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ひとりぼっちの夜でも オードリーのオールナイトニッポン in 東京ドームの感想

日曜の夕方、東京ドームへ向かう。
ずっとずっとこのライブが待ち遠しかったが、「今日でこのワクワクが終わってしまうのか」というどこか寂しい気持ちも押し寄せてくる。

東京ドームに着くとそこにはリトルトゥースの理想郷のような空間が広がっていて、その場所でお笑い史・ラジオ史の大きな1ページに刻まれる伝説を目の当たりにした。


開演前

早めに着いたのでドームの周りを少しウロついていると、そこらじゅうで揺れるラスタカラーののぼりの写真を撮る人で溢れていて早くも圧倒される。
ドームの外でもBGMとしてビタースイートサンバが流れていて不思議な感覚だった。いつも耳元のイヤホンでしか流れていないあの曲が広大な空間で流れていて胸が高鳴る。

そんなのぼりの前に見覚えのある黒縁メガネのおじさんがいた。おじさんはディズニーランドのミッキーのように色んな人と写真を撮っている。
よく見るとそのおじさんは『オドぜひ』のコンパ王、石黒さんだった。
石黒さんがミッキーと同等になるのはこの空間だけだろう。オードリーのパワーに震える。

BiSH解散ライブ以来の東京ドーム、中に入るとその広さと風格にため息が出てしまう。
こんな場所でラジオをやるなんて馬鹿げている。

座席に向かう途中でアフロの男性とすれ違う。ビックスモールンのゴンちゃんだった。昔から何度も何度もラジオ内で登場する重要人物はグッズを手に抱え、今から始まる盟友の伝説にワクワクしている様子だった。
その後ろをトムブラウンの布川も歩いていた。とんでもない人数がいるのにこの遭遇率、これもオードリーのパワーだろう。

オープニング

BGMで流れていた『よふかしのうた』のボリュームがグッと上がり、ドームが暗転する。どよめく5万人のエネルギーが凄まじかった。

テーマソング『おともだち』にのせてオープニングアニメーションが流れた。若林と春日にどこか似た少年が成長し、辛いことや悲しいことを抱えながらも2人で肩を並べてドームに向かうというたった数分間の映像だったが、早くも泣いてしまった。
高校生の頃から8年間ずっとこのラジオに支えられ、今こうしてどうにか日々を過ごすことができている。
色んな境遇の人々が同じようにこのラジオを聴いていて、実際にドームの座席を埋め尽くしている。
ずっと聴き続けてきて良かったし、これからもずっと聴き続けようと心に誓う瞬間だった。

いつものラジオ

センターステージにポツンと用意されたブースで、2人が最初に繰り広げたのは毎週聴いているいつものラジオだった。
オープニングトーク→若林フリートーク→春日フリートークという流れも普段通りで、いつも耳で聴いている様子が目の前で行われていて不思議な感覚だった。

2人のフリートークは普段よりも何段階かギアが上がった内容で、ドームにふさわしい最高のトークだった。
自転車でウーバーイーツをやっていた若林、ポークライスを再現した春日、どちらも過去のラジオを聴いてきたからこそ面白さが何倍にも膨れ上がる。

ドームでも普段通りのラジオが聴けてとても嬉しかった。
これは東京ドームでの『オードリーのオールナイトニッポン』であり、リトルトゥースが望んでいたのはあくまで2人のいつも通りのトークだ。

スター

私がラジオ前日に投稿した記事で以下のように書いていた。

ライブ前に星野源ファンの妹に「出るかもしれないから楽しみ」とLINEを送ったら「だめです」「出ないってラジオで言ってたし」と返ってきた。

強火のファン

ラジオで出ないと言ってたなら本当に出ないんだろう、と余計な期待を事前に消すことができて良かった。
しかし現実は期待を超える。

若林がオールナイトニッポンにゆかりのある曲にサンプラーで過去の名言を挟むというDJプレイを披露していた時だった。
TRFの『survival dAnce』が終わり若林がターンテーブルのスイッチを叩くと、流れてきたのは星野源と若林の楽曲『Orange』のゆったりとしたイントロだった。

「え?」「マジ?」あちこちで声が漏れる。
でも本人が出ないと言っていたんだから出てくるはずはない。そう思った時に若林の背後にゆっくりせり上がってきたのは星野源だった。
驚きと喜びでどよめく東京ドーム。私は驚きすぎて声が出なかった。
今や日本が誇るスーパースターである星野源はもう生で観られることはないと思っていた。そんな星野源が今数十メートル先で歌っている。

「久しぶりだな東京ドーーーーム!!!!!」
自然体でそう呼びかける星野源の雰囲気は一気のドーム中の客の心をつかみ、一気にドームはライブハウスへと様変わりした。
『Orange』に続いて過去に若林が星野源ANNに出演した際にラップを挟み披露した『Pop Virus』が始まる。
何度も何度も聴いた歌声がドーム中に広がり、ドームバージョンの若林の冴え渡るラップが笑いを呼ぶ。

