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ムーンライト



今日は夫が歯医者で歯を一本抜いて来た。
抜歯。
帰宅後段々と痛みがやって来てそれはまるで刃物か何かでザクザク歯茎を刺されてるような痛みだと言う。
痛み止めを飲んだけれど効かず、その後はただ黙って静かに耐える人が4時間ソファに居る図。これが私なら痛い痛いと転げ回っての大騒ぎだ、痛みに弱過ぎるので。

けれど夫は違う。
本当にただただ静かに顔を歪め目をつむり、じっと居る。
いつもそう。
何が起きても愚痴や文句をあまりにも言わないので何故なのかと聞いた事がある。
言っても仕方ないのだそうだ。
諦めというよりそれは、受け止め。
受け止めて、待つ。
それがいいのか悪いのかは別として。
なのだと私は思った。
今はそれが歯茎の痛み。ザクザクと刺される痛み。
と書いたところで父親を思い出した。

私の父も、それはそれはあまりにも無口だったのでその声を思い出せないほど。違うか、思い出せないのは亡くなったのが早過ぎて私の耳の記憶から遠ざかったからなのか。どちらにしろ無口で無口でそして穏やか。内には狂気。そして愛。知らんけど。知らないけれど、多分そう。

父の手、夫の手と似てたんですよね。
初めて夫の手を見た時、
「お父ちゃん、、、!」と言ったというのは嘘だけど、思ったのは本当。
手の平が分厚くて指の腹がぷっくらしてて、寿司を握らせたらさぞ美味かろうという手。
父親、寿司職人だったからさ。
母と二人で小さな寿司屋を営んでいたからね。寿司屋の大将さ。
その手にあまりに夫の手が似てたので、あたしゃ驚きましたよ、ほんと。

時計のね、ベルトをね、買ったんですよ通販で。数ヶ月前に寿命でブチっと切れて、お金が無かったので放置。
にしても仕事には不可欠なのでポケットに。けれどそのままだとぽろんと落ちそうだったのでキーホルダーの輪っかとか付けてやり過ごす。
やっと今ちょっとだけ、多分今だけ、余裕があるのでベルト購入。いえーい。
ワイン色を買いました。もともとの色に近かったから。

嬉しい。やっとちょっとの不便から解放される。ポッケからゴソゴソ出すよりそりゃあ、左腕さっとスマートに上げてチラッと見た方が時間も素敵。到着が楽しみ。ポストにカタンと投入される予定。

ではでは。
眠りましょう、ムーンライト。









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