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無糖な家族 5/26の日記

妹の一人暮らしの家の内見について行った。
ついて行ったというより母から「来れば?」と野原しんのすけさながらに誘われ渋々行ったというのが正しい。

妹は今年から社会人として都内の会社に勤めており、今は埼玉の実家から2時間近くかけて通っているそうだ。
私だったら即刻引っ越しを決めて入社前に引っ越すに違いないが、そうしないのが妹のマイペースさを物語っている。

現地集合らしく、10時にココねという文言とともに送られてきたアパートの住所を頼りに知らない街をひたすら歩く。
知らない街を歩くのが大好きだから、内心誘ってもらって嬉しいという気持ちが少しあった。
普段全く乗らない路線の電車に乗れたのもかなり嬉しい。

目的地に近づくと母親と妹の姿が見えた。手を振る母、ちらりとこちらを見るだけの妹。
都内で家族に会うのは不思議な感覚だ。
アパートの鍵を開けていた不動産会社の方が私に気付き、「本日はよろしくお願いいたします」と深々とおじぎをされてしまった。
「お世話になります、すみません」と私も頭を下げる。家族の前で社会人の振る舞いを見せるのは恥ずかしい。

ぞろぞろと部屋に入ると、立地と家賃にしてはほとんど欠点のないキレイな部屋だった。
独立洗面台や浴室乾燥、インターホンも付いている。
母親と私が日当たりやセキュリティなどについて不動産の方に質問をしていく中、妹はずっと棒立ちでギョロギョロと部屋を眺めているだけだった。
私が「写真撮っときなよ」と声をかけると、そっとスマホを取り出し何枚か写真を撮ってすぐにしまった。なんたるマイペース。
不動産の方も「正直どう、ですかね、、?」と困りながら妹の反応を伺っていた。
母と兄がついてくるというだけでもやりづらいだろうに、居住者本人が無言というかなりのハード案件だっただろう。お手数をおかけしました。

アンタの部屋の内見なんだけどなと思いながら部屋をウロついて内見終了。
「本日はありがとうございました」とまた深々と頭を下げられ、不思議な家族を見送ってくれた。

私「終わり?」
母「終わり。」
わずか15分で要件終了。私はまだ近かったからいいが、母と妹は埼玉から来ているのに1軒見て終わりかいと少し思いつつ口には出さなかった。
晴れ渡る午前中の空の下、3人で駅へ向かう。
駅前はチェーン店なども多い商店街で、かなり住みやすそうな場所だなと思った。

改札の前で母が「どうしようか?」と言った。
さすがにこれで解散も味気ないので、私が「コーヒーとか飲みたい気分かも」とそれとなくアピールし、駅前にあったドトール珈琲農園に入った。

ドトール珈琲農園は普通のドトールよりもリッチな雰囲気で、私たちが通された席もソファがフカフカだった。
私がアイスコーヒー、母と妹がアイスカフェオレを注文し、待ちながら部屋の話になった。
私としては申し分ない部屋だったが、母親的に防犯面が心配なようだった。窓と通路が近く、外から部屋や洗濯物が見えてしまうのが気になるらしい。
母が「どうなの?」と妹に迫るも「うーん」と呟きながらニヤッとして終了。可なのか不可なのかだけでも教えてほしい。

「アイスコーヒー2つとアイスカフェオレですねー」と注文の品が届いた。私がアイスコーヒーで母妹がアイスカフェオレ、品数が間違っている。
母親は嫌な顔一つせずアイスコーヒーを受け取っていた。私ももう一つのアイスコーヒーを受け取る。「砂糖やミルクはお付けしますか?」と尋ねられ、「「大丈夫です」」と声を揃える。
家族揃って昔から無糖派だった。
アイスカフェオレがアイスコーヒーになるぐらい母親にとっては大した問題ではないようだ。

初期費用の話、一人暮らしの話、ロッキンの話、主に母と私で色んなことを話した。
母はDa-ice目当てで1人でロッキンに行くらしい。50代半ば、なんてバイタリティだ。

無糖のアイスコーヒーを飲み干し、電車に乗り、渋谷駅で私が乗り換えだったので解散した。
この時点でまだ12時前、太陽は相変わらず輝いていた。
家の最寄り駅を出て、まいばすけっとで三ツ矢サイダーを買った。
家に帰り、氷を入れた小ビール用のグラスに三ツ矢サイダーを注ぐ。爽やかな香りと弾ける音が気持ちよくて夏休みのような感覚になった。

昔から妹はマイペースだし、昔から母も私もコーヒーはブラックだった。
冷たい三ツ矢サイダーを身体に流し込みながら、家族のことを考える不思議な時間が流れた。

脳内の引き出しが足りないので外付け脳みそとして活用しています。