小説なんて書けないよ

私は何がしたいんだ。何ができたんだ。
今私は焦りと不安の渦の真ん中、かろうじて水面に顔を出して洗濯機のようにぐるぐると回っている。こうして文章を書いたって、あの子の言い回しには敵わないしあの子みたいなカリスマ性なんてないし好かれないし失言もするしもう苦しいことだらけだ。じゃあなんで書いてるんだ。もう本当にわからない。わけがわからない。

この数日間で素晴らしいものをたくさん浴びた。ミスiD2022のファイナリストは明後日発表される。それに向けた追い込みの期間、みんながみんな最後の力を振り絞って自分をアピールしている。溺れそうだ、本当に苦しい。なんでこんな素晴らしい人たちの中で私はただただもがくしかできないんだ。なんだこの状況は。

私に何ができたんだ。私に何ができるんだ。
小説を書くことか。エッセイを書くことか。自分を見てと叫ぶことか。泣き喚いて一瞬でも振り返ってもらうことか。本当に無力だ。やりたいことがあって、伝えたいことがあって、ミスiDはそのために出ていて…なんて美しいことを私は一度でも言えただろうか。取って付けた「なりたい自分」、取って付けた「目標像」、そんな付け焼き刃で戦えると思ってるのか。バカじゃないのか。周りを見てみろよ、隣にいたはずのあの子の背中、もう米粒みたいなサイズになってるぞ。

苦しい、悔しい。あの子が選ばれなかったとき「なんでだよ」と心から思った。でも私は気付いている。一番「なんでだよ」って思ったの、自分が書類選考で落ちたときだよね。結局は人のことなんて、自分のことに比べたらこれっぽっちも考えてないんだよね。わかるよ、自分が一番だもんね。それでいて悔しいなんて言って、自分が選ばれて証明してやるなんて、やっぱり自分が選ばれたいだけじゃないか、クソ。

嘘なんかこれっぽっちもついていない。言葉を諦めたくなかったのも本当だ。文章を愛せないのも本当だ。私は私の気持ちをずっと言葉にしている。辻褄が合わないなんていつものことだ。毎分毎秒変わる私についていけないのは私も同じ。嘘なんかこれっぽっちもついていない。

私に何ができる。この私に何ができる。
小説なんて書けやしないよ。頭の中は不安と焦りと妬みと嫉妬でいっぱいで平和な物語を組み立てるスペースなんて残っちゃいないよ。そんなときでも書けないといけませんか。作品がないとダメですか。可能性ってなんですか。可能性ってなんなんですか。
「私、たぶん可能性いっぱい持ってます。いっぱい持ってるけど今は見せきれません。余裕がないからです。」ああ、小林さんが言ってたのは私、私のことだったんだなあ。

悔しい。まだ終わっていないのに周りの素晴らしいものと自分を比べてずっと悔しい。情けない。言葉で戦うならこの文章も戦いの一部でしょってミスiDタグを付けて投稿することが情けない。苦しい。引っ越しだって○○と女子だって本作りだって全部全部本気で取り組んだのに「何もできていない」と感じる自分が苦しい。評価なんてされなくたって自分で自分を認めてあげようよ?うるさいな、私は「死後でもいいから評価されたい」なんてツイートする女だぞ、舐めるなよ。

小説を書きたかったな。書くと言ったんだから書きたかったな。でもさっきカフェの前で私、「小説書かなきゃ」ってため息ついたんだよ。文章は愛せないけれど、私は自分の作品を心から愛しているはずなのに。書きかけの愛しい小説を前にしてため息をついた私に絶望した、ってこれも書けない言い訳ですか。そうですか。嫌だな本当に。どうしたらよかったんだろう。

もうファイナリストのページはできているんだろうか。最終選考でこれをやりたいと言える人が本当にかっこいい。最終選考のことなんか、これっぽっちも考えられない。たまに頭をよぎっては慌ててかき消している。考えて考えてまた名前がなかったらどうするんですか。私、名前がなかったら、どうしたらいいんですか。

昨日ツイートに「私から何かを奪うなら返り討ちに遭う覚悟で奪ってください」と書いた。「もう私から何も奪わないでください」とも書いた。怖くて怖くて仕方ないのも、恐怖から噛みつくことしかできないのも、今の私の本当の気持ちだ。奪うなとも思うし、奪わせないとも思う。向こうはそんなつもり少しもないだろうに、私は何と戦っているんだろう。

名前がなかったらどうしようと思うのをやめたい。復活戦のために急いで予定を空ける自分なんて消えてなくなればいい。強くあれよ。地に足をつけてくれ。でもやっぱり、弱くて地に足のつかない私って、私そのものなんだよなあ。ポジティブにもネガティブにもなりたくないよ。今と向き合えればそれでいいよ。私は私でいたいよ。私でいさせてくれよなんて、絶対に思いたくないよ。

私は生き抜きます。小説が間に合わないならできることをやります。できることがないなら息をします。必死に必死に息をします。ここにいるんです。存在しています。靴紐だって結べるし、傘だってさせます。私はこれからも私として生きることができます。見てください読んでください。私をどうか、見つけてください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?