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読書感想文「太陽の子 日本がアフリカに置き去りにした秘密」


読書の魅力とは何だろう?

場所を選ばずに時間をつぶせて、自分の世界に入りこめるといった意見や、活字に慣れることができる、などなど。人によっては知的に見える、などの意見もあるかもしれない。

そういった意見には概ね同意だが、自分にとって読書における最大の魅力とはずばり、

「これまで自分の知らなかった世界を知ることができる」

これに尽きるのではないだろうか。

コンプライアンスにがんじがらめにされ、加工され尽くした情報を垂れ流すテレビやニュースとは一線を画す、真実に限りなく近い、活きた情報を届けてくれる。

また、SNSのような薄っぺらい情報とは異なり、一つのテーマを深淵まで掘り下げることで物事への深い洞察を得ることができる。

情報の鮮度ではこれらメディアには劣るかもしれないが、読書を通じて自分がこれまでに知らなかった知識や思いもよらなかった考え方に触れることで、読み終わった前と後では世界が少し広がったように見える感覚を得る。これが読書の最大の魅力ではないかと思う。

三浦英之著「太陽の子 日本がアフリカに置き去りにした秘密」はまさにそんな「自分の知らなかった世界を知ることができる」魅力にあふれた一冊である。

(以下、ネタバレ有り)

本作は1970-80年代にアフリカのコンゴに進出した日本企業の労働者たちが現地の女性との間に作った子供たちのその後に迫ったルポルタージュである。また、フランスのメディアが報じた日本人医師たちによる子供たちの集団殺害疑惑の真相にも迫っている。

まず、率直な感想としてこのような日本人とコンゴ人女性の間に生まれた子供たちがこれほどまでたくさん存在していたことを、はるか遠いアフリカの地で出生の経緯の複雑さによりこれほどまで厳しい生活を余儀無くされる人々がいることを知らなかった。自分だって同じように日本人をルーツに持つのにこれほどまで違うのかと、身をつまされる思いだった。

そして何より印象的だったのは、そんな厳しい環境で育ったにも関わらず、多くの子どもたちは父親を恨むことなく、父親への思いを馳せていることだった。父親に愛されたいという人間の生まれ持った欲求の大きさを思い知った。

そしてミクロで見れば家族を置き去りにしてコンゴを去った父親の無責任さが取り沙汰されるが、根底には過酷な環境での労働を強い、撤退後も真摯な対応を見せなかった日本企業の問題が浮き彫りとなった。

また、そんな日本人労働者たちとその家族の治療に懸命にあたった日本人医師たちの姿も印象的だった。まさしく自分が目指さなければならない姿だと身の引き締まる思いだった。

やっぱり本を読むとまだまだ自分の知らないことばかりだったと思い知らされる。まだまだ自分の知らない世界を見つけに読書を続けたいと思う。


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