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銭湯と薔薇のタトゥー

東京に引っ越してきてから、銭湯によく行くようになった。

就職に伴い引っ越してきた先は古着屋とカレー屋がひしめきあうサブカルタウンのすぐそばで、近所にある銭湯がめちゃくちゃ綺麗で気に入っている。

外装はいわゆる下町銭湯だが、脱衣所も浴場もとにかく白くてピカピカ。生乾き臭とか湿った床とか銭湯の嫌な部分がとことん排除されていて、銭湯ミシュランがあったら☆2はカタいのではないかと思う。銭湯ミシュランマンは頭に水玉の手ぬぐいを乗っけているに違いない。無いけど。

そんなサブカルタウンのそばにある銭湯には、古着屋とカレー屋のごとくジジイと若者がひしめきあっている。それにより客の平均年齢がぐっと下がるため、「ルールを守らん小僧は出て行け」的な雰囲気が薄くなっているのもとても良い。

ある時、私が湯に浸かっていると緑髪のおじさんがガラガラと戸を開けて入ってきた。顔面はほぼ大槻ケンヂ。筋肉少女帯。髪型もほとんどライブの時のオーケンだ。
そんなオーケンの二の腕あたりにはバラの茎が腕をぐるりと一周するタトゥーが入っている。私はタトゥー賛成派なので率直に「カッケ~~~」と思ったし、緑髪と茎の緑で全裸なのにセットアップじゃんと熱めの湯に浸かりながらカスツッコミをかましてしまった。

そんなおっさんが緑の髪を洗ってる間に私は湯から上がり、脱衣所へと向かった。
もう帰って寝るだけだから髪ビチャビチャのままで帰りて〜って毎回思うけど、もう24歳なのでなんとなく髪を拭いてから出る。ドライヤーは2分20円で使えるが、帰り道の風は0円である。ポカポカでホカホカなまま、5年前に実家からパクっってきた父親のサンダルでパカパカと自宅へと向かった。

数日後の朝、仕事に向かう駅のホームで緑髪のおじさんを見かけた。緑髪のおじさんと書いたが、ベンチに腰掛けるおじさんの髪は深〜い青色になっていた。
日本海並みに真っ青な髪へと変貌したおっさんの表情は、どこか寂しげだった。

もしかしてこの人、感情で髪色が変わるタイプの人なのか?と思った。銭湯に入るというホクホクの感情が髪色を緑に変化させ、仕事に行きたくないという“悲”の感情がおじさんの髪色を青にさせているのではないか。
エッチなお店に入る時は真っピンクで、店から出てきた時は真っ白かもしれない。ってことは本物のオーケンは常に賢者モードってことか?

次おじさんに会うときには髪は何色になっているだろうか。金髪で笑顔のおじさんに出会えるといいなと思いつつ、金髪で笑顔のおじさんってめちゃくちゃ怖ぇ〜とも思った。

脳内の引き出しが足りないので外付け脳みそとして活用しています。