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ワインを日々飲むようになるまでのこと

ワインを初めて味わったのは、学生時代にアルバイトしていたフレンチレストランでだった。

当時、世間はバブル期で、個人経営のそのレストランは、一見さんお断りのスタイルだった。駐車場に車が入るとすぐにシェフがその客の様子をチェックする。ちゃんとした服装で着ていたら一見さんでもOKだが、短パンにビーチサンダルみたいな人だと直ちにお断りするように言われる。

「申し訳ございませんが、当店は予約制となっております」とか言うのだ。だから、バイトに入っても一日中お客さんゼロなんていう日も珍しくなかった。それでも営業を続けられたのは、週末などにドーンとパーティの予約が入るとか、お金持ちグループの飲食に支えられていたからだろう。いかにもバブルだ。

お客さんゼロの日のバイトの仕事は、店の掃除とグラスやシルバーを磨くことと、フランスワインの名前や味の特徴を覚えることだった。

お客さんが来ても来なくても夜10時には閉店する。店の前の看板の電気を落としたら、いつもシェフの友達がやってきて、それからシェフが作ってくれる賄いを肴にワインの味見をさせて貰うのが常だった。

そこで、ワインやチーズの味をちょっと覚えた。マコンヴィラージュやミュスカデや、キャステロブルーやカマンベールなど。鳩の肉を初めて食べたのもその時だった。

バイトでの担当は専ら接客だったが、丁度バイト仲間の同い年の男の子が調理のサポートをしていて、当時から料理に興味があった私はとても羨ましかった。

ある日シェフが「キッチンもやってみるか?」と言ってくれたことがあり、まず試しにデザートに使うプラムを切ってみるように言われた。先にシェフが切り、それと同じようにするのが課題。

しかし、これには見事に落第した。

1つ切ると「もう一つ切ってもいいよ」と言われ、もう一つ切ると「やっぱりキッチンよりホールやってもらうわ」と。とほほ。でもいつもキッチンをやっている彼が切るのと私のとでは月とスッポン。残念ながら納得の結果だった。

まあ、そんなバイト経験からワインの味を知った私だが、長くワインに接する機会がなかった。フランス料理やイタリア料理を自分で食べに行く機会は殆どなかった。手軽に行ける店が少なかったせいもあるかも知れないし、結婚した夫は、ワインの味は分からないというから尚更。

私がまたワインに触れるようになったのは、夫の赴任で海外に暮らした時だった。ヨーロッパ文化の影響を沢山受けた国だったので、車で簡単に行ける距離にワイナリーがいくつもあり、スーパーでもかなり美味しいワインが安く買えた。お呼ばれなどでワインを飲む機会も増えて、夫が私よりワイン好きになった。そのお陰で今や我が家は週に3日はワインを飲むようになり、私は数年前にワインの講座にも通って、ますますワインが好きになったという具合だ。

次には好きなワインについて書きたいと思う。