フタ柔道の戦闘スタイル、戦い方
まえがき
本記事は柔道で全国区選手時代の私の戦闘スタイルを紹介する記事です。
この記事単体でも読み物となっていますが、別記事の
の説明、実例としての位置付けにある記事となっています。
そのため、そちらの記事も併せてお読みいただくことをオススメします。
戦闘スタイルではなく、全国区選手時代の練習量についてはこちらをどうぞ。
1、寝技特化型
私は寝技重視の戦闘スタイルでした。
寝技に持ち込めば独壇場と言う状態にまで寝技に特化していました。
寝技特化の私がどんな強みを持って、どんな戦い方をしていたのか進めて行きましょう!
2、強み
私が
「他の誰にも、そうそう負けない!」
と考える【強み】として持っていたのは、
◎、筋力
◎、体力
◎、防御力
◎、組み手争い力
◎、組み手に縛られないトリッキーさ
◎、レスリング技の取り入れ
でした。
それぞれについてどの程度で、どのような活用をしていたのかを見て行きましょう。
なお、私は60キロ以下級の軽量級選手でしたので、強みの程度はそれを基準に見て下さい。
<筋力>
ベンチプレス100キロを数回できるくらいの腕力でした。
筋持久力としては、毎日このレベルで3時間ウェイトトレーニングできるくらいです。
この筋力は寝技にとても役に立ちました。
軽量級選手の立ち技で、筋力はそこまで必要としませんからね。
しかし、寝技は体格差や筋力差がもろに出るので、筋力はかなり重要です。
筋力が強い方が相手を返しやすいですし、抑え込みやすいですし、相手をコントロールしやすいんですね。
軽量級なのに寝技特化の私には最重要な強みの一つでした。
当時クラスで言われていた言葉が
「ドラゴンボールに居ても違和感ないよね」
でした。
そのくらいの筋肉量と言う意味です。
<体力>
これは走る方の体力ではなく、柔道で戦い続ける方の体力です。
スタミナと言った方がイメージしやすいですかね?
練習の乱取りなら5分以上攻撃し続けることが出来ました。
試合だと3分くらいなら休まず攻撃し続ける事が出来ました。
高校の試合が4分ですから、ほぼほぼ攻撃し続けられると言うことですね。
「試合一杯は無理なら大したことないじゃん」
と思う方もいるかもしれませんが、試合で3分休まず攻撃し続けるのってかなりの体力を必要とします。
更に私の場合はその先に
「寝技で勝つ」
と言う行為が残っています。
立ち技で勝たない戦闘スタイルなのですから、寝技でスタミナ切れしていては勝てません。
そのことも意識したスタミナの限界がこれです。
引き分けでも良いなら試合一杯攻撃し続けることも可能です。
団体戦ではそれも有りですが、私の部活、団体戦が出来るほど部員が集まったの、高校三年になってからなので・・・
<防御力>
立ち技も寝技も高い防御力の上に成り立っていました。
「どの技はどの部分を抑えるとキチンと掛からない」
を理解し、それを実行することで技に掛からないようにしていました。
その部分が不完全なまま技を掛けてもかかりませんので、そこを手で押さえるだけで、後は自由に技を掛けさせ体力を無駄に使わせる戦法も使っていました。
柔道は全力で掛けた大技が一度掛からないだけでも心身の体力を大幅に奪われるんですよね。
そして、体の一部分だけの制限で、その他の部分はキチンと稼働させているため、技を掛けている方としては
「いける!」
と勘違いする人もいます。
私は一部を制限するために手を添えているだけで、それ以外では脱力して無駄な体力を使わないようにしていました。
そのため、相手の技に乗っかっていきますので、
「いける!」
と勘違いして、掛からない技を全力で掛けてしまう人はそこそこいました。
これも戦略ですね。
寝技でも防御力が高かったので、相手に背を向けることはありません。
背中を取られても守らず攻めます。
防御力の高さを理由に、どんな姿勢からでも負けない自信があったので、常に攻める姿勢で居られたわけですね。
そしてこれは、どんな姿勢からでも攻められるだけの技を持っていたと言うことでもあります。
<組み手争い力>
体力・スタミナがあったからこそ持てた強みです。
フットワークと合わせつつ、相手に柔道着を持たせない強さですね。
そのため、面と向かってガッチリと組み手争いをしたら平均並です。
その平均並にプラスしてフットワークを組み込んでいるので、強みとしています。
常に相手を振り回して、隙を突いて攻撃をし、技が決まらなければ相手に掴まれる前に離脱して、再度振り回し隙を窺う。
「ただ逃げ回ってるだけで強みじゃないのでは?」
と思う人がいるかもしれません。
しかし、組み手の能力を落とさないようにしつつ、フットワークを組み込むのって言うほど簡単じゃないんですよ。
振り回しているとゴチャゴチャしてしまうので、隙を突くことが難しいんです。
瞬時に投げ技に必要な部位を持つ事が出来ないとただ振り回しているだけで無意味ですし、相手に柔道着を持たれてしまった場合、瞬時に切れないと動きを封じられます。
