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音が聞こえないってどういうこと?当事者と一緒につくる防災の仕組みとは -第16回だれ一人取り残さない防災研究会(ゲスト:岡山大学病院 聴覚支援センター 片岡祐子先生)

みなさんこんにちは。チャレコミ防災チームの瀬沼です。

今回は、2023年10月16日に開催されただれ一人取り残さない防災研究会の様子をお伝えしたいと思います。
今回は岡山大学病院 聴覚支援センター 片岡祐子先生を中心とした研究メンバーの方にお越しいただき、難聴者の方にとって日常生活、そしてそれを前提としたときの避難・防災の仕掛けづくりについてお伺いしました。
冒頭にNHK岡山放送局が取材したウクライナの映像を見ながら、難聴者の方にとっての爆撃が耳が聞こえる人たちと何が違って感じられるのか?を対話しながら、災害時における難聴者の方の避難について考える機会となりました。


災害時にあらわになる避難弱者の存在

冒頭の爆撃の映像を見たとき、耳が聞こえる方であれば離れた場所であっても音で危険を察知し避難をすることができますが、音が聞こえない場合はその危険を察知するための情報が著しく減ってしまうということを感じました。
また、災害があった際には緊急車両のサイレンや防災無線等「音」を使って危険を知らせる手段が多い中、音が聞こえない方々は情報を得る手段が制限されてしまいます。
そうした状況から実際に東日本大震災の時には聴覚に障害を持つ方の死亡率が高かったという結果も出ています。

当日プレゼン資料より抜粋

聴覚障害の方々は体は動かせる方も多く、一見避難の時に困難は多くないように思えますが、実は避難するための「情報」にアクセスする手段が少ないことが大きな障壁になっていました。

当事者の声を聴きながら難聴者の方にも伝わる手段をつくる

そうした障壁を解消するために片岡先生たちの研究チームが取り組んだのが「Ontenna」という富士通が社会課題の解決に向けて推進するオープンイノベーション活動のチームと連携したアプリケーションの開発でした。

その際に大切にされていたことが当事者の方と一緒に開発すること

開発側や研究者だけで進めてしまうとどうしても当事者の方の声が忘れ去れてしまいがちです。そんなときにontennaの開発と同様、当事者の方の声を聴きながら、実際の生活で活用するためにどんな機能が必要なのか?何があると伝わりやすいのか?といったことから考えていったそうです。

こうした取り組みはもちろん難聴者の方に特化したアプリケーションですが、私たち自身も音声だけではなく視覚情報で伝わる仕組みがあることは安心を積み重ねることにもつながります。

既存のシステムと連携しながら日常から意識を高める

現在、災害支援や防災のためのアプリケーションは既に世の中に多くありますし、災害時に個人の方をサポートする仕組みも整いつつあります。
しかし、どんなに良いアプリを開発していても日常的に使っていなければ効果はありません。
今回の研究会で印象的だったのは、片岡先生の「Yahoo防災アプリを皆さんはダウンロードして使っていますか?」という投げかけに研究会に参加している多くの方が「No」という回答だったこと。
研究会に参加しているメンバーであっても、日常的にアプリケーションを使い、なじんでいる人は多くありません。
それが「災害」という非日常のためのものであればなおさらです。
(研究会の後、私も含めてyahoo防災アプリをダウンロードした人が続出しました)

今後は、もっと日常的に使われているアプリケーションとも連携しながら、確実な情報を素早く届けること、助けるための手段を増やすこと、自分自身で相手に助けを求める手段をつくることなどを仕掛けていきたいとのことでした。

災害は起こってほしくないけれどいつどこで起こるかわかりません。
日常的に自分が情報に触れていることでもしもの時にも少しだけ落ち着いて行動できたり、助けを求める相手を想定して、準備を整えておくことが安心・安全につながるのだと痛感しました。

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だれ一人取り残さない防災研究会では、災害が起こったときには日常からのつながりが重要になると考えています。
そのために、都市部の大企業や研究者の方々、地域のNPO、中間支援組織など立場の異なる方々が日常から学びあい、つながりをつくることで「もしも」の時にお互いのリソースを持ち寄れる関係性をつくること。
話を聞くだけでなく、参加するそれぞれの主体が自分たちの防災・災害支援に対しての取り組みを相談したり、仲間と組んで実際にやってみる機会にすることを目的に開催しています。

毎月第3月曜日に勉強会を開催していますので、ご関心のある方は以下のホームページをご覧いただき、研究会メンバーにお申し込みください。

https://saigaishienfund.etic.or.jp/kenkyukai


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