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【翻訳】ATEEZ 〈Answer〉分析レビュー:心臓を打ちつける青い熱の逆説

原文:토비 레코드 - 에이티즈 'Answer' 분석리뷰: 심장을 때리는 푸른빛 뜨거움의 역설 (2021.9.14)
(訳注)訳文中の歌詞の部分には〈Answer -Japanese Ver.-〉の歌詞を使用している。

まさに“胸が壮大になる”。単にATEEZの音楽が力強くスケールが大きいからといって、そのすべてにこのような特色があるわけではない。つまるところ、この曲は何故に魅力的なのだろうか。
その答えとして、〈Answer〉のホンジュンによる次のラップ詞がこの曲の魂のすべてを含蓄しているといえよう。

Oxygen, Fire 二人で青い光 浮かべよう

情緒の共存、扇動性と参加性のシナジー、音楽的な色の対比など、それぞれ酸素にあたる数多くの要素が一曲の中で結合し、猛烈に燃え上がる。

〈Answer〉:逆説のシナジー、シナジーの美学

(1)激情と節制の共存

乾杯しよう like a thunder 君を注いで 溢れるほど
もっとグラスを上に 世界中から見えるように

胸を打つEDMトラックと悲壮なメロディが出会い、熱いエネルギーとして爆発する。アルバム4作にわたり荒野と大海に対峙してきた彼らの物語は、飾り気のないエスニックさとして表れる。この進取的な目的性と孤独な情緒の共存は、分離感よりも絶妙なシナジーを生み出している。2つの要素は、安定的な調和を超えて互いを激情的に極大化する相互作用を働く。その交差性ゆえにこの曲には、単なる強さや熾烈さで終わらない“扇動的な”感性の副産物が生まれているのを感じることができる。

Young and free 世界は嘲笑う
答えのない暗闇 僕ら照らす

このような“感じられる感性”はもちろん単なる感じ方ではなく、音楽的に演出された出典がはっきりと存在する。そのうち、メロディと歌詞は〈Answer〉の主要な情緒たる情熱が最も直接的に表れた要素である。歌詞は「火/炎」「燃え上がれ/Burn」といったキーワードを強調し、「乾杯しよう」「さあ 準備はいいか?」「見えているのか」など決然とした言葉を吐き出す。これらの歌詞はそれに似合うメロディと合わさり、その語調がさらに強調される。例えば、「さあ火を灯せ」は刺すようなポイント区間として、「Let's burn」は爆発音のようなシャウティングとして使われ、「〜か」の語尾で終わる歌詞は曲中で最も高潮したハイライト区間を飾る。

ATEEZはこれほどにも熱く渇望を歌う。「世界中から見えるように/僕ら照らす」過程は過酷だが、この曲では目的への熱望によって克服する。また、その困難ながらも価値ある旅路をともにするようリスナーを参加させること(「熱いか join us/僕のそばに来てよ」)までが曲のメッセージの完成である。内に秘めた煮えたぎる情熱がリスナーの心までも動かそうとする段階的過程において、この参加性は説得力を獲得する。手に掴めない何かに対するこの燃えるような切迫感は、新世代をターゲットにした日常的で個人的な感性よりは、ジャンル物の主人公に近いドラマ的感受性を反映している。

燃える太陽と押し寄せる波
僕ら何も感じない

このような歌詞はメロディによって一層輝く。ATEEZの曲の多くがEDMであり、中にはドロップのある曲もない曲もあるが、〈Answer〉はドロップのない曲の中でも特にメロディックさが際立つ代表的な曲である。この曲にはイントロと間奏がなく、コーラスを含む全区間が情熱的なメロディで満たされ、休まず疾走する。

ビートなしにコーラスから入る構成は、すなわちメロディとボーカルの自信である。インパクトで主張する1小節「乾杯しよう」で2名のボーカルメンバーが決意に満ちた序幕を開けると、「I got the answer」という信号弾とともにラッパー達がピアノ1台の寂漠とした伴奏の上にヴァースを乗せる。続けてサブボーカルメンバー達は、隙間風が吹く空間感の中央で感情を加熱しビルドアップする。ドラマチックに仮声を行き来する「燃える太陽と〜」のパートから、思いっ切り重厚に正拍子を打つ「もっと奥に〜」のパートに移動することによる対比の効果は、その役割を忠実に果たしている。