それらをフットワークで発生している向きの力に乗せて行うんです。
<組み手に縛られないトリッキーさ>
これが私の柔道で一番の特徴です。
左右両利きの選手はそこそこ見掛けます。
しかし、私のこの強みは更にもう一段階上です。
私が技を繰り出せる状況はこんな感じでした。
◎、右組で、右の技
◎、右組で、左の技
◎、左組で、左の技
◎、左組で、右の技
つまり、組み手の持ち方に縛られず、どの部位を持っていようと、左右どちらの大技も繰り出せたんですね。
そのために、組手が逆組みでも掛けられる技を構築しました。
幾らなんでも流石に、そのままの形では逆組みでも掛けられるようには出来ていませんからね。
それ専用に技を考える必要はあるんですね。
技の変え方によっては上手く掛からなかったり、危険になってしまい反則になったりしますので、これが案外難しいんですよね。
私は右利きですし、中学までは右組しかやっていませんでしたので、最初は左組を徹底的に練習しました。
<レスリング技の取り入れ>
これは男子部員が私しかいなかった時期があるので、仕方なくレスリング部と合同練習をさせてもらっていて身に着いただけです。
しかし実りは有ったんですね。
まず異種格闘技をすると、自分のフィールド内では圧勝するのですが、相手のフィールドに入った瞬間にぼろ負けする経験をします。
これはかなり衝撃を受ける経験です。
明らかに各上のレスリング選手に対しても立っている段階では秒殺できます。
しかし、投げるだけでレスリングは終わりません。
投げた後、寝技になった瞬間抑えつけられているんですね。
掴もうとしてもすり抜けられてしまい、掴めず負けます。
こういった柔道にはない動き方を習得したわけです。
それにより、すぐ裏を取れたり、寝技で相手を宙に浮かせるレベルで投げ飛ばすこともできるようになりました。
寝技で投げ飛ばしてもポイントにはなりませんが、相手を仰向けに出来ますので意味はあります。
柔道しか経験がない選手には耐え方が分からないので面白いように掛かりますので、強みとします。
3、立ち技の位置付け
寝技重視の私でも立ち技は鍛える必要があります。
何故なら、柔道は立ち技から始まるからです。
そのため私にとって立ち技は
「いかに負けずに寝技に繋ぐか」
が重要でした。
寝技に持っていければ独壇場なわけですからね。
そのスタイルとして、強みでも紹介した組手に縛られないスタイルが出てきます。
そして、組手に縛られないスタイルだからこそ、フットワークを使った崩しが最大限に活きてくるんですね。
どんな場所を持っても大技が繰り出せるので、フットワークを組み込んでいる関係で上手く組手が出来なくても問題ないんですね。
どこを持っても大技がキチンと繰り出せるのは相性が良いんですね。
ただし、一つ一つの技の攻撃力が低いので、相手をキレイに投げ飛ばせることはほぼありません。
相手を崩し、膝を突かせるくらいがほとんどです。
しかし私にとってはそれで十分なんですね。
相手が膝を突けば寝技に引き込んでも反則じゃないからです。
「はじめ!」
でいきなり寝技に引き込むと反則ですからね。
なお、立ち技の攻撃力が低いと言うのは同格の選手に対して一本を取るのが難しいと言う意味です。
格下相手には、普通に一本取れるくらいには練習しています。
そうじゃないと同格の立ち技重視の選手に膝を突かせることすらできませんからね。
4、寝技の戦い方
様々な立ち回り方のバリエーションを持ってはいましたが、好んで使うスタイルは限られています。
<立たせない技>
基本的に寝技の立ち回り方に技名はないので、説明が難しいのですが、立とうとする相手の膝を蹴ったり、腰を持ち上げたりして、立てないようにします。
これを行うためには守りの姿勢になっていては行えないため、仰向けになって相手を引き込む姿勢が基本になります。
そしてこの姿勢を基本とするためには、防御力が高くないと直ぐ抑え込まれてしまうので、防御力の高さの強みは重要なんですね。
<返し技>
一般的に柔道で返し技と言うと、防御姿勢に入っている対戦相手を返す技をイメージされます。
しかし、私のスタイルの場合、仰向けになって相手を引き込む姿勢が基本姿勢ですので、返し技はこの引き込む姿勢から相手を返す技です。
左右前後、様々な方向に返す技を使い分けられると勝てる可能性がかなり高まります。
私の姿勢からの返し技で有名なのは、俵返しですね。
<絞め技>
絞め技だけで落としたり、参ったを引き出す勝ち方も良いのですが、私の場合は違います。
寝技を回避するために立とうとしている相手に対して、絞め技だけで勝つために絞め技を使うのはあまりオススメしません。
逃げようとして、更に全力で立とうとさせてしまうだけだからです。
私は返し技や抑え込みに絞め技を利用していました。
絞められると多くの人は逃げようとします。
つまり、その反応を利用すればある程度相手の動きを事前に予測したり誘導できるわけです。
