実はめっちゃ用心深い、田端信太郎さんの「これからの会社員の教科書」超速レビュー

本日発売の田端さんの本「これからの会社員の教科書」を早速紹介。意外にもめちゃめちゃ真面目に書かれている本で、本人の実像に近い。ネットだけで田端さんを知っている人が読めば驚くんじゃないか。

礼儀とは用心のことで、剣術に通じる

というのは江戸時代の大名&剣術家の松浦静山の言葉だけど、強い人ってのは実は攻めずに用心・守ることしかしない。最近だと「“攻める広報”田端氏がZOZO退社」という記事があったけど、本当は守っている人だと思う。

どういう事かというと、例えば田端さんのツイッターはよく炎上するが、よく見ると耐燃性が高い発言をしている。著書でも「ファクトとオピニオンを区別せよ」という章で、

(情報を伝える時には)自分の解釈が入った意見(オピニオン)なのか、客観的な事実(ファクト)なのか」をきちっと区別しておくことです。(中略)「何が動かぬ岩盤なのか」を把握することが、それを基盤にして、次の行動を考えるうえで決定的に重要なのです。

と書いてあるけど、田端さんのツッコミは「それはオピニオンであって、ファクトではないですよね?」というような、ファクトという岩盤に守られた砲撃が多い。

前著「ブランド人になれ!」は攻めろという論調だったけど、今回は「攻めるためにはまず守れ」という本当のところを書いた実用書だ。

どれくらい用心深いというかというと、例えば次がわかりやすい。30分ならまだわかるけど1時間って。

(大切な)打ち合わせの場所が相手先なのであれば、1時間前くらいに着いておくのが望ましいでしょう。はじめて行くところであれば、訪問先のビルまで行き、受付まで確認したうえで近くのカフェなどで待機する。これはあたりまえのリスク管理です。ポイントは受付まで確認しておくことです。

基本的には社会人1年目を想定して書いたということで、「会社と学校は違うけど、じゃあどう違うの?」という事についても詳細に書いてある。

「自分は頭がいい」と思っている意識の高い新入社員が、会議でやらかしがちなことがひとつあります。それは、先輩が言ったことに対してマウントを取って、否定ばかりすることです。
「なんとなくあの先輩はダメそうだから、論破すれば上に行けるんじゃないか」「出世レースに乗れるんじゃないか」と思うのでしょう。結局、それでは「論破」はできても「対話」になりません。
否定するのであれば、せめて代案を示すことです。論破したとして、「じゃあキミは、どうすればいいと思うの?」と上司や先輩から聞かれて、代案を出せるならいい。でも「いや、それはわかりません」とか「先輩の意見が間違っていると思ったから言いました」と言われると、その瞬間、その場にいる全員が「こいつないわ!」という印象を抱くでしょう。
しかも本人は「俺、今いいこと言ったぞ」と思うからタチが悪いのです。代替案なしに、他人の揚げ足取りだけするような、ムダに意識の高い新入社員は、それが考え方のクセ、基本スタンスになってしまっているので、早めに治さないとどんどん「ただのめんどくさいやつ」になってしまいます。

これなんてあるあるだけど、分からせにくいのでこの本を教科書がわりにさりげなく渡せば理解が早そうだ。

個人的に面白かったのは、今の田端さんができたルーツがいくつか知れたとことだ。田端さんの特徴の一つは、人とまっすぐ向き合うところだ。その原体験も書いてある。

伊藤忠のグループ企業へ提案に行ったとき、そこの専務はぼくが提案しているあいだも、ずっとぼくの目を見ていました。(中略)ハッと気づいたのです。その専務は僕が話す内容の個別具体的なことよりも「ぼくが人として嘘をついていないか、本気なのかどうか」を見ているのではないだろうか、と。「人と人」として 対峙しているか。本当のことを言っているかどうか計るには、提案書の内容よりも、相手の目を見たほうがいい。

昔、田端さんと打ち合わせで同行して一番印象的だったのは、受付で待っているとその会社の人が通りがかって「ああ田端さん、こないだはどうも」と挨拶をした時のことだ。

すると田端さんはその方のことが記憶になく「え、えええ???」と当惑した顔をバカ正直にしていた。この場合、「ああどうも」と流しておく人が多いと思うのだけど、私は呆れると同時に、「ああ、この人は自分に嘘をつかないようにしようって決めた人なんだなあ」と思ったのを想い出した。

それにしても、なんかこれまでの本と気合が違うような、これからの進退について覚悟を感じる本でオススメです。


読んでくれてありがとう!