに答えるのも選択肢のひとつ

突然予想していなかった質問に対応するのに不安があったりする場合は、事前に送られた質問のみに答える、という会見方法もあります。その際は上記のようにGoogle formなど、別途Webアンケートで事前に記者が質問を送れるように工夫してみましょう。

その他にできること

  • 本名や顔は出さなくても良い

取材を受ける際や記者会見を行う際、どちらの場合も、顔出しや名前だしをする必要はありません。名前は匿名やニックネームを使ったり、写真や映像は断るまたは顔は映さない、という選択肢もあります。会見を行う際は、写真や映像を禁止する、という設定をあらかじめ自ら行うことも可能です。顔出しや本名の使用を記者側からきつくお願いされる場合は、その取材は断っても構いません。自分を守ることを優先しましょう。

  • 自分に関する表現の希望も伝えてみましょう

自分のバックグランドを説明する際、どのように表現してほしいか要望を出すこともできます。(たとえば「女子大生」という書き方は自分達にしっくりこないのでやめてほしい、「性暴力被害者」ではなく「サバイバー」と呼んでほしい、など)。


話したくないことは話さなくていい。自分を大事にする選択肢を

メディアから取材を受けることで、職場や学校、地域の人、家族・親戚などにも情報が伝わる可能性があります。それによって活動にとってプラスになることもあれば、日常生活でも活動について話題にする機会が増えてプレッシャーを感じたり、環境の変化に負担や不安を感じたりすることもあるかもしれません。活動にとって重要なチャンスだったとしても、私生活を犠牲にする必要はありません。
取材の依頼が来ても、取材を受けるのに気乗りしなかったり、取材内容や掲載先のメディアがあまり適切に感じられない場合は、取材依頼を断るというのも選択肢です。特に、発信している課題が自分にとって当事者性の高い、つらい経験に基づいたものである場合には、取材相手の期待に沿ったストーリーが何かわかっていても、あなたに迷いがあるなら話さない決断をすることは大切です。例えば先週新聞で経験談を話したからといって、今週テレビで同じ話をしなくてもいい、ということはぜひ覚えておいてください。署名の成功のためだから、という理由で全ての取材依頼を引き受ける必要も全くありません。
また、事前に取材依頼内容などを確認したり充分に把握しておくことは、自分が本当に伝えたいことを上手く伝えるために重要な準備のひとつです。記者とも相談したり、時には取材依頼を断ることは、信頼できるかつ、あなたの署名をよく理解してくれる良い記者さんとの出会いを築く事にも繋がるでしょう。
メディアの取材を引き受けるかどうか、顔出しと名前出しをするかしないか、どのような内容で話をするかなど、メディア取材の際全てをコントロールできるのは、活動の主役である「あなた」です。自分の気持ちを最優先して、出来ること、したくないこと、伝えたいこと、記者に配慮してもらいたいことなどを自分の中でよく整理してからメディア取材に対応しましょう

<参考資料>
Angles and OnRoadMedia. "Engaging with the Media: Interview Checklist.” https://www.angles.org.uk/wp-content/uploads/2019/08/Interview-checklist-2019.pdf (英語)