コーラスの旋律はキャッチーながらも感性的である。拍子を空けてから強く入っていく「乾杯しよう〜」のパートは、メロディを単独でイントロに使うほどのインパクトがある一方で、感情の密度を換気してくれる適度な空間もある。そのためスケールの大きさよりも安定して整った印象を受けるが、メロディが端正な代わりに何層にも重なったコーラスが充満感を完成させる。ポストコーラスにおいてこそスケールが強調される。炎が燃え盛るように躍動的に上昇する合唱の後に、ハイトーンのポイント(「ほら ほら〜」「世界中から〜」)を順に印すムービングが印象に残る。3節の変形されたコーラスは、このポストコーラスの重厚な感性を一層燃え上がらせるパートである。

見えているのか 熱い眼差しと
歓声の渦が 世界鳴り響かせる

しかし、闘争的なメロディに対して編曲は壮大というよりむしろ冷たく不安である。ピアノとEDMの足し算が具現するこの冷たい叙情性もまた逆説的なシナジーの一部である。歌詞とメロディに加え、この曲のミュージックビデオやステージに見られるイメージも赤く熱い色がメインだが、銀色を帯びた荒涼なサウンドがこの熱気を中和してくれる。

感情的に重厚な曲を作るには、オーケストラやエレキギターのような叙情的なリアルサウンドを活用する方法もある。ところが〈Answer〉はトップライン自体がその重量感を直観的に仕上げる曲であるため、編曲が過度に感性的でオタク的(?)であったら曲に負担がかかっていただろう(圧倒感が必要な競演プログラムの〈キングダム:レジェンダリーウォー〉において上記のような編曲を使用した)。代わりにこの曲ではひんやりとした人工感が感じられるEDMシンスが主に使用され、感情の過剰を節制し鋭い快感を加えている。この組み合わせは演劇的な色を抑え、代わりにすっきりとして大衆的である。むしろ、溢れ出す爆発力を何とか抑え込もうとする表現を上品に具現したという感想も抱く。

もちろん、この曲の主要なサウンドは現在世界的に最もトレンディな種類の技法である。しかしこの場合は、曲を飽きさせずに完結する役割まで担っているという点で、この曲だけの新たな魅力を見出すポイントとなる。

(2)時代性の交差 ✕ 地域性の相殺

終わりは始まりの合図
記憶を足先から say my name

〈Answer〉はEDMとトラップヒップホップを自然に行き来しながら、浮かないトレンディサウンドを基底に敷く。メロディにはこのサウンド基調にぴったり合った区間と、いくらかレトロな感性を見せる区間がどちらもある。

ある人はこの曲にグローバル市場の現代的なポップ文脈を難なく聴き取るだろうし、ある人は2010年代KPOPの旋律的な趣を感じるだろう。もちろんメロディもポップだという人もいるだろうが、それはどこに集中して聴くかによって変わるのだから…ともかく、こうして〈Answer〉は海外市場と国内市場の、そして前の世代と現役世代のアイドル音楽の中心部のどこかで、周囲の皆の特色を少しずつ取り入れた位置にいる。時空を超えて美味しいとこ取りをするのはKPOPの定石だが、“チャンポン”よりも“フュージョン”に近い適切な配合が際立つ曲である。

ATEEZはデビュー初期から、国内より海外ファンダムが強いグループとしてその名を馳せた。全員韓国人メンバーで韓国人プロデューサーが作曲する純度100%の国産(?)アイドルにも関わらず、グループ名や音楽ではなく韓国より外国で人気だというニュースが先に逆輸入されたのである。そのATEEZが初めて国内で勝負所を見た曲が〈Answer〉である。海外ファンばかりが熱狂していた彼らの音楽のどこに国内ファンが郷愁を感じたのかは、歌詞とメロディの感性に代表させて既に説明した。

確かにKPOPのジャンル的根幹が完全なるオリジナルとは言えないまでも、感性の力が混ざった途端、それは否定できないアイデンティティの一部となる。現在は多くのアイドルの音楽スタイルが国際標準を追いかける趨勢だが、KPOP古株(?)達の胸を高鳴らせるものとそうでないものを分けるポイントは、トレンドと無縁な場所に変わらず存在する。言葉で説明するのは難しいが、時流をセンス良く反映しながらもこのポイントをキャッチできるのかという問題に答えていくことが、大衆的KPOPの現代化であり世界化そのものであろう。〈Answer〉はまさにこの問題に対する“答え”となった曲である。ATEEZから二度とこのような曲が出るのだろうか…とにかく名曲だ。

Details: 曲をドラマにする方法の結集

〈Answer〉において、視聴覚的完成度のために考慮されている様々なポイントには次のようなものがある。

(1)ボーカル配置

8名のメンバー構成は決して少ない数ではない。そのためメンバーが各自の明確な役割を持ち、それをパートの配置に表すことで鑑賞のアプローチが容易になるが、ATEEZは以下のようにフォーメーションのバランスが安定的なグループであり曲中でうまく活用している。

