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古傷

夢をみた。

夢の中で、私は、
かつての夫に対して、
泣きながら訴えていた。

 あの子を返して!
 どんな思いで10ヶ月お腹の中で育てたと思っているの!

ぐしゃぐしゃに泣きながら
めちゃくちゃに彼を叩いていた。
向こうに、3ヶ月ほどの赤ちゃんの遊ぶ姿が滲む。
彼は痛くも痒くもない様子で、
少し笑みさえも浮かべながら、
されるがままになっていた。

 そんなこと、たいしたことないだろう。
 面倒な女だ。
 でも、どうせすぐ忘れるさ。

そんなふうに言っているようだった。

思い当たることがあった。
息子が生まれるよりずっとずっと前のこと。
『あの子』は、今はもう中学生になった。

ああ、きっと、
あそこに傷付いた心がまだ置き去りになって
うずくまったままだったんだ。

時々まだ疼く古傷。
いつか、あのときの痛みと苦しみも
手放せる時が来るのだろうか。


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