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チョコレート


お風呂に入っていると、よくアパートの二階の若者と一緒になる。アパートの部屋の上下で。
ガラッと扉を開く音があまりに大きく響くので、一瞬ビクつく。誰が来た!と思っちゃって。
あちらは速攻でシャワーを浴びて出るようで、私はもう少し長い。
時々機嫌の良い鼻歌なども聞こえてくるので、にやにやして聞いてる。微笑ましくて、良かったねと思って。


さっき、入浴後。
キッチンの小窓を少し開け換気扇を回し深呼吸。
冬のこれはとても好きな瞬間。
と、漂って来たのはおばあちゃんちの火鉢の匂い。
おばあちゃんちの火鉢の網の上でお餅を焼いている香ばしさ。おばあちゃんと過ごした過去は1日もないけど。母の母は会った事も見た事もないし、父の母は二度会っただけ。じゃあこのおばあちゃんというのは誰の事?
思い出すのは友達のおばあちゃん。

小学生の頃仲良くしてたヒロカちゃんのおばあちゃんだ。ある冬の日ヒロカちゃんちに行くと小さな火鉢でお餅を焼いていた。それはそれは美味しそうにぷっくと膨らんで。食べるかい?と言って海苔を巻いて醤油をつけて食べさせてくれた。古い着物を着てたっけね。着物と言っても高価なものではなくとても質素な。

その匂いが、四十年後の風呂上りのアパートのキッチンの小窓から漂う時空の七不思議。醤油の。
風が運んだまたの景色。

今日は夫が、職場で配られたチョコレートを持って帰って来たので速攻で夕食後に二人で食べた。抹茶味を夫は食べないので私がもらった。甘いものはいい。
幸せを運ぶ。食べている時、幸せ。

そう言えば、母ったら。
夜中の一時や二時まで働いていて。
帰って来て寝る前に、必ずアーモンドチョコレートを枕元で頬張っていたっけね。
一日の終わりのお疲れさんチョコレートだったんだな。私の目が覚めて見つかると、うふふと照れ笑い。

特別な食べ物だな、チョコレートって。
この世からチョコレートが
無くなりませんように。
日記。








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