見出し画像

車窓

日課を過ごすこの土曜日は
単に気まぐれな私の
よくあるものの一つに違いなかった

窓辺を白樺が流れていく
風が緑を巻き込み
所々に見える電線や
霞の間の青が
半世紀は変わらない世界の
端いっぱいまで詰まっている

ほかの人と変わらないように
電車に乗る私は
迷いのありかを隠したいから
大人だけが知らない小さなことと
誰も知らない大きなものを
大切に織り込んで
直接は目に見えないように
そのベールを下着の上に重ねている

窓の外を眺める私は
どうも昨日と変わり映えせず
濡れて滲んだ手紙を埋めに
あの山の向こうへ行こうかと
ぼんやり考えた

明日は決して経験できず
私はいつまでも今日に留まるだろう
今みたいに電車に乗って
気まぐれに今日を歩むのだ

いつか今日と呼んだ日のことを
思い出す今日もあれば
明日へと逃げようと駆け出す
今日もあった


(2016.高校2年 夏)
#詩 #創作note

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?