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絵本 あの湖のあの家におきたこと

しばらく、ブリッタ・テッケントラップ特集!ということで、
まぁ単に一通り読んでみたいな、と思ったので、続くかと思います。
この絵本は絵がテッケントラップさんで、著者はトーマス・ハーディングさんです。

曽祖父が建てたお家を再び訪れた著者は、その家が辿った生涯を遡って知り、それをこのような絵本という形に。
人生とは奇妙な連続なようで、曽祖父もまさか曽孫が探してくれるなんて思ってもいなかっただろうなぁ、とも思いつつ。
まず、形はいくらか変えても、家が残り続けたのがとても良いな、と思いました。
私も自分のルーツの旅と銘打って、母が中学の頃まで住んでいた街であり祖父より前の先代が居続けた街を散策したこともあったのですが、家がないし街もだいぶ変わっていたりで、なんとなくしか辿れなかったんですよね。
それでも、母が話した海までの道程を歩きながら、いろいろな気づきもありました。
けれどやっぱり、住んでいた家が残っていたならまた違っただろうな、とも思いつつ。
だから、この著者のことを、ちょっと羨ましいなと思いました。
曽孫がその曽祖父の思いを引き継ぐように、その家をまた使えるようにした、という事実もまた素敵です。
この絵本の存在は知っていたのですが、まぁ戦争括りに入れられていたので読まずにいたんですよね。なんか、私の場合、気分があるんです、読める時と読めない時と。
今回、テッケントラップさんで検索してこの絵本も出てきたので、これを機会に、と思って読んだのですが、正直、戦争括りに入れられるのは勿体無いな、という気もします。タイトルも原題は「The House by the Lake」なので、もっとシンプルで良かったのかもしれません。「ちいさなおうち」のように。ちょっとタイトルが限定されすぎているようで、敬遠してしまう人もいるだろうな、と。
この絵本は、家もまた生きている、ということでしょうか。箱でありながら、人の思いを汲んで、世代が違えど匂いや物質にて記憶を引き継がせてくれる、というかな。
今、日本は再開発ラッシュですよね。それもどうかな、と思うんです。
ただ壊し新しいものを作るのではなく、なるべく残しながら新しいものをその中に加えて時代にフィットさせていく。そういう手法もあるべきなんじゃないか、って。この絵本を読んでさらに思います。
家が潰されずに骨組みでも残っていたからこそ、曽孫である著者もまた、その家が辿った道を知りたいと思ったんじゃないでしょうか。
そうして、そこに様々な人が住み、人生があったことを知る。そうすることで、またこの家を愛しく思い、残しつつも新しいこの家の人生を作り出したいと思う。
街が変わるのは経済を回す資本主義の上でどうしようもないことかもしれませんが、先人が遺した想いの詰まった建物とか、そういうものこそやっぱり街の人にも愛されていたりして。節操なく簡易的に全てを作り変えるのではなく、遺すことも大事にしてほしいですね。この絵本を読んで思いました。

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