ラップ高音域→ホンジュン
ラップ低音域→ミンギ
ボーカル高音域→(メイン/リード)ジョンホ、サン(サブ)ウヨン
ボーカル中音域→(中高音域サブ)ソンファ、ユンホ(中低音域サブ)ヨサン

〈Answer〉はこのようなアプローチ性がとりわけ高い曲である。メンバーのパート配置は一切の意外性がなく定石通りである。区間ごとに最適なメンバーが適時に登場し、その役割が重複せずに分布しているためメンバー全員が安定して光を浴びている。もちろん類似パートを複数名が代わる代わる歌うのもそれなりの魅力があるが、この曲の方法は8名を各自のキャラクターに分化するドラマ性を演出する。
実のところ、ATEEZはポジションがはっきりしているだけにポジション間の互換と代替が難しく、多くの曲でこのような複雑でない構成となっている。しかし中でも〈Answer〉でこの方式が一層輝きを放つ理由は、この曲が他の曲に比べて特出して感情の起伏が明確であり、その中にメンバーの個性が構造的に配列されているからである。

〈Answer〉のメンバー別ポジショニング

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高音域での自在な感情表現が必要なこの曲では、メインボーカルメンバーであるサンジョンホが中心的な役割を担う。サンの場合は本来のポジションに対して配分が小さいものの、イントロとアウトロ、ブリッジなど重要なポイントで登場し、曲の情熱的な性格を築く上で大きな役割を果たしている。特にイントロでは特有の金属感のある鋭い声色と演技力が際立ち、強烈なインパクトを生んでいる。ジョンホは各コーラスとハイライトなど展開が強調される全区間で爆発的なボーカル能力を発揮し、スモーキーであると同時に清明なアンビバレントさを描く。優れた音域と声量は上に伸びながらも空間を響かせ、毎瞬間の燃えるような眼差しがそのエネルギーを敷衍する。ボーカルの圧倒的な配分量を担当する割に高音以外の平凡な音域のパートがひとつもないためハードかもしれないが、それだけに最も力量が露わになる曲でもある。

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ラッパーのホンジュンミンギはペアで登場し、互いのキャラクターの違いを調和へと昇華する。彼らは1、2節のバースとブリッジに登場し、各立場に合った異なるトーンを聞かせるが、そこで真っ先に音域差が目につく。独特の低音域メンバーであるミンギの圧倒感は、曲の低い音域を満たすだけでなく、特有のカリスマによって雰囲気を加熱する役割までも消化する。ホンジュンはスピーディーなラッピングはもちろんのこと、中高音域のボーカルも問題なくこなすスペクトラムを発揮してメロディラップを繰り出す。また、ミンギがシックでねっとりしたジェスチャーとフィジカルで曲の重々しいイメージを作り出す一方、ホンジュンは鮮やかで繊細な表現力でヴィヴィッド感をプラスする。視聴覚的に表れる彼らの克明な対比は、それぞれ異なる形のエネルギーを発散し、曲展開の各段階をリードする

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ソンファユンホはグループで唯一音域互換が比較的容易なサブボーカルペアで、柔らかなボーカルが必要なプレコーラスを1、2節に分割し同等に担当する。しかし同時にステージ上のポジションの違いもはっきりと有し、各々の存在感を示している。ソンファは各コーラスの始まりを担う中心メンバーで、ジェントルな雰囲気の声色と動き、そしてボーカル・ダンス・ビジュアル(コンセプト特化)の安定したバランスを誇る。ユンホは全ダンス区間のセンターとしてパフォーマンスを力強くリードしてフィジカル的強みを活用し、ボーカルでは低音や正拍子を叩く重量感を聞かせることにフォーカスする。イメージ面ではソンファが強烈でユンホが温和な一方、この曲では反対の役割に近く、互いに異なるカリスマを見せる

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ウヨンヨサンは曲中の配分は比較的小さいが、少年美に代表される彼らのイメージに合った役割を果たしている。二人は正反対で、ウヨンは最も動的な、ヨサンは最も静的な情緒を表現する。ウヨンは唯一のハイトーンサブボーカルかつ軽やかなイメージのダンサーで、短いパートに躍動的に込めたパフォーマンス・表情演技とともに、全プレコーラスとポストコーラスの鋭利なポイントをハイトーンでマークする。ヨサンは曲が最も静まる2節導入部を落ち着いたトーンで歌う。グループのカリスマを中和する幼いイメージと共鳴するような声色を持つメンバーで、ステージ上の比重が希少性のある(?)点までもが〈Answer〉中のヨサンの可憐なキャラクターを仕上げるだけに、ぴったりな一発を消化しているのが埋もれず印象に残る。

