フランツカフカと建築と。ときどきメガネ
これが、わたしの思う彼のキーワード。
先日の彼に引き続き、またしても新宿ゴールデン街で仲良くなったひとりが旅立ってしまう。
フランスだかドイツだか、イギリスだったかはて。ビールがおいしいと言っていたからドイツかな?
*
今夜が最後の夜だった(らしい)。今年の秋に旅立つようなことはなんとなく聞いていたけれど、今夜がラストだったなんて。
あまりに急でわたしは残念ながらさよならの乾杯に行けなかった。
行けなかった。行かなかった。果たしてどっちだろうか。もうすぐ満月になる空を見上げながらそんなことをぼんやり思う。
風がきゅっと秋になった今日みたいな日の別れは結構こたえる。寂しさ増し増しだ。
*
メガネの男の子だった。
はじめて会った日のことはもう忘れてしまったけど、角がどこにも見当たらなくて、ぼやぼやっとしていて、つかみどころがない。そんな印象。
イジられても、ボケもツッコミもせず、かといって嫌な顔するでもなく、ただ目尻をふにゃっと垂れて酒を飲む。
弟みたいでかわいい存在だった。
建築が好きで、何かの建築展へ一緒に出かけたときの、少年でオタクな食いつきとその眼差しは、笑ってしまうくらい美しかった。
ゴールデン街に通うようになったきっかけも、木造建築の店々への興味からだったと聞いたときは「なにそれ、超クールじゃん!」と思ったし、実際そう言ったと思う。
わたしは「公園とそこにある遊具」が好きなんだけど、彼に出会って、それらを建築的な視点で見るっていう楽しさを知った。
Books are a narcotic.
I think we ought to read only the kind of books that wound or stab us.
カフカを教えてくれたのも彼。それまで読む小説はもっぱら日本の作品だったので、海外文学は彼が開けてくれた扉だ。
出会いってやつは、これだからおもしろい。
*
この夏あるマーケットで、作家の残した言葉を記したカードのようなものを見つけて、わたしは気に入ったカフカの数枚をゲットした。
彼に会ったら渡したいなーと思っていてカバンにずっと入れていたことを今思い出した。
渡せずに終わってしまったみたいで残念。
いつかまた会えたときのために、とっておいてみようかしら。
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