後はその動きに合わせた返し技を繰り出せば簡単に返せると言うわけですね。
立ち技の崩しはまさにこの原理ですよね。
「寝技での崩し技として絞め技を活用する」
と言えば分かりやすいですかね。
抑え込みで活用すると言うのは、相手を抑え込む際に首を絞めるんです。
これはかなり残酷な技ですが、軽量級選手が体格差を無視して寝技で立ち回るためには必須です。
相手が参ったすれば勝ちですし、無理して我慢し落ちても勝ちですし、耐えられても抑え込みで勝ちです。
普通の抑え込みから逃げるだけでもかなり体力を消費します。
そこに加えて絞め技で呼吸がまともに出来ないので、体力の消費量は尋常じゃありません。
参ったや落とすことをしなくても、体力切れで諦めさせることも可能です。
軽量級で寝技重視にするなら絞め技を熟練させるのは必須です。
そして絞め技に成熟すると、立ち技の組手や崩しにも活用出来て一石二鳥です。
絞め技で重要な、微妙な手首の動き等で重圧調整が行えるようになるからです。
「強い柔道選手は組んだだけで相手の強さを測れる」
と言われています。
この相手の強さを測るために感じとっているのが【重圧】です。
それによって
「(相性的に)戦いやすいか、戦い難いか?」
を判断して、強さを測るんです。
この【重圧】を調整できるので、強い選手にこそ効果があります。
熟練すると白帯の人に対してなら、技を繰り出したり、振り回したりせず、この手首の動きだけの重圧調整だけで膝を着かせることも可能です。
なお柔道の絞め技は、筋力を必要としません。
柔道の絞めを、筋力で絞め上げるているのは下手なだけです。
柔道の絞め技は手首を数センチ動かすだけで、一瞬、その瞬間に呼吸が出来なくなります。
筋力による絞めでは体全体の筋力を利用し、徐々に苦しくなっていきますので、技を掛けている方にも凄い負担です。
<抑え込み技>
多少形を崩す部分もありますが、基本的に体育等で教わるような基本の抑え込みしか使いません。
その代わり、質は全然違います。
◎ 袈裟固め・逆袈裟固
袈裟固め、逆袈裟固めは相手の肺を圧迫し続け、息を吐くことしかできなくします。
これを行う際は絞め技を加えるのは難しいので、絞めを使うか、呼吸をさせないか、どちらか一方を使い分ける感じです。
これは息を吸えないので、物凄く苦しいです。
◎、横四方固め・縦四方固め
横四方固め・縦四方固めは、相手の頬骨を肩で潰します。
頬骨ってかなり痛いので、熟練すると参ったする人もいるくらいの激痛です。
参ったしないとしても、動きは止まります。
更に、この技は絞め技と相性が良いです。
首を絞めつつ頬骨を潰したら、相手にとっては地獄以外の何物でもないと思います。
物凄い痛みと、物凄い苦しさが同時に来ますからね。
これをするなら、崩れ横四方がベストです。
相手の股に手を入れる基礎スタイルでは力が分散してしまうので効果が弱まってしまいますので。
◎、上四方固め
上四方固めも相手の頬骨を潰しますが、横四方固め・縦四方固めとは潰す方法が違います。
横四方固め等は肩で潰しますが、上四方固めは腰骨で潰します。
皮や筋肉、贅肉等がほとんどない部位同士で骨と骨がぶつかり合うため、横四方固めとは比べ物にならないほどの大激痛です。
柔道の試合だからと理解していたとしてもマジ切れされるくらいの激痛です。
その代わり、抑え込む形が少しアンバランスになるため痛みに短時間でも耐えられてしまうと返されやすくなります。
そのため同格の選手に使うのはかなり危険かと思います。
練習であれば一瞬で参ったする人が沢山いるくらいの激痛です。
無理に使う必要はない技なので、勝敗だけではなく、人間関係も含めてこれを主要な技にするメリットはあまりないかと思います。
私もこの技は主に、
・ 柔道を教えないで、部員に肩揉みをさせているような舐めた指導員
・ 後輩を苛めているような先輩気取りの部員
にしか使いません。
5、最後に
このスタイルになったのは高校生になってからです。
私の選手としても、指導員としても、指導をしてくれた先生方は日本柔道界では名の通った先生方です。
そして、それまでの中学3年間で作り上げたスタイルは一端捨てて、一から作り上げてもらいました。
それでも、私は中学・高校と学生選手としての6年ある中で、5年間試合では一度も勝てませんでした。
つまり全て初戦敗退です。
私が各大会で表彰されるくらいに実績を残せるようになったのは最後の6年目だけです。
練習では全国区選手にも勝てるのに、試合では地区予選レベルの選手にも負けるんですね。
これは恐らく精神面の問題でした。
その事については機会があれば別記事にて記載したいと思います。
今回の記事はかなり長くなってしまいました。
ここまで読んでいただき有難うございました。
【記事の紹介・拡散について】
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