(2)パフォーマンス

個人的感想として、ATEEZのパフォーマンスは〈Answer〉の前作〈Wonderland〉までカル群舞を目指していたが、〈Answer〉を起点にメンバー個々の感性と表現法にかなり依存する方向へと変化したことが感じられる。この曲は特にメンバーがそれぞれ少しずつ異なる振付をこなすことが多いため、このようなパフォーマンスだけの賜物である劇的さがとりわけ際立っている。また、音楽放送の個人カメラで確認できるように、メンバー全員が曲の全区間で途切れずに演技する高い集中を示す点で、没入を要するコンセプチュアルな曲の特性を200%充足している。

〈Answer〉のパフォーマンスは曲が転換する各区間を明確に区分し、ボーカルの配置と同じく忠実に曲を形象化する。具体的には、ヴァースのラップではメンバー全員がラップのフロウに合わせて比較的フリーな動作を行い、静かに転換するプレコーラスでは一体で動いてひとつの形象を作り、本格的にパワーが入るコーラスからは皆が同じ動作で群舞を合わせるといった方式である。

このような曲の展開は、直線と円形の動作の混用によっても表現されている。多くの男性アイドルパフォーマンス曲の振付が直線的な特徴を持つように、この曲でも角度が必要な部分はしっかりと活かすものの、〈Answer〉は特に曲の叙情的特性を曲線的な動きと様々なターン動作を用いて表現している点が印象深い。BPM98のこの曲は、パフォーマンス曲としては決して速くはない。速度が空けてくれる聴覚的余裕を、繊細な拍子の分割、流麗なターンと壮大な大型円形の活用などが代わりに満たしている。

また、曲には繰り返し区間があっても振付には繰り返しがないという点も、ステージを最後まで鑑賞する楽しみを与える。1、2節のプレコーラスとコーラスの場合、曲の変奏はないが振付は異なるリズムに乗せられ、曲の流れが進んだことを確認させる叙事的方式を展開する。3節では新たなコーラスが登場し、パフォーマンスもまたこの部分で爆発的な表現をするが、これもまたこの曲が強調する叙事性の一環であり、曲と振付の双方で没入度の最高点をマークする区間である。

(3)スタイリング

衣装はといえば、フィルム・ノワール映画に出てきそうな感じをアイドル風にアレンジした上で、統一感と個性を適切に調和させた完成度において、コンセプトに対する事務所とスタイリストチームの相互満足(?)なコミュニケーションが行われたことが感じられる。この他にも安定したヘアスタイリングなどステージの完成度を高める諸要素があるが、本文ではベスト衣装ステージのリングを残すことで結びとする。

(訳注)ショー!音楽中心20.01.18の映像は日本で視聴不可のため省略

それで、心を煮えたぎらせるこの扇動的な音楽は、
リスナーをどこへと連れて行くのだろうか?
結論に至るまでの旅程は長かったが、
結局この曲を聴き終えて最後に残るのは、そのエネルギーである。

彼らの熱い意志は「答えを見つけた」と遠くに向かって進むものの、目的地はない。ただあてもなくさまよいながらも、立ち止まること、束縛するものを拒否して前に進もうと気炎を吐くことが〈Answer〉の目的性でありATEEZのアイデンティティである。
彼らが精巧に設計した世界観を一曲だけで理解することは困難だが、ストーリー全体を貫通するコアな価値だけはこの曲にも明確に表れている。自由を奪取し、あらゆる気持ちを注いで、ともに輝くことができる高い場所に行くこと。流れ者のようなこの精神は曲の至るところに火花としてくすぶっている。

〈Answer〉と収録アルバムは、ATEEZというグループの世界を形成する〈Treasure〉シリーズ5部作のエピローグである。そのため順序の上ではそれまでのアルバムを取り上げてから扱うべきだが、この曲はアルバムの流れと関係なくシングルとしてでも取り上げたいほど印象深い曲であるため別途レビューを作成した。だが、Treasureシリーズを通じて展開する彼らの武勇伝はより熱く進取的である。今後掲載するTreasureシリーズ関連記事を通じてATEEZ世界観における〈Answer〉のストーリー的意味も掘り下げてみるつもりだから、その時は再びこの曲を訪ねてもらえれば幸いである。胸に火を灯す用意のある者は誰でも、〈Answer〉とどもに青い光を浮かべよう!🌊

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