凄まじいオーラを残し舞台を去っていく星野源。
あっという間の奇跡だった。
たった2曲で溢れるような感動を届けてくれる姿はスーパースター以外の何者でもなかった。

星野源の登場を知った妹

しんやめ

星野源の衝撃が残るドームに『浅草キッド』のピアノの寂しげな音が響く。「もう終わってしまうのか、、」とドームにいる人の多くが思っただろう。
いつも番組の最後に行われるコーナー「死んでもやめんじゃねーよ」が始まった。

時々試しにメールを送ってみたことがあったが、常連のハガキ職人の壁が分厚く当然のように不採用。
ドームでも聴き馴染みのあるラジオネームが続き、ラジオネームが読まれるたびに「またあの人だ、、!」と客席が少しザワっとしていた。

去年あたりから定期的に読まれていた“カラテカ矢部が軽すぎる”ことをイジったネタが個人的に好きで、ドームでもその流れのネタが読まれていてめちゃくちゃ笑った。ドームにふさわしい凄まじいクオリティ、映像化したら真っ先に確認したい。
下ネタがメインのこのコーナーで、下ネタ無しで尋常じゃないウケ方をしていて少し感動すらしてしまった。

このコーナーにメールを送るのはやめよう、と思ってしまうほどの名作の連発に圧倒された。
5万人が自分のネタに対して笑っている時の感覚、味わってみたいものだ。

漫才

中央の舞台にサンパチマイクがせり上がり、会場が沸く。武道館ライブ同様、ライブの締めくくりは漫才だ。

スクリーンの中央が左右に割れ、その間から黒いスーツとピンクベストの男が現れる。
その光景が2008年のM-1決勝で2人が出てくる時の様子と重なり、鳥肌が立った。
当時小学生だった私に「この2人は将来東京ドームで漫才をやるんだぜ、意味わかんないよな」と教えてあげたいぐらい、ドームに立つ2人の姿は勇ましかった。

当時衝撃を受けたズレ漫才に始まり、ラジオ内であったコナンの映画のノリを軸にうねるような笑いを生み出していく。
学生時代からやっている春日の『Tomorrow never knows』の替え歌でさらにギアが上がり、お客さんへの感謝、若林への感謝、春日自身への感謝の歌が続いていった。
2人の今までの人生と15年間のラジオをかき集めたような特別な漫才は30分間ずっと面白くて、本当にドームに来られて良かったと改めて感じた。

余韻

17時半に始まったライブがあっという間に終わってしまい、スマホを開くと21時を過ぎていた。
21時終演という事前発表でトイレが若干心配だったが、尿意なんか感じる暇もないぐらい最高の3時間半だった。

ドーム特有の強風が吹く扉から外に出ると、空は真っ暗だった。
前職の同期がリトルトゥースだったことをふと思い出し写真を送ると、すぐに同じ景色の写真が返ってきた。あの空間に知り合いもいたことを知り、少し嬉しくなる。

おっ

ドームの写真をインスタにあげると、今までにないぐらいの人数からのリアクションがあった。
中学の同級生の春日からもメッセージがきた。春日もリトルトゥースらしい。
それだけオードリーは人気で、それだけ貴重なライブを生で観ることができて本当に嬉しい。

SNSでも多くの芸能人が感想を呟いていた。
なかでもトムブラウンみちおの『でも目指してはいけない』という感想が特に良くて、心の中で何度も反芻していた。
憧れとリスペクトを抱きながらも、1人の芸人としての悔しさと覚悟を感じさせる感想。色んな芸能人の感想の中で一番心に残った。
芸人の立場であんなものを目の前で見せられたらおかしくなっちゃうよ

孤独な夜に自分の部屋でひっそり聴いていたあのラジオにこんなに感動させられるとは当時思ってもいなかった。
恩返しにしてはあまりにもお返しの量が多すぎる。

月曜日から色んなラジオなどで色んな人たちがこのライブの感想を述べていた。
そして今夜はいよいよ主役であるオードリーのオールナイトニッポンだ。

あのライブを共有した5万人はまたそれぞれの生活に戻っていて、今週からまたラジオを聴く時はひとりぼっちだ。
ひとりぼっちの夜でも、あの2人のバカ話が聴けると思うと活力が湧いてくる。
今夜の放送を聴いたらまたあの感動が走馬灯のように甦ってくるだろう。
辛い時も苦しい時も、私にはオードリーのオールナイトニッポンという心の支えがある。

本当に素晴らしいライブをありがとう!!!!
一生忘れられない大切な思い出になった伝説のライブだった。

脳内の引き出しが足りないので外付け脳みそとして活用しています。